‘忘れ難い’ナット・キング・コール究極のアルバム『Unforgettable』

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ナット・キング・コールは、キャピトルの初期の成功にとって重要な人物であった。実際のところ、レコードを積み上げた形の有名なビルをハリウッドに構えるキャピトル・レコードは、このアラバマ州出身のシンガー兼ピアニストが、1940年代から1950年代にキャピトルが大きな力を持つ上で果たした役割を認める意味で、しばしば ‘ナットが築いた家’ として紹介されていた。

キャピトルの共同創始者であり、著名なシンガーソングライターでもあるジョニー・マーサーが、ナット・キング・コールをこのレーベルに迎えた張本人だ。そしてナット・キング・コールは、ザ・キング・コール・トリオという人気グループで活動を始め、その後でソロ活動に乗り出して、国際的な成功を収めた。

1952年に8曲入りの10インチ・アルバムとして発表された『Unforgettable』は、当時35歳のナット・キング・コールのデビュー・アルバムではなかった(その前に4枚のアルバムが発表されており、その内の2枚はインストゥルメンタル作品で、彼のピアノ演奏が披露されていた)。しかし、同アルバムは、LPという華やかな新世界に重要な参加を果たした初の作品と言えるであろう。それまで彼のグループ(彼らのピアノ、ギター、ベース編成はジャズに影響をもたらした)は、主にシングル主体で活動しており、全米R&Bシングル・チャートを制して1位となった「Straighten Up And Fly Right」を始め、1940年代のキャピトルに大量のヒットをもたらした。

1950年代に入っても、シングルがレコード業界の主力であり続け、LP(1948年に登場し、まだ幼児期にあった)は、まだ有望な人気記録媒体であることを証明していなかった。それを考えると、『Unforgettable』が当時の多くのアルバムと同様、ナット・キング・コールが1946年から1952年にかけて録音した数々のシングル曲と、様々なスタジオ・セッションで作られた曲を合わせた多様な曲のコンピレーションだったのは驚きではない。ひとつの独立した音楽的ステイトメントとは考えられていなかったものの、『Unforgettable』に一貫性を持たせているのは、ナット・キング・コールの優しく耳を撫でるヴェルヴェットのような質感の歌声で、それがこのアルバムを音楽的にひとつにまとめる要素となっていた。

『Unforgettable』は、忘れ難いアルバムタイトル曲で幕を開ける。ビリー・ホリデイの「Me, Myself And I」を作曲したアーヴィン・ゴードンによる曲で、ナット・キング・コールのキャリアを決定づけるパフォーマンスが披露されている。最高にスムーズで、微妙なニュアンスを含んだ彼の歌声は一分の隙もなく、ネルソン・リドルによって美しくアレンジされたオーケストラ伴奏によって、その魅力が倍増している。切ない「Lost April」やアーヴィング・バーリン作曲の「What’ll I Do」で魅力的に響く彼の歌声の桁外れのクオリティを考えると、初期の彼がピアニストとして知られていて、長い間そのヴォーカルが表に出ていなかったことが信じ難い。

ジェイ・リヴィングストンとレイ・エヴァンスが作曲した、同名のレオナルド・ダ・ヴィンチの絵画の神秘的な女性へのオマージュである「Mona Lisa」のナット・キング・コールによるカヴァーは、もうひとつの至極のパフォーマンスだ。これは彼が2度目の全米1位を獲得したシングルで、1950年に全米シングル・チャートで8週間、1位を記録した。この曲の成功により、ナット・キング・コールはクールなジャズ・スウィンガーからロマンティックなバラード・シンガーに転身し、メインストリームのエンターテイナーとしての道を歩み始めた。

1954年、急に12インチ・アルバムが10インチ・アルバムに取って代わったことにより、「Nature Boy」(1948年発表のナット・キング・コールの初のヒット曲)と「Pretend」を含む4曲を追加した『Unforgettable』が発表になった。そして「Pretend」は、イギリスでの彼の最大のヒット曲となった。これらの2曲は素晴らしかったが、アルバム・タイトル曲を上回ってはいなかった。「Unforgettable」は長年の間に、ペギー・リー、アレサ・フランクリン、エンゲルベルト・フンパーディンク、マール・ハガード等、様々なシンガーにカヴァーされたが、どれもナット・キング・コールのオリジナルには及ばなかった。そして1991年、現代のテクノロジーのおかげで、この曲は彼の娘である故ナタリー・コールとのデュエットとして、改めて発表された。

半世紀以上を経て、『Unforgettable』は、‘忘れ難い’というタイトルに十分に応え続けている。これは戦後のタイムレスな名盤であり、間違いなくナット・キング・コールの究極のアルバムである。

 

『Unforgettable』はキャピトル75th75アルバムの一枚に選ばれた。

プレイリスト『 Through The Decades』

Charles Waring


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