ザ・ビートルズ『Anthology 1』発売当時、御殿場から西へ走った宣伝プロモーターのドキュメント
1980年代から20年以上にわたって東芝EMIの洋楽ディレクターを務め、2025年には『東芝EMI洋楽部の輝ける日々』という書籍も発売した森 俊一郎さんが、“吉野家七味”として音楽出版社フジパシフィックミュージックの公式noteにて連載を執筆中。
今回はザ・ビートルズの『Anthology 1』が発売された当時について書かれた連載第15回分をuDiscovermusic日本版と同時掲載。他の連載はこちらからご覧ください。
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今年はザ・ビートルズ来日60周年
こんにちは。吉野家七味です。
知ってますか?
今年はあの、ザ・ビートルズが日本公演にやってきてからちょうど60年。日本武道館で3日間、5公演を行い、日本におけるビートルズ・ブームの総仕上げとなった1966年。4人が揃って「ザ・ビートルズ」というバンドとして日本の土を踏んだのはこれが唯一の機会。
ポール・マッカートニーはその後1990年を皮切りにソロでいくども来日、リンゴ・スターもオール・スター・バンドを引き連れて1989年、ポールに先がけること数カ月前に日本武道館のステージを1966年以来4人の中で初めて踏んだ。ジョージ・ハリスンはエリック・クラプトン・バンドと一度だけ、1991年に東京ドームに来てくれた。ジョン・レノンはお忍びも含めて数回来ているが、残念ながらライヴはやっていない。それが歴史…。
そんな中、昨年2025年11月にはビートルズ・ファンにとっては思いもかけない『Anthology 4』が発売された。七味もテレビ局に呼ばれ、11月30日に現役の担当者と一緒にBSフジ「ザ・ビートルズ・アンソロジー」特番に出演したわけだが、なんと!この番組の再放送が好評につき決まったという。オンエア日は2026年1月30日、前回見逃した人はBSフジのサイトでチェックしてみよう!(紛らわしいですがこれは昨年オンエア時のページです)。
『Anthology 1』発売当時のドキュメント
さてさて、そこからさかのぼること30年、『Anthology 1』発売の苦労話、笑い話は森俊一郎著『東芝EMI洋楽部の輝ける日々』にも詳しいが、細かいところの記憶違いも明確になってきたのでこの場を借りて一部を正しく再現をしてみようと思う。
そのために、現在はユニバーサル ミュージックの洋楽カタログ部門で八面六臂の活躍をしている、当時東芝EMI福岡営業所の洋楽宣伝プロモーターだった小林和広氏に話を聞いてきたぞ! 小林氏は七味よりは1世代若い、ギターはマーティー・フリードマン級、絵を描かせればプロも裸足で逃げ出す、もちろん仕事もできる頼りになる男だが、何よりすごいのは「筆まめ」と「物持ちの良さ」。
その小林氏が1995年当時、ファックスで(というところが時代ですが)九州の担当ラジオ局各社に送っていた最新洋楽情報という手書きの情報ツールも保存されていて、当時の『Anthology 1』(と、以下略す)の発売に向かう緊迫感あふれるリポートが!!
それによると『Anthology 1』発売の1995年11月22日からさかのぼること2日前、11月20日月曜に東芝EMI御殿場工場から各店舗への商品の発送が開始され、同時にラジオ局でのオンエアも日本時間の11月20日午前10時となっていたため(アメリカABCテレビで映像版の『The Beatles Anthology』オンエア開始の時間)、各エリアの洋楽宣伝プロモーターもこの日の朝、御殿場工場にサンプル盤を受け取るべく集合していたのです。これねー、今さら思うんですけど、ドキュメンタリーになりえましたよね、カメラ回しておいたら「プロジェクトX」の候補には充分なっていたでしょう、残念!
さて、小林少年、じゃない、小林氏もその一人として19日日曜夜には最寄りである沼津へ前ノリ、一泊して翌朝20日8時には御殿場工場へ到着!製造工程の最後の組み立て部分を見学しつつ(その話も臨場感あるラジオ・ネタになった)、10時の出荷を見守る…。
NHK、日本テレビ、読売新聞などカメラも多く来ている中の緊張の一瞬。そして、解禁後は受け取った割り当て分のサンプルCDをしっかりと抱きかかえて小林氏は福岡へ向かう新幹線の中からもラジオ局に向けて“実況中継”!
「今関ヶ原を通過中」
「今、東寺が見えてます」
「瀬戸内海がきれいです」
「そろそろ本州を離れ九州に入ります」
「博多に着きました!」
「あと2分で局につきます!」
などと(一部想像含む)レポート入れながら無事に到着。日本で(もしかしたら)一番早い“ニュー・シングル”「Free As A Bird」のラジオ・オンエアを実現した、という感動のドキュメント!
新曲がオンエアされた翌日から東芝EMIの福岡営業所はもちろん、全社的に「問い合わせ殺到!」あっという間に2枚組CD50万セットを超える大ヒットになっていたのでした、めでたしめでたし。
それにしてもこの時はテレビ露出も半端ではなく、小林氏が保存していた本社第Ⅰ営業本部から各営業所へ11月21日の夜、一斉に流されたファックスには、
日本テレビ「ズームイン!!朝!」(11月22日)
日本テレビ「The・サンデー」(11月26日)
TBS「関口宏のサンデーモーニング」(11月26日)
フジテレビ「めざましテレビ」(11月22日)
フジテレビ「THE WEEK」(11月25日)
テレビ朝日「やじうまワイド」(11月22日)
テレビ東京「NEWSモーニングJAM」(11月22日)
テレビ東京「お昼のニュース」(同日)
などが決まりましたよ!という情報がてんこ盛りだった。もちろん米ABCと独占契約を結んでいたテレビ朝日は「ニュースステーション」での「Free As A Bird」解禁から始まって年末大晦日の映像版一気オンエアまで決まっていたところが“背骨”ではあったが、そんなこととは別にどのテレビ局もこのことのニュース・バリューをしっかり把握して取り上げてくれた、ということ。
21世紀の現在とは情報の発信方法、発信メディアからいろいろな違いはあるものの、ここ日本でもビートルズの新曲、という部分に焦点を当てた強力なプロモーションはすさまじい威力を発揮した、という昔話でございました。
次は「今」のこと、いよいよ迫ってきたグラミー賞のことを書く予定ですからお楽しみに!
吉野家七味でした、バイバイ、またね!
Written by 吉野家七味 (連載はこちら)
ザ・ビートルズ『Anthology Collection』
2025年11月21日発売
① 8CDボックス・セット
品番:UICY-80700/7
価格:22,000円税込/完全生産限定盤
予約はこちら
② 12LPボックス・セット
品番:UIJY-75340/51
価格:69,300円税込/直輸入盤仕様/完全生産限定盤
予約はこちら
ザ・ビートルズ『Anthology 4』
2025年11月21日発売
2CD / 3LP
ザ・ビートルズ『Free As A Bird / Real Love』
7インチ・ヴィニール:2025年11月28日発売
CDシングル:2025年12月3日発売
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