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夫バリー・マンと共に20世紀を代表する作詞家シンシア・ワイルが82歳で逝去。その功績を辿る

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Photo: Rick Maiman/Sygma via Getty Images

長年のコラボレーターでもある夫のバリー・マンと共に、最も多作で成功したソングライター・デュオのひとつとしてグラミー賞に輝き、20世紀を代表するポップ・ソングの数々を生んだシンシア・ワイル(Cynthia Weil)が2023年6月1日、ビバリーヒルズで82歳で逝去した。

この訃報を伝えた娘のジェン・マンは彼女についてこう述べている。

「彼女は、私たち家族が求め得る最高の母、祖母、妻でした。私にとっては親友、人生のパートナーでもあった彼女は、音楽界におけるアイドルであり、女性先駆者でした」

同時代に活躍したニール・セダカは、次のように追悼を捧げている。

「シンシア・ワイルが亡くなったと聞いて、とても悲しく思っています。ブリル・ビルディングで一緒に過ごした時期、私たちはとても親しかった。永遠に生き続けるスタンダードのいくつかを生んだ彼女の死は、アメリカのポップ・ミュージック界とって大きな損失です。バリーとご家族に心からお悔やみ申し上げます」

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You've Lost That Lovin' Feelin'

 

1980年代の2年間の活動休止期を含め、62年間の結婚生活を送ったシンシア・ワイルとバリー・マンは、「You’ve Lost That Lovin’ Feelin’」「We Gotta Get Out Of This Place」「On Broadway」「Walking In The Rain」「I Just Can’t Help Believing」「Make Your Own Kind Of Music」「Here You Come Again」「Looking Through The Eyes Of Love」「Don’t Know Much」「Just Once」などの不朽の名曲の数々を共作した。

二人は共に、1987年に“ソングライターの殿堂”、2010年に“ロックの殿堂”入りを果たしており、2011年にはソングライターの殿堂における最も名誉な賞で、過去の就任者だけに授与される“ジョニー・マーサー賞”を受賞している。2004年には、2人のソングブックからの名曲の数々を彼らが自らパフォーマンスするオフブロードウェイ・ショー「They Wrote That?」が行われた。

Just Once

 

その生涯

1940年10月18日にニューヨークで生まれたシンシア・ワイルは、女優やダンサーとして下積み時代を過ごしながら、程なくしてソングライティングの才能を開花させていった。彼女とバリー・マンは、ニューヨークで有名な“ヒットソング生産工場”として知られていたブリル・ビルディングで出会い、1961年に結婚。やがて二人は、当時のもう一人の大物ソングライターで、後に失脚したフィル・スペクターともクリエイティヴなパートナーシップを組んでいた。

ザ・ロネッツの元リードシンガーで、フィル・スペクターの元妻である故ロニー・スペクター(昨年1月に逝去)のソーシャルメディアには次のようなメッセージが投稿されている。

「ロニーが大好きだったロネッツの曲“Walking in the Rain”の作者であるシンシア・ワイルが本日亡くなりました。夫のバリー・マンと共に、シンシアは数え切れないほど多くのヒット曲を手掛けてきました。“Walking…”はロニーが唯一1テイクで録ったレコーディングでした」

The Ronettes – Walking In The Rain (Official Audio)

過去に二人が曲を提供したモンキーズの最後のオリジナル・メンバーであるミッキー・ドレンツはこう哀悼の意を捧げている。

「シンシア・ワイルが亡くなったと聞いて深く悲しんでいます。作曲チーム、マン&ワイルのメンバーです。彼らはポップス史上、最もアイコニックな楽曲を生みました」

グレッグ・ショウは1982年の著書『The History of Rock』の中で、こう書き記している。

「マンとワイルは、ブリル・ビルディング時代に流行の最先端をいっていた。キャロル・キングや彼女の仲間たちは、昼は“Take Good Care Of My Baby”といった曲を書き、夜は劇場に行ったり、家でテレビを見たりという、言うなれば保守的な中流階級タイプだったが、バリーとシンシアは、グリニッジ・ビレッジのシーンで詩人やビート族、ジャズメンたちと親交を深めていた」

Don't Know Much (feat. Aaron Neville) (2015 Remaster)

1983年、当時すでに20年になろうしていた二人の共作活動について、シンシアはBam誌にこう語っていた。

「 私たちの生活が、行き当たりばったりであるという事実に、完全に麻痺していることがあります。一番近いのはスポーツ競技だと思うんです。ピッチャーは、自分のカーブがなぜその日の午後に曲がらないのかがわからない。そこに共感できるからこそ、二人ともスポーツ・ファンになったのです。ピアノの前に座っていても、ある日は何も出てこないのに、次の日にはすべてが流れ出すように、今まで書いたこともなかった42もの曲のテーマが頭に浮かんでくるのか?ですから、ちょっとした工夫をするんです。ラジオを聴くこともあったり、敢えて聴かなかったり。靴を履いたり、脱いだり。リビングルームで書くこともあれば、書斎で書くこともあります」

Written By Paul Sexton



 

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