ニック・ドレイクの20曲:煙の向こうにいた苦悩した天才

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1974年、26歳の若さで亡くなったニック・ドレイク(Nick Drake)の死は、彼の家族や友人、そして忠実なファンのみならず、他の人々にとっても気にかかる出来事であっただろう。uDiscoverの20曲のリストで、ニック・ドレイクの驚異的な魔法を紹介しよう。

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その紹介と20曲

ニック・ドレイクが彼の短い人生で録音したアルバムはたった3枚だが、彼の優美な魔法を最も捉えている20曲を選ぶのは、やはり挑戦である。彼のうっとりするようなメロディの質感と魅惑的なフィンガーピッキング奏法、深みのある歌詞のおかげで、ほぼ全ての作品が“フォークの殿堂”入りを果たしているからだ。この挑戦にもかかわらず、我々はニック・ドレイクの円熟した才能だけでなく、その死後も愛され続けている彼の人生を垣間みることができるような20曲を選んだ。

ニック・ドレイクは1948年6月に、彼の父がエンジニアとして働いていたビルマ(*注:現在のミャンマー)のラングーンで生まれた。UKのバークシャーの進学校卒業後、マルボロ・カレッジやケンブリッジ大学で学んだニック・ドレイクは、現代アーティストの集団とは付き合わなかった。著しく“非ストリート”的で、ミック・ジャガー風の洗練されていないコックニー訛りを持ちながらも説得力があり、まるで19世紀の偉大なロマン派のアーティストの生まれ代わりのようであった。

こうした特質は、1969年9月1日に発表された彼のファースト・アルバム『Five Leaves Left』に映し出されている。名作と称賛され、2003年にローリングストーン誌の歴史上最も偉大な500枚のアルバムで280位に選ばれ、2005年にイギリスのTV局「チャンネル4」が行なった“偉大な100枚のアルバム”の投票結果でも85位を記録。現在ではこれほど高い評価を得ながらも、当時の全米/全英チャートには入らなかった。

 

デビューアルバム『Five Leaves Left』収録曲

我々がプレイリストにハイライトとして選んだ冒頭の2曲は、おそらくニック・ドレイクの曲の中で最も知られている「Cello Song」と「River Man」だ。両方とも『Five Leaves Left』と次のアルバム『Bryter Layter』に収められた顕著なニック・ドレイクの見事なフィンガーピッキングと、様々な楽器とのコラボレーションの完璧お手本の楽曲だ。「Cello Song」では、ニック・ドレイクはクレア・ローサーの素晴らしいチェロの演奏に支えられている。

コラボレーションという繋がりで、我々は「Three Hours」を選んだ。ニック・ドレイクの普段の気ままに歩くようなスタイルに対し、珍しく勢いのある曲だ。この曲にはダニー・トンプソンが参加し、彼のダブルベースが躍動するビートを提供し、その上にニック・ドレイクが耳に残るヴォーカルを乗せている。

このアルバムから選んだ最後の曲が「Fruit Tree」で、警告のように名声の気まぐれさについて考えを巡らせる曲だ。ニック・ドレイクは、「自分の価値が認められるのは、地中深くの自分の場所で安らかに眠る時」だと歌う。彼の作品の中で特に当たっている予言であった。

 

『Bryter Layter』からの収録曲

ニック・ドレイクの2枚目のアルバム『Bryter Layter』では、作曲アプローチの変化が見られる。初期バロックのフォーク・スタイルは商業的には成功しなかったため、『Bryter Layter』をより軽快な作品にしようとしたのだ。

ニック・ドレイクの快活な演奏と並んで、我々は再度、彼の卓越したパフォーマンスを聞くことができる。「One Of These Things First」は、陽気なピアノとリズム・セクションを伴って、非常に魅力的で活気のある曲に仕上がっている。

これと似た曲で、「At The Chime Of A City Clock 」と「Northern Sky」の2曲は、ニック・ドレイクと彼のプロデューサーのジョー・ボイドが、この曲は脚光を浴びるきっかけになるに違いないと信じたバラード。ピアノ、オルガン、ハーモニウムが加わって、ニック・ドレイクの混沌としたもの悲しい歌詞に、素晴らしい深みを与えている。

これらのアルバムから我々が選んだ2曲は、同じ名前と似通ったテーマを共有している。「Hazy Jane I」と「Hazy Jane II」は、世界からの孤立についての曲だ。ニック・ドレイクは偉大な社会を理解できないことを思索している。

この2曲「Hazy Jane I」と「Hazy Jane II」は、『Five Leaves Left』収録の「Thoughts Of Mary Jane」における探求を合わせて聴くと、これまでにもたくさん書かれている彼の喫煙癖と疎外感の関係性が強まり強固になっているのがわかる。

『Bryter Layter』もまた、商業的には失敗し、昔からシャイで内向的だったニック・ドレイクは、より一層自身の内側にこもるようになった。

 

『Pink Moon』からの楽曲

この孤立と鬱から生まれたニック・ドレイクの最高かつ最後のアルバムが『Pink Moon』だ。それまでの2枚と比べ、この3作目は、アルバム・タイトル・トラックのピアノの演奏を除き、ニック・ドレイクの演奏だけが収められている。

ニック・ドレイクはしばしばシャイな人間と見られているが、彼は自身のアートに関しては、非常に強く主張をしている。より削ぎ落としたアプローチを望んで、プロデューサーと口論をした過去を持つ彼は、遂に願いを叶えたのだ。

「Place To Be」や「Which Will」「Road」「Know」といった曲は、ニック・ドレイクの曲の中で最も強い影響力を持っている。

これらの赤裸々な曲と並んで、温かい「From The Morning」も、今回の20曲のプレイリストに入れた。

また、アルバム・タイトル曲の「Pink Moon」は、後にフォルクスワーゲンの1999年のTVコマーシャルに使われ、遂にニック・ドレイクが商業的に認知を得る機会となり、今日も傑作として残っている。

 

亡き後のアルバム『Time Of No Reply』の楽曲

『Pink Moon』は高い評価を得たが、削ぎ落としたシンプルさが、商業的な成功を狭めることにもなった。ニック・ドレイクの鬱がピークに達した時期の最後の曲の数々を我々はプレイリストに選んだ。彼の死後何年も経った後に発表された『Time Of No Reply』は、未発表曲、アウトテイク、デモ、そして彼の早過ぎる死の9ケ月前に録音した最後の曲の4曲を合わせたアルバムだ。

デモとアウトテイクの中でも、ブルージーな「Been Smoking Too Long」は一際目立っており、最後の4曲から選んだ「Hanging From A Star」と「Black Eyed Dog」は、両方とも圧巻で、同時にニック・ドレイクの技能と苦難を痛烈に思い出させる曲だ。

リストの最後の「River On The Wheel」は、彼が一番最後にレコーディングした一曲で、彼の欠点のないアコースティック・ギターが、独特の歌詞と合わさった素晴らしい一例である。

ニック・ドレイクは、ひどく苦悩した天才で、ロマンチックで、不運な若い男といったイメージを持たれており、その作品は散りゆく木の葉のサウンドトラックのように思われている。しかし彼の短い人生にも関わらず、彼の遺した音楽は、私達に想像以上の何かしらのひらめきを与えてくれる。

これらの20曲が示すように、ニック・ドレイクはカテゴライズが難しい人であり、しばしば文字通り煙の向こうにいた人であり、だからこそ彼の音楽は、こんなにも魅力的なのである。

Written By Richard Havers




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