女優マーヤ・ルドルフが母親ミニー・リパートンと名曲「Lovin’ You」を語る

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Photo: Jessica Pons

多くの人は、女優でコメディアンのマーヤ・ルドルフを、彼女の主演映画や8年間在籍していた「サタデー・ナイト・ライヴ」への出演で知っていることだろう。彼女は、愛されたシンガーであるミニー・リパートンと、ソングライター、ミュージシャン、そしてプロデューサーのリチャード・ルドルフの娘として生まれ、音楽一家の中で育った。マーヤ・ルドルフには、クリエイティヴな家庭で育ったことや両親と共にツアーに出向いたことなど、微笑ましい想い出がたくさんある。

マーヤ・ルドルフと長年の友人であるグレッチェン・リーベラムは、一緒にカルト的な人気を誇るプリンスのカヴァー・バンド、プリンセスで活動し、最近ではロサンゼルスのトルバドールでパフォーマンスを行った。そこは、マーヤの母ミニー・リパートンがその象徴的なアルバム『Perfect Angel』を披露した会場と同じ場所だった。トルバドールでの出演前に、母親の素晴らしいキャリアや最近発売された『Perfect Angel』のデラックス・エディションのリリースについて、マーヤ・ルドルフに話を聞くことができた。

「いつも母に対する人々のリアクションを見て、母は何か違う、特別なことをしているんだと感じていました」とマーヤ・ルドルフは話す。

「彼女のエネルギーには、何か人を幸せにするものがあったんです。子供の時に家にお客様が来て、本当に良いフィーリングだったことを覚えています。しかも母親が歌っているのを聴いていたので、子供でも彼女がとても上手なのはわかっていました」

ミニー・リパートンは1974年に27歳で『Perfect Angel』をリリースし、その時にはすでにベアーティストとしてベテランだった。10代の頃はチェス・レコードでエタ・ジェームスやデルズのバックで歌い、ザ・ジェムスとして、そしてソロはアンドレア・デイヴィスと言う芸名で、自身のレコードを制作していた。その後、サイケデリック・ソウルのロータリー・コネクションに入り、1970年に『Come To My Garden』でソロ・デビューを果たした。これまでに多様性に溢れる作品を残しているが、今でもラヴ・ソングの「Lovin’ You」が最も広く知られており、それは彼女の5オクターヴ半の音域を披露した作品で、全米No.1ヒットとなった。

もともと「Lovin’ You」は、フロリダ州のゲインズヴィルに生活する若いカップルだったミニー・リパートンと夫が当時1歳だったマーヤ・ルドルフと兄のマークのために作った子守唄だった。LPヴァージョンの最後には、ミニー・リパートンが“マーヤ、マーヤ”と歌っているのを聴くことができる。

マーヤ・ルドルフは大人になるまでこの曲の裏話を知らなかったという。

「“Lovin’ You”が私と兄のための曲だったなんて知りませんでした。小さい時にこの曲を聴いていた時に自分の名前が聞こえて、“すごーい、これ私たちのためなんじゃないのー” と思ったこともありましたが、本当だったとは知りませんでした」

『Perfect Angel』は、ミニー・リパートンとリチャード・ルドルフ、そしてスティーヴィー・ワンダーのコラボレーションによる作品でもあった。スティーヴィー・ワンダーは共同プロデュースしただけでなく、自身のバンドであるワンダーラヴで楽曲のアレンジを行い、キーボード、ハーモニカ、ドラムを演奏し、さらにタイトル・トラックの「Perfect Angel」と「Take a Little Trip」を書き上げた。それも、スティーヴィー・ワンダーが『Talking Book』と『Innervisions』でグラミーをかっさらい、さらに、ミニー・リパートンをバック・ヴォーカリストとして迎えた別のLP『Fulfillingness’ First Finale』を制作している最中のことだった。

その当時、スティーヴィー・ワンダーが自宅に遊びに来ていたことを振り返り、マーヤ・ルドルフはこの偉大なパフォーマーたちの若さに驚きを隠せないでいた。

「当時の私が気づかなかったことは、彼らは子供みたいだったんです、全員本当に。今になって考えると凄いですよね。だって当時は彼らのことを真剣な大人だと思っていたのに(そうじゃなくて彼らは子供みたいに遊んでいたんです)」。

「子供の頃のスティーヴィーとの思い出はあります。いつも家に来ては父、兄と私と指相撲をしていました。彼は私の親の面白い友人でしたが、すごく特別なものを持っているのはわかっていました。これほど素晴らしい人たちに囲まれて育つのも不思議なことですが、彼も同じ感じような環境で育ったんですよね。だから両親とスティーヴィーはお互いに惹かれたんだと思います」

『Perfect Angel (Deluxe Edition)』には11曲のボーナス・トラックが収録されており、「Take A Little Trip」のミニー・リパートンとスティーヴィー・ワンダーとのデュエット、「Lovin’ You」の別ヴァージョン、「Seeing You This Way」のアコースティック・ヴァージョン、のちにミニー・リパートンが次のアルバムにレコーディングし直した「Don’t Let Anyone Bring You Down」の初期のヴァージョンなど含まれている。この11曲のボーナス・トラックをまとめて『Perfect Angel』の別ヴァージョンだといってもいいだろう。レコードが初めて発売されてから40年以上が経つが、マーヤ・ルドルフは今でもこのアルバムのパワーに圧倒されるという。

「この曲(「Lovin’ You」)とアルバムがこんなにも象徴的なのは、驚きではないですが、本当に凄いことだと思います。このアルバムで母親が持っていた特別な何かが初めて人々に伝わって、みんな圧倒されたと思います。あれは本当に彼女が堂々と世に紹介された作品だと思うんです。あの当時の雰囲気を表していて、すべてがいい方向に結びついた結果がそこに聴こえるんです」

ミニー・リパートンのキャリアは悲劇的なことに、1979年に乳がんとの戦いに打ち勝つことができず、31歳という若さで終わりを遂げた。ミニー・リパートンの思い出を偲ぶ数々のファンのために、マーヤ・ルドルフは何かと家族を代表したスポークス・パーソンとなり、聞き役を果たしている。

「私の人生はいつも、世界中の人々が話してくれる母がいかに偉大だったかというものを受け入れる器のような役目なんだと思います」。

「いかに彼女の曲が自分の人生に影響を与えたか、どれだけ彼女の音楽が自分にとって大事か、そしていかに特別な声の持ち主だったか。母親が亡くなったのは彼女が31歳の時、私は今45歳。彼女よりもずっと歳をとったし、母について私が話したり考えたりしたくなかったこともありましたけど、今までの間で母のことを自分なりに処理する時間がたくさんありました。最初は私にとっては重すぎました。でも歳をとって、彼女がいかに一人のアーティストとして特別であり、輝く宝石のような人間、レコーディング・アーティスト、パフォーマー、そして女性だったかということにすごく誇りを感じるようになりました」。

『Perfect Angel (Deluxe Edition)』には、貴重な写真と、アルバムを制作した体験談を語った夫のリチャード・ルドルフによるライナー・ノーツが含まれる24ページのブックレットが収録。また、ボブ・ディランの写真やジャニス・ジョプリンの『Pearl』のカヴァー、エリック・クラプトンの1970年のソロ・デビュー作やジョージ・ハリスンの『All Things Must Pass』などを手がけた写真家バリー・ファインスティーンが撮影したアイスクリームとオーバーオールのジャケットの真相についても語っている。

Written by uDiscover Team


ミニー・リパートン『Perfect Angel (Deluxe Edition)』

   



 

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