カーペンターズが”世界の頂点”にたった『A Song For You』

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カーペンターズが4枚目のスタジオ・アルバム『A Song For You』を制作する頃には、彼らの地位はポップ・ミュージックの天空高くにあり、テーマを広げたコンセプト・アルバム作ることに何も問題はなかった。この2年間で、リチャードとカレンの仕事ぶりとチャート・アクションは他を寄せ付けないほどで、彼らの地位は不動のものとなっていた。

彼らの無敵の才能を試す次なるプロジェクトに取り掛かる機会がやってきた。1970年にこのデュオは2曲の大ヒットを生み、翌年にはさらに5曲以上のヒットを世に送り出し、そしてシングルだけではなくアルバムでも成功を収めていた。デビューアルバム『Ticket To Ride(邦題:涙の乗車券)』に続いて『Close To You(邦題:遥かなる影)』、そして『Carpenters』とアマルチ・ミリオン・セールスを立て続けに記録。シングル、アルバム共にこれほどのセールスを記録できるアーティストは、チャートの中でも数少なかった。

さらに1971年には、カーペンターズは熟練のセッション・ミュージシャンでありアーティスト、ソング・ライティングの巨匠であるレオン・ラッセルの楽曲を歌い、数多くのコンテンポラリー・アーティストの中で、チャンピオンになった。レオン・ラッセルとボニー・ブラムレットとの共作で知られる「Superstar」のカーペンターズ・ヴァージョンは1971年の終わりに全米2位を記録し、「We’ve Only Just Begun(邦題:愛のプレリュード)」と「Rainey Days and Mondays(邦題:雨の日と月曜日は)」に続く3枚目のシングル・ヒットとなる。さらにこの時点でカーペンターズは、次の作品もレオン・ラッセルのバラードを選ぶという、潔癖とまで言えるほどの彼のソングライティングへの敬意を見せることになる。

 

「A Song For You」はレオン・ラッセル自身にとっても、またこの曲をカヴァーした数多くのアーティストにとって大きなヒットにはならなかったが、リチャードとカレンは1972年にリリースした同名タイトルのアルバム『A Song For You』の最初と最後にこの曲を選んだ。カーペンターズはそれまでのアルバムもプロデュースしていたジャック・ドーティと、1971年の終わりから新たな仕事に取り掛かっていた。

『A Song For You』のB面1曲目に収録されたペリー・ボトキンとバリー・デヴォーゾン作の楽曲「Bless The Beasts and Children」は、映画のテーマソングだったが、この時期のカーペンターズには珍しく45位以内にも届かず全米67位を記録。しかし、続いてリリースしたゲイリー・ゲルド、ピーター・ウデル作のバラード曲「Hurting Each Other」は、まさしく兄弟が古い楽曲の中からヒットを見出す能力の高さを証明してみせた。1965年にジミー・クラントンによって初めてレコーディングされたこの曲は、カーペンターズによって全米2位を記録した。

さらに、カーペンターズは彼らの故郷にあるA&Mが流通を手がけていたオード・レコードからリリースされたばかりのキャロル・キングの『Music』から「It’s Going To Take Some Time(邦題:小さな愛の願い)」を選んでカヴァーするという耳の良さを見せ、カーペンターズが歌ったこの曲は12位を記録する。アルバム『A Song For You』がリリースされるころには、カーペンターズの最も愛された曲である不朽の名作「Goodbye To Love(邦題:愛にさよならを)」がそこに続き、このバラードは素晴らしいハーモニー、カレンの完璧なリード・ヴォーカルとトニー・ペルーソの素晴らしいファズギター・ソロが称賛された。

世界的なデュオへと成長を遂げていく2人は、アメリカだけでもアルバムがトリプル・プラチナムを記録。1973年にはさらに金字塔的シングル「Top Of The World」を発表。さらに『A Song For You』から産まれた最後のTOP45ヒットは「I Won’t Last A Day Without You(邦題:愛は夢の中に)」で、このアルバムがリリースされた21ヶ月後という驚異的な記録も残した。他にもリチャードがリード・ヴォーカルをとったランディ・エデルマン作の「Piano Picker」や「Goodbye To Love」と「Top Of The World」の両作でもコラボレーションしたジョン・ベティス作の「Crystal Lullaby」などが収録されている。

アルバム『Song For You』は全米チャートで第4位を記録し、オーストラリア、日本でも大ヒットした。カーペンターズはまさに”Top Of The World” (世界の頂点)に立ったのである。


Written by Paul Sexton


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