ブッカー・T&ザ・MG’sのメンバー、スティーヴ・クロッパーが84歳で逝去。その功績を辿る

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Photo: Don Paulsen/Michael Ochs Archives/Getty Images

スタックス・レコードのギタリストとしてメンフィス・ソウルの黄金期に多大な貢献を果たし、ブッカー・T&ザ・MG’sのメンバーとしても活躍したスティーヴ・クロッパー(Steve Cropper)が逝去した。享年84。当記事執筆時点で死因は明らかにされていない。

この訃報は、12月3日、スティーヴ・クロッパーの公式Facebookに投稿された次のような声明とともに伝えられた。

「深い悲しみとともに、スティーヴン・リー・クロッパーが本日、ナッシュビルで静かに息を引き取ったことをお知らせします。彼は世界中の人々の心を動かした偉大なミュージシャン、ソングライター、プロデューサーでした。ブッカー・T&ザ・MG’sの伝説的ギタリストであり、スタックス・レコード・サウンドの創始者として、“(Sittin’ On) The Dock of the Bay”、“Soul Man”、“Knock on Wood”、“In the Midnight Hour” など、音楽史に残る不朽の名曲の数々を生み出すのに貢献しました。ロックの殿堂入り、グラミー賞受賞、ソングライターの殿堂入りといった輝かしい功績を持つスティーヴの影響力は計り知れません。夫であり、父であり、友人であった彼の死を悼む一方で、スティーヴの音楽が永遠に生き続けることに慰めを見出しています。彼が奏でた一音一音、彼が紡いだ一曲一曲、そして彼がインスピレーションを与えたすべてのアーティストたちが、今後も彼の精神と芸術性を伝え、世代を超えて人々に感動をもたらし続けていくことでしょう。スティーヴは、最愛の妻エンジェル・クロッパー、子供たちアンドレアとキャメロン・クロッパー、スティーヴィー、アシュリー、そして彼の卓越した才能によって人生を変えられた無数のミュージシャンやファンを残して旅立ちました。家族は、この困難な時期に寄せられた皆様の温かいお気持ち、ご支援、そしてプライバシーへの配慮に深く感謝しています」

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スタックスとブッカー・T&ザ・MG’sでの功績

1941年10月21日、ミズーリ州ドーラ近郊に生まれたスティーヴ・クロッパーは、9歳でメンフィスへ移住。14歳からギターを弾き始め、チャック・ベリーやジミー・リード、チェット・アトキンス、ザ・ファイヴ・ロイヤルズのローマン・ポーリング、ウェイン・ベネットらを初期の影響として挙げていた。

彼は、伝説的なスタックス・レコードがまだ“サテライト・レコード”と名乗っていたレーベル黎明期(1957年にジム・スチュワートとエステル・アクストンによってサテライト・レコードとして創設され、1961年にスタックス・レコードへ改称)の契約アーティストの一人だった。スティーヴ・クロッパーと彼のインストゥルメンタル・バンド、マーキーズ(旧称ロイヤルズ・スペーズ)が1961年に同レーベルからリリースしたデビュー・シングル「Last Night」はポップス・チャート3位、R&Bチャート2位のヒットを記録。

その後、マーキーズのメンバーがレーベルのホーン・セクションとして活動する中、スティーヴ(ギター)はブッカー・T・ジョーンズ(キーボード)、ドナルド・“ダック・ダン”(ベース)、アル・ジャクソン(ドラム)と共にブッカー・T&ザ・MG’sを結成し、「Green Onions」「Hang ’Em High」「Time Is Tight」などのヒット曲を生み出していく。

ブッカー・T&ザ・MG’sはまた、スタックス・レコードのハウスバンドとして、オーティス・レディング、ウィルソン・ピケット、サム&デイヴ、アルバート・キング、ビル・ウィザースといったアーティストの何百ものレコーディングに参加。人種差別がまだ法律で認められていた時代に、黒人と白人が共演するバンドとしても象徴的な存在だった。スティーヴはかつてこう語っていた。

「スタックスのドアをくぐれば、“色”なんて関係なかった。全員が“ヒット曲を作る”という同じ目的のためにそこに集まっていたんだ」

生涯現役 ― 最後の最後まで音楽に捧げた人生

スティーヴ・クロッパーはギタリストとしてだけでなく、ソングライター、プロデューサーとして、メンフィス・ソウルの礎を築いた人物の一人として知られている。1992年にブッカー・T&ザ・MG’sの一員としてロックの殿堂入りを果たし、2005年にソングライターの殿堂入り、2007年にはグラミー生涯業績賞を受賞している。彼の創作意欲は晩年まで衰えを知らず、2024年発表のアルバム『Friendlytown』で今年のグラミー賞にもノミネートされていた。

この訃報を受け、ジョー・ボナマッサ、ミック・フリートウッド、デイヴ・メイソン、ヒューイ・ルイスら多くのアーティストが追悼メッセージを寄せている。ヒューイ・ルイスは自身のインスタグラムでこう述べている。

「スティーヴ・クロッパーの訃報に触れ、とても悲しい。彼は偉大な人物だった。メンフィス・ソウル・ミュージックの創始者の一人として、数多くの重要作品を生み、またプロデューサー、演奏者としても貢献した。彼の音楽は永遠に生き続けるだろう。彼はまた、私がこれまで出会った誰よりも優しく寛大な人だった。今日はアメリカ音楽にとって悲しい日だが、天国は少しファンキーになっただろうね」

Written By Sam Armstrong




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