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メタリカ『The $5.98 EP: Garage Days Re-Revisited』:バンドが明らかにした自身のルーツ

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James Hetfield, Robert Trujillo, and Lars Ulrich of Metallica at Lollapalooza - Photo: Gary Miller/FilmMagic

1987年、メタリカは難しい課題に直面したが、間に合わせで制作した5ドル98セントのEP『The $5.98 EP: Garage Days Re-Revisited(メタル・ガレージ)』によって、彼らは前に進むためには後ろを振り返る必要があることに気づいた。

自分たちのキャリアが次にどこに向かうのかを知るために、彼らは初心に立ち返った。そして自分たちが音楽を生業にすることになるきっかけを与えてくれたバンドに敬意を表したのだった。

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悲劇との対峙と気晴らし

メタリカのベーシスト、クリフ・バートンの本当の底力を世界が目にすることはなかった。メジャー・レーベルの興味を呼んだのも、『Master Of Puppets』の大成功の原動力となったのも、クリフがバンドにもたらした音楽性あってのことだった。

そのアルバムのツアー中にバンドがバスの事故に巻き込まれたのは有名な話だ。クリフ・バートンはこの事故で命を落としている、即死だった。間もなくして、メタリカはフェニックスを拠点とするスラッシュ・バンド、フロットサム・アンド・ジェットサムのジェイソン・ニューステッドを後任のメンバーに迎えている。クリフなら、バンドの存続を望んだに違いないという確信がメンバーにはあったからだ。1987年初頭に『Master Of Puppets』のコンサート・ツアーは終了するが、そこでバンドはようやく悲しみと向き合い、次に何をすべきなのかを考えることになった。

例年、英ドニントンで開催されていた伝説的な音楽フェスティヴァル、「Monsters Of Rock」への出演が決まっていたため、彼らと契約を交わしていたUKのレコード会社は、このフェスへの出演に合わせて、新曲を発表するよう、バンドにプレッシャーをかけた。しかし、ジェイソン・ニューステッド加入後に行われた最初期のレコーディング・セッションの成果は「Blackened」(後に『And Justice For All』に収録されることになる)のデモのみで、フロントマンのジェイムズ・ヘットフィールドがスケートボードで腕を骨折したことで曲作りは急遽中止になっていた。

そうした中、気晴らしが必要だと感じたドラマーのラーズ・ウルリッヒは、ニューステッドでの建設業の経験を生かしてカリフォルニア州エル・セリトにある自宅のガレージをリハーサル・スペースに改造した。そして、パラレックスというあまり知られていないNWOBHMグループの「White Lightning」という曲を演奏しているうちに、バンドはあるアイディアに行き当たった。

White Lightning

それは、ヘットフィールドの腕が治るまでメタリカが自分たちの曲を作れないのであれば、自分たちが影響を受けた楽曲を自分たちのものにしてしまえばいいというものだった。リード・ギタリストのカーク・ハメットが、キリング・ジョークの「The Wait」のリフをコピーし始めた。そこにピンとくるものを感じた彼らは。その曲のレコーディングを試みようと決めた。そうして、そこから生まれたのが『The $5.98 EP: Garage Days Re-Revisited』だった。

Metallica: The Wait (Remastered)

知られざる魅力を発揮したEPの内容

このプロジェクトのDIY的な特性を維持したいという狙いもあったのだろう。メタリカは選曲したカヴァーをよりメタリカらしい曲にするために時間を費やすことはしなかった。『The $5.98 EP: Garage Days Re-Revisited』のレコーディング・セッションでは、NWOBHMの雄ダイアモンド・ヘッドの「Helpless」、スコットランドのメタルバンドであるホロコーストの「The Small Hours」、シンセ・パンク・バンドのキリング・ジョークの「The Wait」、ウェールズのヘヴィ・メタル・バンド、バッジーの「Crash Course In Brain Surgery」、ゴス・パンク・グループ、ミスフィッツの「Last Caress」と「Green Hell」のマッシュアップなどが、忠実かつ生々しく再現された。

Last Caress/Green Hell (Remastered)

そして、このコレクションはこのサンフランシスコを拠点とするスラッシャーたちの知られざる魅力に光を当てた。世界中の聴き手は、メタリカに、広く知られた激烈なメタル・サウンドだけではない、また別の魅力があることに気付かされたのである。

1987年8月21日にリリースされた『The $5.98 EP: Garage Days Re-Revisited』は、およそ2年のあいだ販売されたものの1989年には製造を終了。メタリカの人気が高まった1990年代にはコレクターズアイテムとして注目を集めることになったが、同作の収録曲は、やがて『Garage Inc.』に収録されることになる。

この『Garage Inc.』は、『Garage Days Re-Revisited』の全曲と、メタリカがシングルのカップリング・ナンバーとして発表してきたカヴァー曲から成るディスクに、新録のカヴァー・ヴァージョンのみで構成されたディスクを加えたダブル・アルバムで、1998年にリリースされている。

さらに、オリジナル・リリースから30年を経た2018年には、メタリカのレーベル、ブラックンド・レコ―ディングズが『The $5.98 EP: Garage Days Re-Revisited』をリイシュー。この際、同作は、初となるアナログ盤でもリリースされた。

Written By Caren Gibson



メタリカ『The $5.98 E.P. – Garage Days Re-Revisited』
1987年8月21日発売
CD / iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music




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