Join us

Stories

マルーン5『It Won’t Be Soon Before Long』解説:大ヒットデビュー作に続く2ndアルバム成功の道程

Published on

大ヒットしたデビュー・アルバムの後にアルバムを作ることは、ミュージシャンにとって最も困難な挑戦の一つだ。マルーン5(Maroon 5)は、2007年5月16日に発売された2枚目のアルバム『It Won’t Be Soon Before Long』でメジャーバンドの一員としての地位を確立したが、それはこのアルバムの制作における確固たる集中力を証明するものだ。

<関連記事>
マルーン5はなぜ20年も成功し続けるのか?ヒットし続ける7つの理由
マルーン5のアルバム・ガイド決定版:大ヒット曲のMVやライヴ映像
マルーン5の大ヒット・シングル10曲とそれらにまつわる最高の瞬間

一聴するとラブソングに聞こえる1stシングル「Makes Me Wonder」

『It Won’t Be Soon Before Long』は2006年に8ヶ月間に渡って録音されたが、リード・シングルを含むいくつかの曲はそれより数年前に制作されたもので、バンドは新曲の完成度を確認するために長い制作作業を行った。スタジオでのセッションを一時中断して曲を発酵させた後、バンドはカリフォルニアのスタジオに再度集まり、気に入ったものは形を変え、うまくいかないものは捨てさってしまった。

アルバムのファースト・シングルとしてリリースされた「Makes Me Wonder」は、バンドのレーベルが気に入っていた曲だったが、まだ正しい判断だとは断言できない感覚もバンドにはあった。そこでコード進行を修正し、いくつかのパートを追加、そしてトラックに古き良きファンクの豊かなプロダクションを重ねることで、この曲はニュー・アルバムの全体的なトーンを確立する曲となったのだ。

「Makes Me Wonder」は2007年3月にラジオで放送されると、瞬く間に注目を集めて全国のラジオ局でヘビーローテーションとなり、全米シングルチャートの64位からトップに躍り出るという記録的な快挙を成し遂げた。アダルト・コンテンポラリー・ステーションでもこの曲は人気を博したが、ダンスフロアでも人気を博し、クラブ・ソング・チャートでもトップを獲得することになった。

全米シングル・チャートで初の首位を獲得したマルーン5は、米国内で6日間のミニツアーを実施した後、世界中のファンに向けてプロモーションを行った。「Makes Me Wonder」は一聴では恋愛ソングに思われるが、実際は当時のアメリカ政権によるイラク戦争への介入を批判する内容となっており、いくつかのイベントでのパフォーマンスより敏感な観客のためにクリーンアップされている。

Maroon 5 – Makes Me Wonder (Official Music Video)

セカンド・アルバムのプレッシャー

フロントマンのアダム・レヴィーンは、アルバム『It Won’t Be Soon Before Now』を「アップビートで、アグレッシブで、ド迫力」と表現しているが、大成功を収めたデビュー・アルバム『Songs About Jane』に続く課題がバンドに重くのしかかっていたのは明らかであり「そのプレッシャーを無視することはできないけど、それでも真摯なものを書けるように自分を鍛えなければならない」と当時語っている。

アダム・レヴィーンは、このアルバムの12曲すべての作曲に携わり、そのうち5曲は単独でクレジットされている。そして当時のドラマーだったライアン・デューシックは、『Songs About Jane』の過酷なスケジュールの中で肩を故障し、バンドを続けることができなくなったため、バンドを脱退。しかし、バンドは結束力を高めるために、『It Won’t Be Soon Before Long』では音楽監督としてクレジット。ライアン・デューシックの後任として起用されたマット・フリンは、マルーン5のサウンドに確かな自信を与え、進化するソウルやファンクの影響を違和感なくシームレスに表現している。

「Makes Me Wonder」がラジオで定期的に流れ、音楽チャンネルでは航空旅行をモチーフにしたセクシーなこの曲のミュージック・ビデオがまだO.A.されていたため、2007年5月16日に発売されたアルバムのリリースに注目が集まった。国別に様々なボーナストラックが用意されていたが、アルバムはサポートを必要としないほどの勢いで、英米や主要国のチャートで1位を獲得し、その他の国でも高い評価を得た。

そしてアルバムのセカンドシングルとしては「Wake Up Call」が選ばれた。この曲のドラマチックなテーマは、予算がかかった派手なビデオでも表現され、おどけてはいるが、決して趣味が悪くなる一線を越えてはいない。この曲が評判を呼んだことは間違いないが、「Makes Me Wonder」の大成功に続くのは簡単なことではなかった。ラッパーのイヴとソウルの歌姫メアリー・J.ブライジがこの曲のパフォーマンスでコラボレーションしたり(後者は2008年のアルバムのリイシューに追加収録)、コンピューターゲーム「Rock Band」で使用されたりしている。

Maroon 5 – Wake Up Call (Official Music Video)

同年11月に3曲目のシングルとして発表された「Won’t Go Home Without You」は、ザ・ポリスの「Every Breath You Take」に敬意を表して作られた。そのメランコリックな曲調は、ドラマチックではない映像表現にも反映されているが、この曲のメロディーの魅力は変わらず力強いものだ。

Maroon 5 – Won't Go Home Without You (Official Music Video)

リアーナとの共演

『It Won’t Be Soon Before Long』が簡単にアメリカでプラチナ・アルバム(100万枚)になったことで、その後のシングル曲のインパクトが多少弱くなったのは確かだが、バンドの勢いを維持するための挑戦はアルバム発売後に行われた海外ツアーで強化された。2008年の大半の期間は、バンドはこのツアーで忙しくしていた中、世界で最も注目されていた女性スターとの見事なコラボレーションを生かし、新曲を加えたアルバムを再パッケージ化することになった。

アダム・レヴィーンとギタリストのジェイムス・ヴァレンタインが作曲した「If I Never See Your Face Again」をジャネット・ジャクソンとレコーディングする計画は頓挫してしまったが、代わりにリアーナが参加することになった。アダムは2人の相性の良さを「楽勝」と表現し、このレコーディングは彼らにとって素晴らしい結果となった。リアーナが客演で楽曲に参加するのはまだ2回目であり、バンドのカリスマなフロントマンとして自信を深めていたアダムのために、コンセプトの高いビデオに出演を果たした。

Maroon 5 – If I Never See Your Face Again ft. Rihanna (Official Music Video)

グラミー賞の「Best Pop Performance By A Duo Or Group With Vocal」をはじめとする数々の賞を受賞したマルーン5は、『It Won’t Be Soon Before Long』のデラックス版に6曲の新曲を追加し、一部の国ではコンサートのパフォーマンスとこれまでの全ビデオを収録したDVDが追加収録された。

これにより、アルバムは米国ではダブル・プラチナ(200万枚)、その他のほとんどの国ではプラチナに認定された。遅れて2008年11月に発売されたアルバムから最後のシングル「Goodnight Goodnight」は、発売から約2年が経過したこのアルバムへの関心を、重要なクリスマス市場に向けて維持するのにも役立った。

Maroon 5 – Goodnight Goodnight (Official Music Video)

現代的で親しみやすい光を放つアルバム

マルーン5は、『It Won’t Be Soon Before Long』のいくつかの曲でコラボレートしたプロデューサー、マイク・エリゾンドの助けを借りて、ブレイクしたデビュー・アルバムから続く重要な橋渡し的な作品を構築することができた。強力なポップ・ファンクの影響を受けたこのレコードは、より現代的で親しみやすい光を放ち、真のジャンルのクロスオーヴァーの巨人としてバンドを位置づけている。

この作品の中心には、おなじみのメロディーの核があり、アダムの記憶に残るサビのメロディーの才能が興味深い歌詞のコンセプトを包み込んでいる。テーマが愛であったとしても、その普遍的な物語に対する彼のひねくれた解釈が物事を面白くしてくれている。また、ニューウェーブのフレーバーを持つ陰鬱なバラードは、「Kiwi」のようなアップテンポな曲とバランスをとっている。「Kiwi」はアルバムの中で最も速い曲であり、バンドがロックのルーツを完全に放棄していないことを示している。

Kiwi

マルーン5は、記憶に残るミュージック・ビデオで急速に評価を高め、アダムのカリスマ的魅力もあって、長いキプロモーション期間の終わりには、『It Won’t Be Soon Before Long』は人気曲を収録する人気アルバムとなっていた。ラジオ番組の担当者はバンドの親しみやすいメロディーの才能を信頼しており、レコード店は必ず売れる自信があり、メディアはこのグループの強いビジュアル・アピールを利用しようとしていた。

マルーン5は、革新への飽くなき欲求と特徴的なロックのDNAを都会的でソウルの影響と融合させることができる稀有な才能を持って、次の10年を迎えようとしていたのだ。『It Won’t Be Soon Before Long』は、マルーン5がメジャーシーンに根付き始めたアルバムであり、このバンドが革新と驚きの代名詞となるまで、そう長くはかからなかった。次は何が起こるのだろうと、当時の私たちは皆、期待していた。

Written By Mark Elliott



マルーン5『It Won’t Be Soon Before Long』
2007年5月16日発売
CD&LP / iTunes / Apple Music / Spotify / Amazon Music


亡き友、マネージャーに捧げる最新アルバム

マルーン5『JORDI』
2021年6月11日発売
国内盤CDデラックス / iTunes / Apple Music / Spotify / Amazon Music





 

 

Share this story
Share
日本版uDiscoverSNSをフォローして最新情報をGET!!

uDiscover store

Click to comment

Leave a Reply

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

Don't Miss