ビーチ・ボーイズの『Shut Down Volume 2』

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1963年はアメリカでビーチ・ボーイズが大活躍した年だった。この年、全米チャートではシングル3曲がトップ10ヒットとなり、アルバムも3枚がトップ10入り。今や彼らはアメリカを代表するポップ・ヴォーカル・グループとなっていた。翌1964年、3月2日にアルバム『Shut Down Volume 2』が発売されたときも、その冒頭1曲目「Fun, Fun, Fun」が既にチャートを上昇しつつあった。

さて『Shut Down Volume 2』というからには、『Volume 1』もあるのでは?と思われる方もいるだろう。実は前の年の夏、キャピトルは複数アーティストの曲を集めたコンピレーション・アルバム『Shut Down』を出していた。これはビーチ・ボーイズの同名曲がヒットしたのを受けて企画されたアルバムだった。(ビーチ・ボーイズの「Shut Down」はシングル「Surfin’ USA」のB面で発表され、こちらも全米シングル・チャートのトップ30に入っている)

この『Volume 1』は、ビーチ・ボーイズと俳優のロバート・ミッチャムという取り合わせにもなっている。ビーチ・ボーイズは表題曲「Shut Down」と初期のホット・ロッド曲「409」を提供。また他にもザ・チアーズ、ザ・ピルトダウン・メン、スーパー・ストックスといったバンドの曲が収録されている。一方「The Ballad of Thunder Road」は、ミッチャムが歌った曲だった。これは彼が1958年の映画『死の驀走(原題:THUNDER ROAD)』の挿入歌として共作した曲で、‘ハイウェイでの事故死’が題材となっていた。

その後に出た『Shut Down Volume 2』はビーチ・ボーイズ単独名義のアルバムとして発表された。「Fun, Fun, Fun」は最終的に全米シングル・チャートで5位に到達。これは当時のビーチ・ボーイズにとって「Surfin’ USA」(最高3位)に次ぐ大ヒットになった。次のシングルとなった名曲「I Get Around」はアルバム未収録だったが、そのB面のゴージャスな曲「Don’t Worry Baby」は『Shut Down Volume 2』に収録されている。こちらの曲も、やはりシングル・チャートのトップ30入りを果たした。

このアルバムには「In The Parkin’ Lot(邦題:恋のパーキン・ロット)」や「Pom, Pom Play Girl」といったユーモラスな曲、さらにはお喋り中心のふざけた作品「Cassius’ Love vs. ‘Sonny’ Wilson(邦題:ラヴ対ウィルソン)」も収められていた。また初期ビーチ・ボーイズのレコードでは恒例のようになっていたが、ロックン・ロールのヒット曲もいくつかカヴァーされている。そのひとつ、「Why Do Fools Fall In Love(邦題:恋はくせもの)」はフランキー・ライモン&ザ・ティーネイジャーズが1956年に出した代表曲だった。また「Louie Louie」は1955年にリチャード・ベリーが吹き込んだヴァージョンがオリジナル。これはその後キングズメンがヒットさせていたが、ビーチ・ボーイズも独自のカヴァーに仕上げている。

The UK EP of ‘Fun, Fun, Fun’

このアルバムでは「Keep An Eye On Summe」も注目に値する。これはブライアン・ウィルソンとマイク・ラヴが共作したチャーミングな曲で、共作者クレジットにはキャピトルのエンジニア、ボブ・ノーバーグも名を連ねていた。ブライアンは1998年のソロ・アルバム『Imagination』でこの曲の素晴らしいリメイク・ヴァージョンを披露している。

当時、音楽ファンの関心事 ―― というより、アメリカ全国民の関心事 ―― となっていたのは新たにアメリカを席巻しつつあったザ・ビートルズだった。おそらくそのせいで、『Shut Down Volume 2』は全米アルバム・チャートに入るまで6週間もかかっている。最高13位というチャートでの成績は、それまでのビーチ・ボーイズの活躍ぶりからすると地味に見える。しかしその後チャート入りの期間は38週間にも達し、1966年の末にはゴールド・ディスクに認定された。

Spotifyで『Shut Down Volume 2』を聴く
ビーチ・ボーイズ アーティスト・ページ

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