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ラッシュ「Bastille Day」解説:フランス革命を壮大なロックへ昇華した一曲

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Photo: Fin Costello/Redferns

ラッシュ(RUSH)の「Bastille Day」は、1975年にリリースされた通算3作目のスタジオ・アルバム『Caress of Steel』のオープニングを飾る楽曲だ。曲は抑制の効いた静かな幕開けから始まり、各メンバーがこれから訪れる激しい展開を予感させるように演奏を重ねていく。そしてゲディ・リーのベースとニール・パートの力強く躍動感あふれるドラミングが一気に加速し、怒りと情熱をたたえたゲディ・リーのヴォーカルへとなだれ込む。

アルバム『Caress of Steel』は、壮大で技巧的なプログレッシブ・ロックを得意としてきたラッシュにしては、比較的シンプルで無駄を削ぎ落としたアプローチが特徴の作品でもある。その意味で、「Bastille Day」は、バンドがより率直でストレートな表現へと踏み出したことを象徴する楽曲であり、アルバム全体の方向性を鮮やかに提示するオープニングとしてふさわしい一曲となっている。

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Bastille Day

 

 

ディケンズの小説『二都物語』からの影響

ラッシュは、歴史や中つ国を題材にする場合であっても、歌詞に多層的な意味や寓意を織り込むことを得意としてきた。「Bastille Day」は、そうした彼らの作品群の中でも、とりわけ鋭い寓話性を備えた一曲である。

この曲は、ゲディ・リーがチャールズ・ディケンズの小説『二都物語(A Tale of Two Cities)』を読み返したことをきっかけに着想を得たもの。静かな導入部から始まり、やがて勢いを増しながら突き進むヘヴィなサウンドへと発展していく。サビを迎えるたびにテンポが加速していくような印象を与え、その疾走感は、支配者に反旗を翻した民衆が城門へと押し寄せる光景を思わせる。

「Bastille Day」の構成は、混乱と緊張が高まるにつれて音楽もクライマックスへ向かって突き進むという点で、まさに、エドヴァルド・グリーグの「山の魔王の宮殿にて(In the Hall of the Mountain King)」のプログレッシブ・メタル版と呼べる作品であり、ラッシュはその高揚感とエネルギーを最後まで見事に描き切っている。

 

フランス革命を描いた「Bastille Day」

歌詞を手がけたニール・パートは、ゲディ・リーから『二都物語』への熱中ぶりを聞いたことをきっかけに、「Bastille Day」をフランス革命の象徴的な出来事――パリのバスティーユ牢獄を民衆が襲撃した事件――になぞらえた作品として構想した。

冒頭の歌詞に登場する「パンがなければケーキを食べればいい(Let them eat cake)」という一節は、その着想を端的に示している。この言葉は一般的にマリー・アントワネットの発言として知られ、バスティーユ襲撃で怒りの矛先を向けられた王政の象徴とも結びつけられている。しかし実際には、この言葉はマリー・アントワネット以前から存在していたとされ、彼女が実際に口にしたという確かな証拠はない。それでも、この逸話は飢えに苦しむ民衆に対するフランス王室の無関心と傲慢さを象徴するものとして語り継がれてきた。ラッシュは、そうした歴史的な神話やイメージを巧みに取り込みながら、楽曲が高揚するにつれて物語の緊張感も増していく、重層的で力強い物語を「Bastille Day」の中に築き上げている。

歌詞には、ほかにも歴史上の出来事を直接的に示唆する表現が散りばめられている。例えば、「ギロチンが血塗られた獲物を奪う(the guillotine claims her bloody prize)」という一節は、反逆罪で処刑されたルイ16世とマリー・アントワネットの斬首を暗示していると考えられる。また、ゲディ・リーのヴォーカルは、『二都物語』の主人公の一人であり、バスティーユ牢獄に長年投獄されていたマネット医師が抱える憤りや苦悩に着想を得たものだ。リーは、その視点に寄り添うように怒りを込めた歌唱で物語を表現している。

ラッシュのキャリアを振り返るうえでも、「Bastille Day」は音楽的な転換点を示す重要な楽曲と言える。後年のラッシュは、複雑なリズムや変拍子を駆使したプログレッシブ・ロックへと傾倒していくが、「Bastille Day」はそうした要素を備えながらも、ストレートで攻撃的なハードロックとしての魅力を前面に押し出している。ジャンルを自在に行き来できるバンドの懐の深さを証明した一曲でもある。

1970年代後半にはライブのオープニング・ナンバーとしてたびたび演奏され、1976年のライヴ・アルバム『All the World’s a Stage』でも幕開けを飾った。「Bastille Day」は、歴史に根ざした力強い物語と圧倒的な演奏が融合した、ラッシュの最もダイレクトでダイナミックな魅力を象徴する楽曲なのである。

Rush – Bastille Day (Live 1976) | The Birth of a Legend

Written By Sam Armstrong



ラッシュ『Caress of Steel』
1975年9月24日発売
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