「ちょっとエセ・サーフィン風にやってみようと思った」ビーチ・ボーイズの「Do It Again」

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ビーチ・ボーイズは、長きに渡ってチャートにたくさんのレコードを送り込んできた。そうした中には、故国アメリカでヒットしなかったものの、イギリスでは大勢の忠実なファンのおかげで大成功を収めたシングルがいくつかある。たとえば1967年の「Then I Kissed Her」、1970年の「Cottonfields」、1979年の「Lady Lynda」といった曲は、どれも全米チャートではまったく姿が見えなかったが、全英チャートではトップ10入りを果たしている。

また、英米両方のチャートに入ったシングルでも、全英チャートでの順位のほうがはるかに上という例がいくつかある。1968年7月27日、ビーチ・ボーイズのシングル「Do It Again」が全米チャートで初登場88位を記録した。これは、この年に発売されたヒット・アルバム『20/20』からシングル・カットされたブライアン・ウィルソン&マイク・ラヴの共作曲だった。このあと8月を通して「Do It Again」は順調に順位を上げていったが、おそらくやや先鋭的な重いビートが妨げになったのだろう。その後アメリカでの順位は伸び悩んだ。

それでもこの曲には、ビーチ・ボーイズのトレードマークとなっていた空高く舞い上がるようなハーモニーが入っていた。それに歌詞も、デビュー当時によく取り上げた題材を懐かしげに振り返るような内容だった。イギリスのビーチ・ボーイズ・ファンはこれに飛びついた。

ずっと考えてた/君と一緒にサーフィンしたりダンスしたりした場所のことを
また会ってみたいいろんな人たちのことを/だから一緒に戻ってみよう/そしてまたやり直そう

「Do It Again」はビルボード誌のポップ・チャートでは9月に最高20位を記録するのがやっと。しかしそのころには、既に全英チャートでは1位を獲得していた。1位到達は1週だけに留まったが、それでもこれはビーチ・ボーイズにとって「Good Vibrations」に続く2度目の全英チャート首位獲得となった。これは驚くべき成功だった。なぜなら当時ブルース・ジョンストンが『NME』誌の年末号で語っていたように、この曲はそのころのビーチ・ボーイズの音楽的方向性とはまるで違う曲だったのだ。

「タイム・トリップならぬタイム・トリックだよ!」とジョンストンは笑う。「あのころ、他のグループはみんな基本に戻ろうとしてた。ストーンズは昔ながらのスタイルで”Jumping Jack Flash”をやってたし、ビートルズはインチキ・ロック風の”Lady Madonna”を出してきた。僕らは、そういうパターンをちょっとエセ・サーフィン風にやってみようと思ったんだ。本気でやってたわけじゃないし、自分たちの今の音楽的方向性を出すつもりなんか全然なかった」。

Written By Paul Sexton


ザ・ビーチ・ボーイズ『20/20』

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