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【レビュー】CDなのにハイレゾ?「ハイレゾCD」から特徴的な3枚を選出

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4月10日に発表された「ハイレゾCD」。音楽ファンだけではなくオーディオ・ファンにも話題となったこの新規格。6月20日に発売されたこのシリーズの中から特徴がわかり易い3枚を、オーディオ・ライターの田中伊佐資さん、麻倉怜士さん、鈴木 裕さんにレビューして頂きました。

ハイレゾCDとは?・・・ハイレゾ音源をクオリティそのまま小さくできる最新のエンコード方法を用いたMQA-CDと、最新の高音質盤であるUHQCDを掛け合わせたもの。SACDと違って通常のCDプレイヤーでも再生可能で音の違いも楽しめるうえ、MQA対応機器やソフトでデコードすれば実際のハイレゾ音源として聴くこともできる。


スタン・ゲッツ&ジョアン・ジルベルト『Getz/Gilberto』

『ゲッツ/ジルベルト』を初めてちゃんと聴いたのは高校生のときだ。当時、自分にとって新鮮な音楽だったジャズへ向かう途中の橋渡しになった作品のような気がする。録音が名匠フィル・ラモーンとは知らないまま、なんだか音がいいなあと一人悦に入っていた記憶もある。

そういう自然に血肉化した作品は、オーディオの音をチェックするときに必ず取り出すことになる。以前は、スタン・ゲッツのサックスがいかに前へ出てくるかに注目していたが、いつの頃からかジョアン・ジルベルトの声に耳を澄ますようになった。なまめかしさが漂ってくるか。そこに集中している。

「ハイレゾCD 名盤シリーズ」の本作を聴くと、ご存知1曲目「イパネマの娘 」が始まってすぐ、ジョアンの潤いを帯びた歌声が眼前にさりげなくポンと浮かび上がったのが“見えた”。妖しいダンディズムが匂ってくる。これは来た。これほどまで玄妙で立体感がある声を自分のCDプレーヤーで聴いたことはないから驚いた。ちなみにそれはハイレゾ対応していない普通のものである

「ハイレゾCDはCDの最終進化形」と謳われているが、確かにその通りと大いに納得できた。そのまま気持ちよく丸ごと聴き終えたことが、なによりもその証になるだろう。

Written by 田中伊佐資(オーディオ・ライター)


カーペンターズ『The Singles』

カーペンターズ「シングルズ69-73」を非MQAのSHM-CD(*)、今回のハイレゾCD(MQA-CD)の非デコード再生、デコード再生を比較した。SHM-CDは、まさにジャストCDサウンド。明確でくっきりしている。粒子が大きく、空間表現もドライ系。ハイレゾCDの非デコード再生は凄く違う。音に潤いとしなやかさが出てきた。カレンの歌も、深くなり、耳にとても気持ち良い。コーラス部がハーモニー的に音数が増え、より重層的なサウンドになった。通常CDにハイレゾ的なフレーバーをさらっと振りかけたという印象。

すでに舞い上がりそうだが、でも本当に凄いのはULTRA DACでデコードした、折り紙を元の352KHz/24bitに戻した正真のMQA音だ。実に華麗で伸びやか。カレンの声がひじょうに滑らかで美麗になった。ヴォーカルの粒子がより細かく美しく、その分、表情の細やかさが表出される。楽器の質感も数段階、上がる。細かな部分の変化は大きいが、本質的にはカーペンターズが目指した音楽の世界観がより明瞭、明確な形で表現される。

それはつまり、カレンの声のすべらかな細やかさ、ハーモニーの美しさ、多重録音の深み、ピアノの輝きと軽妙さ……などが総合されたカーペンターズ・サウンドが、より耳に、そして心に分かりやすい形で浸透するということに他ならない。ハイレゾCDは単なるCDのサバイバル策ではない。CDがハイレゾ化されたまったく新しいパッケージメディアと捉えるべきではないか。

(*) 2014年発売の紙ジャケット商品(UICY-76034)。同じDSDマスターから44.1kHz/16bitにHRカッティングしたもの。

Written By 麻倉怜士(オーディオ・ビジュアル評論家)


スティーリー・ダン『aja』

MQA-CDとして登場した本作はこのアルバムのファンにとっては必聴の1枚である。なぜならアメリカのオリジナルマスター(アナログテープ)を基にした最新のDSDマスター音源から作ったものであり、そのサウンド傾向は一般のCDプレーヤーでも聴けるが、MQAで聴くと心底感動するからだ。352.8 kHz/24bitのハイレゾをMQAとして折り畳んで収録。対応するCDプレーヤーやDACがあれば聴ける盤なのだ。

試聴は比較のために、ハイレゾ音源として配信されてきた24bit/192KHzをまず聴いたが「そうそうこういうかっちりとした音で、LPで聴くと柔らかさが出てくるサウンドなんだよな」ということを思い出した。しかしMQA CDで聴くとエコー成分や各楽器の響きの量が増え、ベースやドラムスのキックなどの低音楽器の、厚みのあるほぐれた感じも心地いい。音に艶があり、キメ細かい滑らかなトーン。サウンドステージは響きのある空間分、広く展開している。なにより感動するのは音の鮮度感がきわめて高く、マスターの磁気テープ特有の音の柔らかさがそのまま伝わってくるような感じの生命力のある音だ。アナログライクという言い方をしてもいいだろう。

Written By 鈴木 裕(オーディオ・ライター)


「ハイレゾCD 」を気軽に試すことができる1枚千円の体験サンプラーも発売
「ジャズ」「ロック&ポップス」「クラシック」の3つのジャンルの名曲を
ハイレゾCD(Disc 1)と通常CD(Disc 2)に同じ楽曲をそれぞれ収録
千円でそれぞれの音の違いを簡単に聴き比べることができます

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「ハイレゾCD 名盤シリーズ」
発売日:2018年6月20日
全100タイトル/生産限定盤
税抜価格 3,000円(2枚組4,000円)
グリーン・カラー・レーベルコート/ジュエルケース+クリアファイル帯仕様

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