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マッシヴ・アタックの経歴と名曲:英ブリストル発トリップ・ホップと心と体と魂に効く現代音楽

UK西部地方出身のトリップ・ホップ・アーティスト、ロバート・“3D”・デル・ナジャとグラント・“ダディ・G”・マーシャルは、1988年、ブリストルでマッシヴ・アタック(Massive Attack)を結成し、鮮烈な登場を飾った。
社会的な活動に熱心で、なおかつ音楽的にも革新的なこのユニットは、デビュー・アルバム『Blue Lines』とシングル「Unfinished Sympathy」で評論家の度肝を抜いた。このデビュー作とシングルは、どちらも不朽の名作である。その後も2枚のアルバムがチャートで初登場1位を記録しており、彼らの才能はブリット・アワードの最優秀ダンス・アクト賞やMTVヨーロッパ・ミュージック・アワードを受賞するというかたちで認められている。また、このジャンルで真の先駆者であるマッシヴ・アタックは、スタジオ・アルバム5枚の売り上げ枚数が全世界で総計1,000万枚以上に達している。
スタジオでの活動に加え、ふたりのメンバーはDJとしても高い評価を得ている。またナジャはロンドンやブリストルで展覧会を開催する革新的なアーティストでもある。彼らのライヴは豪華なゲストを招いたスペクタクルなマルチメディア・ショーとなっており、常に驚きに満ちている。これまでのコラボレーション相手は豪華な顔ぶれで、その中にはデヴィッド・ボウイ、エリザベス・フレイザー、シネイド・オコナー、マドンナまでが含まれていた。
この他にも数十組のアーティストからコラボレーションの話が来ていたようだが、マッシヴ・アタックはそれらのオファーを断っている。現段階での最新作は『Heligoland』だが、今後の動向も要注目だ。今後も、まだまだ多くの作品が控えているだろう。
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デビュー前と『Blue Lines』
グラフィティ・アーティスト/ラッパーのデル・ナジャは、地元でワイルド・バンチを結成した時にグラントリー・マーシャルとアンドリュー・ヴォウルズに出会った。伝説的なブリストルのバンド、ポップ・グループが解散した後、その空白を埋めるように登場したワイルド・バンチはサウンド・システムを駆使し、レゲエ、ダブプレート、スカンク、ソウルの集中砲火を浴びせた。
プロデュース業に挑戦した後、彼らはネナ・チェリー(初期の支援者であり、活動資金を援助していた)の推薦でCirca Recordsと契約。そして共同プロデューサーのジョニー・ダラーやキャメロン・マクベイと共に、数カ月を費やしてデビューアルバム『Blue Lines』を完成させた。このアルバムの制作作業では、後にポーティスヘッドのメンバーとなるジェフ・バーロウがアシスタント・エンジニアを担当している。
現在『Blue Lines』はオリジナル版とリミックス版が発表されており、エレクトロニクス、ヒップホップ、ダブ、ソウル、レゲエを融合させたサウンドの入門編として強くお奨めできる。マッシヴ・アタックは活動当初から曲作りに秀でており、初期の楽曲「Safe from Harm」や「Lately」も高い水準に到達していた。彼らは「トリップホップ」というレッテルを自ら好んで使うようなことはなかったが、このアルバムが彼らのスタイルを確立したのは確かだ。
革新的であり、なおかつキャッチーな決めフレーズや意外性を持ち合わせていたマッシヴ・アタックは、ヒップホップのグルーヴを自らのペースに合わせてスローダウンさせ、穏やかで瞑想的なサウンドを作り出した。ブレイクビーツとサンプリングを軽々と操る手腕は彼らの特徴となり、デビュー作の時点からその影響力は絶大なものとなった。
『Blue Lines』はゲスト参加者の中にトリッキー(=トリッキー・キッド)、シャラ・ネルソン、ホレス・アンディなどが含まれており、収録曲は新鮮でファンキーだ。アルバム・タイトル曲はトム・スコットの「Sneakin’ in the Back」をサンプリングしており、また「Daydreaming」はワリー・バダルーの色気たっぷりのマンボを引用している。
代表曲となった「Unfinished Sympathy」
どの収録曲も非常に優れているため、そんな中から1曲だけ選び出すのは至難の業だ。とはいえ、ここには彼らの代表曲となった「Unfinished Sympathy」が収められていた。ベテランのウィル・マローンによる弦楽アレンジと卓越したパーカッションはリミックスに最適であり、この曲はポール・オークンフォールドやネリー・フーパーらによって注意深く分解され、再構築されている。
この曲は、メインストリームのさまざまな一流雑誌でその年最高のシングルに選ばれ、それは彼らが大物アーティストとして認められたことを示していた。1996年にはティナ・ターナーがこの曲をカヴァーしてトップ10ヒットを記録したが、その青写真となっていたのはマッシヴ・アタックがマハヴィシュヌ・オーケストラのヴォーカル・サンプルを使って制作したクールなアレンジだった。
この曲のミュージック・ビデオも息を飲むほど斬新な作品になっている。映画『ブルーベルベット』のカメラマンが手がけたこのビデオは、ロサンゼルスの街並みやネルソンがウェストピコ大通りをそぞろ歩く映像を巧みに用いていた。後にザ・ヴァーヴは、このビデオ/映画の才気にオマージュを捧げた「Bitter Sweet Symphony」を制作している。この「Unfinished Sympathy」という曲は、イギリスの音楽界にとってまさしく重要な作品になった。
ファースト・アルバムに約8か月を費やした後、マッシヴ・アタックは2枚目のアルバム『Protection』を1994年にリリースした(こちらもフル・リミックス版が制作されている)。レコーディングはロンドンとブリストルで行われ、参加者の中にはトリッキー(当時は自身のデビュー・アルバム『Maxinquaye』が完成間近になっていた)、フーパー、アンディが引き続き含まれていたほか、ヴォーカリストのニコレット、エヴリシング・バット・ザ・ガールのトレイシー・ソーン、ピアノのクレイグ・アームストロングのピアノ、ギターのチェスター・ケイメンといった新たな顔ぶれも並んでいた。
このアルバムも再び絶賛され、そのサウンドは斬新でクールでセクシーだった。信じられないことに、20年近く経過した今聴いても、まったく古く感じられない。そのアプローチは時代を超越した優雅さを持ち合わせており、紛れもなくマッシヴ・アタックの強みとなっている。
ドアーズの「Light My Fire」のカヴァーもオリジナルからかけ離れた独特な仕上がりであり、その点だけに注目すれば、1968年のホセ・フェリシアーノのカヴァーとも共通している。曲を骨組みにまで削ぎ落としてから、新たな要素を重ねていくことで、彼らは予想外の結果を生み出していた。
そうした音作りは、「Protection」と「Karmacoma」でも発揮されている。「Protection」はジェームス・ブラウンの「The Payback」のリズム・パターンを使用しているが、原曲の猛烈なハイハットとベースを、より官能的なループに置き換えていた。この曲のミックスにも特筆すべき点があり、ブライアン・イーノが手掛けた7インチ版と12インチ版のほか、「Radiation Ruling the Nation」、「Angel Dust」、「J. Swift」といった別ミックスも作成されている。
この曲でおそらく最も印象的なのはトレイシー・ソーンのヴォーカルだろう。彼女は非常に美しいパフォーマンスを披露している。
一方「Karmacoma」は、3Dとトリッキーのラップ、ボロディンの「Prince Igor」とセルジュ・ゲンズブールの「Melody」のサンプリングをフィーチャーしたダンスフロア受けする傑作だ。
この曲のミュージック・ビデオもまた驚異的な仕上がりであり、クエンティン・タランティーノを思わせる映像だ。砂漠の島でギターを弾く美男子など、マッシヴ・アタックの流儀ではない。
最も成功した『Mezzanine』
その次に出た「Risingson」は、サード・アルバム『Mezzanine』(1998年)の先行シングルとなった。ヴォウルズが再びミキシングを担当したこの新作アルバムは、サンプリングやプログラミング、最先端の音響をこれまで以上に大胆に駆使している。
マッシヴ・アタックはダウンロード配信の世界にも多大なる影響を与えた。なぜなら、本作は他のメディアで発表される数カ月前にネット配信が始まっていたからである。それでも、売り上げには悪い影響が出ず、彼らにとって史上最高の売り上げ枚数を記録した作品となった。
皮肉なことに、メンバーたち本人の発言を借りれば、これは「完成までに最もストレスの溜まる作品」でもあった。完璧主義のせいで、人は正気を失うようだ。ただし彼らが受けたダメージは比較的少なく、そうして生まれた本作は2012年にダブル・プラチナ認定を受けるところまで行った。
質感豊かで暗くアンビエントな『Mezzanine』は、トリップホップというジャンル分けを完全に葬り去る作品だ。「Inertia Creeps」やアルバム・タイトル曲(ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「I Found a Reason」からキュートなサンプリングをしている)には不気味で不穏な雰囲気が漂っている。
ただし最も興味深いのはジョン・ホルト&ザ・パラゴンズのセクシーな「Man Next Door」を再構築したヴァージョンだろう。ここでは、もともとのグルーヴをレッド・ツェッペリンの「When the Levee Breaks」やザ・キュアーの「10.15 Saturday Night」の断片によってよりファンキーに仕立て直している。
制作中のスタジオ内ではピリピリした雰囲気が最高潮に達していたのかもしれないが、このアルバムには危険な冒険心があふれていた。そして、強烈なグルーヴも数多く含まれている。アルバム・タイトル曲も見過ごしてはいけない。この曲は、バーナード・パーディの「Heavy Soul Slinger」からレア・グルーヴのドラムを引用した結果、完璧な深夜のサウンドトラックとなった。
また「(Exchange)」でも、アイザック・ヘイズとクインシー・ジョーンズをサンプリングするという古典的な手法を用いている。このアルバムは1998年の夏を代表する傑作のひとつである。
『100th Window』と『ダニー・ザ・ドッグのサントラ
続く『100th Window』では、ヴォウルズとマーシャルが新たな空気を求めて脱退したため、デル・ナジャはマッシヴ・アタックの名を1人で背負うこととなった。そうした状況を打開するため、この作品ではさらに幅広い方面からヴォーカリストを起用しており、デーモン・アルバーンとシネイド・オコナーが招かれた。
他にもあらゆる面で徹底的な転換が行われており、レコーディング・セッションは元スピリチュアライズドのルーパイン・ハウルを交えた実験的なカットアップから始まった。そうした試みは最終的に放棄され、さらには従来の作品に見られたサンプリングやジャズ・ダブ・フュージョンといった手法も捨て去られた。
シングル「Special Cases」(シニード・オコナーをフィーチャー)では新たな方向性が初めて表に出たが、続く「Butterfly Caught」ではアルバムがまったく異なる作品になることを暗示していた。
活動20年目を迎えたマッシヴ・アタックは飛躍の時を迎え、アクション・スリラー映画『ダニー・ザ・ドッグ』の公式サウンドトラック・アルバム『Danny The Dog』を制作している(これは映画と同じ『Unleashed』という題名でも再発された)。ここでは、デル・ナジャと共同プロデューサーのニール・デーヴィッジが映像から要求される音響効果に自らのサウンドを適応させている。
『Collected』(2006年)はファン必携のベスト盤だ。ここには、過去の作品に収められていた主要な楽曲に加え、アンダーグラウンド・ソウル・ジャズの伝説的存在であるテリー・キャリエールをフィーチャーしたシングル「Live with Me」、さらには他では聞けない別編集ヴァージョンなどが収録されている。
またデュアルレイヤー方式のボーナスCDでは、マドンナ、モス・デフ、デビー・クレアらとコラボレートしたレア音源を聞くことができる。EP『Bite-Size』は、このコンピレーションの姉妹編と言えるだろう。
5枚目の『Heligoland』とベストアルバム
その後、2010年に出たのが現時点での最後のアルバム『Heligoland』だ。おそらく彼らのアルバムの中で最も聴きやすいこの作品は、温かみのあるビートが特徴となっている。ゲスト参加者の中には、ブラーの(というより、ゴリラズのメンバーと言ったほうがいい)デーモン・アルバーン、マジー・スターのホープ・サンドヴァル、エルボーのガイ・ガーヴェイ、新たなブリストル人脈であるマルティナ・トプリー・バード、そしてポーティスヘッドのギタリスト、エイドリアン・アトリーらが含まれていた。
ファンの側は、マーシャルが再び参加し、すべての曲を共作していることを知って歓喜した。しかし悲しい知らせもあった。ワイルド・バンチのオリジナル・メンバーであるジョニー・ダラーが亡くなったのである(このアルバムはダラーに捧げられている)。
当初デル・ナジャらはコラボレーションの範囲を広げようと、数十名の候補者に接触していた。しかし結局、もっと有機的な雰囲気で作品作りを行うことを選択。バーリアルとの共同プロデュースによって制作された「Paradise Circus」はサンドヴァルの美しい歌声がひときわ輝く曲だが、危うげな雰囲気をかすかに漂わせている。そのおかげで、この曲はBBCの傑作犯罪ドラマ『刑事ジョン・ルーサー』の主題歌となった。
アルバムのB面に収められた「Four Walls」は未発表曲だ。ホレス・アンディを再び迎えた「Splitting the Atom」も重要な楽曲であり、ここではデーモン・アルバーンがキーボード・シンセを担当している。この血湧き肉躍るようなグルーヴは、サッカーゲーム『FIFA 11』のファンにはもうお馴染みだろう。一方、アルバムを締めくくる壮大な曲「Atlas Air」は、マッシヴ・アタックらしいとしか言いようのない名曲である。
手短に言えば、マッシヴ・アタックは心と体と魂に効く現代の音楽なのである。
Written By uDiscover Team
マッシヴ・アタック
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