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ポップ・スモーク、全米1位となった2作目の遺作アルバム『Faith』の聴き所とドリル・ミュージック

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Courtesy of Republic Records

2020年2月、20歳の若さで命を落としたポップ・スモーク(Pop Smoke)の2作目のスタジオ・アルバムかつ遺作第2弾となる『Faith』が2021年7月16日に発売され、全米アルバムチャートで昨年のアルバム『Shoot for the Stars, Aim for the Moon』に続き1位を獲得した。

そんなポップ・スモーク、そしてこの新作についてライター/翻訳家である池城美菜子さんに寄稿いただきました。

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ラッパーの遺作アルバム

死人に口無しというが、ミュージシャンは別だ。亡くなってからも歌声が永遠に生き続け、場合によっては生前とはちがう意味合いを帯びる。原曲のまま伝えられるポップやロックの名曲よりも、1曲あたりの言葉数が多いヒップホップは再解釈・再利用されるケースも含めて汎用性が高い。

ここ数年、若いラッパーの遺作がチャートを賑わせたり、遺されたヴァースから新しい曲が作られたりしている。遺作で人気が高いのはポップ・スモーク(享年20)の『Shooting for the Stars, Aiming for the Moon』とジュース・ワールド『Legends Never Die』(享年21)。とても残念な傾向だし、四半世紀前に亡くなったレジェンド、ノトーリアス・B.I.G(ビギー・スモールズ)の享年24、2パックの享年25と比べてさらに若いのは、黒人男性を取り巻く状況がまったく良くなっていないひとつの証拠だと思う。

『Shooting for the Stars, Aiming for the Moon』のリリースから1年、ポップ・スモークの遺作第2弾『Faith』が届いた。2010年代の後半、にわかに大盛り上がりを見せたブルックリン・ドリルの主役だった彼自身のキャリアはとても短い。2019年に「Welcome to the Party」と「Dior」のビッグ・ヒットを放ち、ミックステープ『Meet the Woo』と『Meet the Woo 2』で全米および世界の情報の早いヒップホップ・ファンの間で名前がやっと知られた矢先、2020年2月19日強盗殺人に遭って短い生涯を終えた。ロサンゼルスでレンタルした豪邸で高価なジュエリーをSNSで発信したがために4人組に襲われたのである。ポップ・スモークを撃ったのは15才の少年だった。

POP SMOKE – DIOR (OFFICIAL VIDEO)

 

ドリル・ミュージックとギャングと“Woo”

ここでブルックリン・ドリル、およびドリル・ミュージックの定義をしておこう。ドリルは2010年代初め、シカゴのサウス・サイドを発祥とするシカゴ・ドリルから派生したヒップホップのサブジャンルである。シカゴ・ドリルの中心人物、チーフ・キーフは2012年に「I Don’t Like」を大ヒットさせてシーンに浮上、カニエ・ウェストがリミックスしてさらに知名度が広がった。この時、彼はまだ17才前後。ドリルの特徴のひとつに、中心アーティストが若いというのがある。これには、明確な理由がある。「殺す」を意味するスラング「ドリル/drill」を冠したこのジャンルは、ドラッグの売買や抗争をテーマにしたギャングスタ・ラップである。伝統的にギャングスタ・ラップは「元」ギャングによる音楽だが、ドリル・アーティストはほぼ現役であり、いまのギャングの構成員はつかまっても重罪になりづらい未成年が多いのだ。

Chief Keef – I Don't Like (feat.) Lil Reese (Explicit)

シカゴ・ドリルに触発されて独自の音を作ったのがロンドンのブリクストンが中心のUKドリルと、ニューヨークのブルックリン・ドリルである。ブルックリンのドリル・ラッパーはロンドンのプロデューサーである808メロやAXLビーツなどの音楽をネットで掘り当てて使用したため、シカゴと同じくらいイギリスに影響を受けている点がおもしろい。

ブルックリンのムーヴメントの始まりを2014年のボビー・シュマーダの「Hot Ni**a」のヒットだと見る向きは多く、私も異論はないが2014年時点で「ブルックリン・ドリル」という総称が存在してなかったのも事実。よりムーヴメントらしくなったのは2016年、22ジーズィーの「Suburban」のヒットであり、これはAXLビーツのトラックだ。そして、2年半後、ポップ・スモークも808メロに行き着いてヒットを放った。

ポップ・スモークのアルバム・タイトルに入っている「Woo」は同じ派閥のギャングを指している。ライバルの構成員が「Choo」であり、22ジーズィーはChoo側なので生前ポップ・スモークとリリックやSNSで応酬していた。シカゴのサウス・サイド、ロンドンのブリクストン、ブルックリンのフラットブッシュ地区にそれぞれのドリル・シーンが土着しているのは、そのエリアを根城にしたギャングと密接な関係があるからだ。ヒップホップに脈々と続くギャングスタ・ラップの系譜でもブルックリン・ドリルが抜きんでて生々しいのは、現在進行形の抗争が背景にあるため。私はドリル好きだが、銃撃事件が絶えないと聞くブルックリンにいまでも住んでいたら、もう少しちがう感情をもったかもしれない。

ポップ・スモークの魅力は重低音の声でつむぐ猛々しいラップと、独特のグルーヴ感である。ブルックリンのキャナルシー地区で生まれ育った彼はジャマイカ人の母とパナマ人の父をもつ。ブルックリン・ドリルのアーティストに西インド諸島(いわゆるカリブ系)のアーティストが多いため、レゲエやダンスホールに紐づけられがちだが、パトワもほとんど使わないし、音楽的なつながりは希薄である。わかりやすくレゲエを取り入れるほかのブルックリン出身のジャマイカ系のアーティスト、たとえばジョーイ・バッダスとはスタンスが完全に異なり、うっすらと背景にカリブの香りがする程度。

Griffin Lotz/Rolling Stone/Shutterstock

ポップ・スモークの新作『Faith』

ビルボード初登場1位を飾ったばかりの『Faith』に話を戻そう。前作『Shooting for the Stars, Aiming for the Moon』はファースト・アルバムに向けて録り貯めた曲を、業界ベテランのマネージャーであるスティーヴン・ヴィクターと、ポップ・スモークが敬愛していた50セントがまとめた作品だった。これがビッグ・ヒットになり、未使用のヴァースがミーゴス『Culture Ⅲ』からカニエ・ウェストの8月6日発売予定『DONDA』、H.E.R.「Slide」のリミックスまでフィーチャーされるほど大人気だ。

スティーヴン・ヴィクターはもともとデフ・ジャムやインタースコープにいた人で、現在はカニエのG.O.O.D. Musicのナンバー2であり、自身のヴィクター・ヴィクター・ワールドワイドも回している。『Faith』のフィーチャリング・アーティストは彼の人脈によるところが大きい。『Faith』はドリルのカラーが薄まった点と、ポップ・スモークの出番が少なく、コンピレーション・アルバムみたいになっている点へ批判はある。それでも、私は新しいヴァースが聴けてうれしいし、十分に聴きどころが多い作品だと思う。おすすめの曲を解説しよう。

 

Coupe

先ごろビデオが公開された、もろにギャングスタ・ラップな曲。

I had crack in my socks
I got guns in my brief
I give him hot shells like a taco
I’m Big Woo the flex, nigga, not Choo
靴下にはクラックを隠して
ブリーフの中には銃
タコスみたいに熱々のシェル(弾丸)をお見舞いしてやる
俺はウーの大物 派手にやる この野郎 チョーとは違う

前述の通りストレートなドリルだ。このようなリリックが現実とリンクしているため、ポップ・スモークとほかのドリルのアーティストはニューヨーク警察に目をつけられ、その流れで「Dior」はブラック・ライヴズ・マターのデモで盛んに流された。

Pop Smoke – Coupe (Official Music Video)

 

Manslaughter

プロデューサー兼R&Bシンガーのザ・ドリームがリック・ロスを招いて作った曲。ポップ・スモークより23才年上で、4人の父親でもあるロスは追悼の気持ちをライムし、ジャマイカのカースワードである「ボンボ・クラット」を挟んでいる。リック・ロスは低く、押しが強い声で知られるラッパーだが、並べるとポップ・スモークの声がさらに迫力があって驚く。ザ・ドリームが締めの歌とともにいい仕事をしている。オリジナルにはDAFI WooとDread Wooという名前を見ただけで地元の仲間だとわかる2人が参加していたそう。おそらく、そのヴァージョンもリリースされるだろう。

Pop Smoke – Manslaughter (Audio) ft. Rick Ross, The-Dream

 

Top Shotta

本作でおもしろい音を作っているのがネプチューンズだ。「Top Shotta」の「シャッタ」はジャマイカのギャングのこと。ダンスホール・レゲエでよく知られる言葉で、2019年にはジャマイカ人の母をもつ、テネシー州のNLEチョッパが「Shotta Flow」をヒットさせている。

この曲はポップ・スモークが珍しくジャマイカのカルチャーを取り入れたリリックを書いており、そのヴァースからレゲエへの造詣が深いネプチューンズがダンスホールに寄せて仕上げたと察する。フィーチャリングはプシャ・Tとジャスティン・ビーバーの最新作へも参加したビーム。彼は、レゲエ・レジェンドのパパ・サンの息子である。ネプチューンズはもう1曲「Spot Light」もプロデュースしており、こちらのトラックもかっこいい。

Pop Smoke, The Neptunes – Top Shotta (Audio) ft. Pusha T, TRAVI, Beam

 

Brush Em

808メロのトラックを使い、ブルックリン・ドリルのラー・スウィッシュときちんとスタジオでレコーディングした曲なので、つぎはぎ感がない。本格的にレコーディングし始めたばかりの頃の曲であるにもかかわらず、ポップ・スモークのスタイルは完成されている。

ドリル系の曲ではビジー・バンクスとの「30」もおすすめ。スティーヴン・ヴィクターと一緒にポップ・スモークのマネージメントに当たっていたリコ・ビーツがプロデュースした曲で、彼はこの曲を含めて5曲作っている。

Pop Smoke – Brush Em (Audio) ft. Rah Swish

「もしポップ・スモークが生きていれば」との仮定の話は不毛だろう。だが、『Shooting for the Stars, Aiming for the Moon』にジニュワインの名曲「Differences」(2001)を敷いた「What You Know bout Love」での歌声を聴く限り、甘めのラップもイケただろうな、とは思う。本作のクリス・ブラウンとの「Woo Baby」がいまひとつの出来なのは残念。ほかにもデュア・リパ、21サヴァージや42ダグ、スウェイ・リー、リル・Tジェイ、フーチャー、ミーゴスのクエヴォとテイクオフ、キッド・カディなどが参加して豪華だ。もう少し曲数を絞ってもよかった気はするものの、これだけのアーティストがポップ・スモークのライムにインスパイアーされ、かつ追悼していると前向きにも取れるし、またそこから新たなリスナーが増える可能性もある。生きていれば、去る7月22日に22才になっていたポップ・スモーク。この作品からも長生きする曲とヴァースが生まれるといい、と心底願う。

Written By 池城美菜子ブログはこちら




ポップ・スモーク『Faith』
2021年7月16日発売
iTunes / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music


ポップ・スモーク『Shoot For The Stars, Aim For The Moon』
2020年7月3日発売
iTunes / Apple Music / Spotify / Amazon Music



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