来日間近のカーディガンズ:12年ぶりの来日公演への期待や最新メッセージ
2025年10月13日に東京、10月14日に大阪で開催されるライヴ・イベント「SWEDISH POP CARNIVAL」に出演することが決定しているスウェーデンのバンド、カーディガンズ(The Cardigans)。
この来日公演を記念して、日本でバンドを大成功させた初代A&RのJidoriさんにライヴの見どころなどを寄稿いただきました。
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カーディガンズ、12年ぶりの来日公演
“あれから30年…” あれ? ポエティックにオープニングを飾ろうと思ったのに、綾小路きみまろ師匠みたいな展開になってるじゃん!気を取り直して…
いよいよ盛り上がってまいりました!! 10月開催のSWEDISH POP CARNIVAL!! オレ、Jidori が初代担当の名誉を頂くカーディガンズ、日本公演は12年ぶり(彼らとしゃぶしゃぶ食ったの昨日みたいなんだが)……そして当時のムーヴメントを牽引してくれた2組、6年ぶりの来日となるメイヤお嬢様、そして、オリジナル編成では1998年以来、来日公演も20年ぶりとなるクラウドベリー・ジャム! 文字起こししてるだけでクラっとしそうな、年月の流れを感じつつ。
コロナ禍以降、洋楽は言うまでもなく、邦人アーティストもライヴできないし、各地のクラブ、ライヴハウスなど、とてつもない被害に遭った。ようやく、去年あたりから流れが戻ってきたのは嬉しいんだけど、今度は円安によるチケット価格の高騰……そういう中で、このイヴェントのようなパッケージ形式のライヴは嬉しいよね。
興行元のクリエイティブマンは、フィンランドのアーティストをまとめて招聘してくれていたのが有名だけど、今回みたいなスウェーデンのアーティストを集結させたミニ・フェスって、今までなかったんじゃない? 今後裾野を拡げて「Day 1:ポップ/ロック・デイ、Day 2:メタル・デイ、Day 3:ヒップホップ・デイ」とかやれば良いのに。実際、今回のイヴェントを聞きつけたオレの知り合いのミュージシャンが、「なぜ、オレ達は誘われんのだ!」と連絡をくれている。
最近のカーディガンズ
で、本稿の主役カーディガンズだが、アルバムこそ2005年以来リリースしていないけれど、今に至るまで、ちゃんと活動を続けている。以前当サイトで彼女たちの原稿を書かせて頂いた時と同様、オリジナル・メンバーのピーター・スヴェンソンは参加していないが、サポートのギター・プレイヤー、オスカーくんを迎えて、ドイツ、ノルウェーなど、ヨーロッパのマーケットでかなり精力的にやってるんだよね。あれだけの成功を収めたバンドだから当たり前なんだけど、動員も良いみたい。
最近では、各メンバーが、さまざまなプロジェクトに加わる機会も増えているらしく、ニーナ嬢は、つい先日スコットランド出身のフォーク・ミュージシャン、ジェイムズ・ヨークストンのアルバム『Songs for Nina and Johanna』に参加。タイトルにある「Johanna」は、スウェーデン出身の姉妹フォーク・デュオ、ファースト・エイド・キット(First Aid Kit)のお姉さん。お聴き頂くと分かると思うんだが、スコティッシュの雰囲気と、スウェディッシュのムードって、こんなに近いんだね。
カーディガンズが、シン・リジィの「The Boys Are Back in Town」をカヴァーしている事も以前書いたけど、こんな感じで音楽は交わって行くんだな(シン・リジィはアイリッシュだけどね…)。
で、ここは一発、彼女にはオレの大恩人、歌う吟遊詩人ことアトミック・スウィング(Atomic Swing)の頭目ニクラス・フリスクとのユニット、ア・キャンプ(A Camp)も再結成して欲しいものだ。
そのニクラスくんは、アトミック・スウィングで、オリジナル・メンバーであるキーボードのミッケ、オレの憧れ、ドラムのヘンリックさま、そしてベース・プレイヤーには、何と日本人女性のスケノブさんを迎え、ガシガシとライヴを続けている。誰か日本に呼んでくれ、頼む…。
カーディガンズのライヴについては、前述のオスカー(Motoboy)が、めちゃくちゃに優れたマルチ・プレイヤーなので、ギターの部分は問題なし。しかも北欧系美形ルックスの持ち主なので、ステージ栄えは言うまでもなく。各メンバーの呼吸もバッチリみたいだよ(写真を見てね)。
過去の来日公演エピソード
今や押しも押されもせぬ立派なロック・スターの彼女たちなんだけど、昔から、ほのぼの/すっとこどっこいエピソードは数知れず…。確か武道館公演だか何かのジャパン・ツアーで、チケットの売り上げは上々、イヴェンターさんは気を利かせ、一流のホテルをブッキングして下さったのだが、バンド側からチェックイン早々、即クレーム…。普通は「もっと良いホテルにしろ!」とか言いそうなモノなんだけど、その理由が「渋谷に歩いて行けない」という、関係者全員バカ負けする状態で「へぇへぇ」とホテル変更…その後メンバーが夜の渋谷の街に消えた話は語り草だ…。
で、食事に行くと、ベースのマグナスくんは、打ち上げでオレがいつも同じセリフから始めるのを完コピして、お店の方に、「スイマセン、ビールクダサイ!」と、見事なイントネーションでオーダー…後が続かないだろうが。
果たして、スウェディッシュ・ポップというタームが日本以外で通じるのか、オレには分からないんだけど、今回のイヴェントを例に挙げるまでもなく、単なる回帰/懐古趣味とは異なる“ポップ・ミュージックの大きな揺り戻し”とでも言おうか、“人が鳴らす音楽”を改めて感ずる時が来たんじゃないかなと思う。
例えば、イギリスでは奇跡的なオアシスの再結成があったり、少々前の話になるけど今年1月には、あのパルプが27年ぶりに来日公演を行ったりしたよね。
ライヴはもちろん、レコーディングも当時はアナログが主流。ヴォーカルのピッチは完全ではないし、モタるハシる、そんなの当たり前。当然でしょ。演者の呼吸、鼓動に音楽は呼応しているんだもの。リスナー、オーディエンスと、そこに流れている音楽がシンクロする瞬間こそ、醍醐味なんじゃない?
ピッチ補正/オートチューンで、完璧なヴォーカル/メロディ・ラインが誰にでも作れる時代になり、レコーディングはPC使って自宅で出来る。編集した音は、ハードディスクにギチギチ閉じ込められて、聴いているうちにオレみたいな前期高齢者は、ロックに求めてる開放感とは真逆の息苦しさを感じるんだよね。炎天下でパチンコ屋の前を通りかかった時のあの感じ?
猛暑から解放された夜を願いつつ、そよ風みたいなカーディガンズの皆、そしてメイヤ嬢、クラウドベリー・ジャムのパフォーマンスをぜひとも体感して欲しい。頬にあたる音楽は、きっとあなたたちに優しいはず。
メンバーからのコメント
で、最後に、オレ流のネットワークをフル活用して、メンバー達からコメントを頂くことができた。
「今回、日本に帰って来ることが出来て、本当に嬉しいよ。今日(8月23日/土曜日)、僕たちはリハーサル・スペースで、この25年一切演奏したことがない曲の数々にチャレンジしているところ。“Life”、“First Band on the Moon”というアルバムに入っていた曲がどんな感じになるのか、とても興味深いんだ。これらの曲を演奏するのは、本当に楽しい。中には29年ぶりの楽曲もあるんだよ。今回の日本公演は、間違いなく、特別なものになるからね」
Written By Jidori
カーディガンズ『The Rest Of The Best – Vol. 1 & 2』
2024年9月6日発売
CD / iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music
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