BABYMETAL、新作アルバム『METAL FORTH』参加ゲストミュージシャン全員解説

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2025年4月1日、4作目のオリジナル・アルバム「METAL FORTH」をダイレクトなグローバルレーベルパートナー契約を結んだ米キャピトル・レコードから発売することを発表し、日本人アーティストとして初の単独公演となる英ロンドンのTHE O2アリーナ公演がソールドアウトとなるなど、今や日本を代表するグループとなっているBABYMETAL。

2025年8月8日に発売される最新アルバムには全10曲が収録されているが、7曲が海外アーティストをゲストに迎えた楽曲となっている。そのゲスト・アーティストについて、音楽評論家の増田勇一さんに解説いただきました。

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2025年8月8日に発売を迎えるBABYMETALの4thアルバム『METAL FORTH』には全10曲が収録されていて、他のアーティストがフィーチュアされた楽曲、もしくはコラボレーションによる楽曲がそのうち7曲を占めている。しかし驚くべきはそうした楽曲の占める割合の高さではなく、さまざまな化学反応がみられる楽曲がいずれもBABYMETAL然としたものに感じられるという事実だろう。それはまさにBABYMETALの音楽自体がひとつのジャンルとして確立されている証しといえるのではないだろうか。ここでは今作にいっそうの彩りをもたらすことになったアーティストたちについて簡単に紹介していきたい。

 

1. from me to u (feat. Poppy)

まずオープニング・トラックの「from me to u」でフィーチュアされているPoppyについて。

バービー人形のようないでたちだった時代もあれば、まるで魔界にでも迷い込んだかのような風貌になっていたりすることもある、ギャップに富んだこのポップ・アイコンは、1995年生まれで、本名をモライア・ローズ・ペレイラという。

その音楽性もまた作品ごとに変化を重ねてきたが、ポップからエレクトロ、ブラック・メタルに至るまでを稼働領域としながら貫かれているものがひとつあるとすれば、それは“カワイイ”という要素だろう。

もちろんどんなものについてカワイイと感じるかは人それぞれであり、彼女が体現するカワイイが万人にとってそうであるとは限らないわけだが、もはやカワイイはそのまま世界に通用する形容詞になっていると言っても過言ではなく、彼女自身にもカワイイ・メタルの先駆者という自負があるようだ。しかも実際、権威あるグラミー賞の『ベスト・メタル・パフォーマンス』部門にて二度にわたるノミネート歴があったりもする。

日本語教室で学んだこともあるらしい彼女はいわゆるJ-POPやK-POPからの影響も認めていて、今回の「from me to u」への参加についても「私は長年BABYMETALのファンで、彼女たちからはたくさんのインスピレーションをもらってきたので、この曲が世に出ることをとても嬉しく思っている」と発言している。そんなPoppyとBABYMETALの相性が良くないはずがない。両者の出会いはまさに必然的なものだったと言っていいだろう。

 

2. RATATATA (BABYMETAL x Electric Callboy)

「RATATATA」をコラボしているElectric Callboyは、メタルコアとエレクトロの合体を軸としながら音楽的な進化を重ねてきたドイツのバンドだ。2010年の結成当初から2022年まではEskimo Callboyと名乗ってきた。

途中にはフロントマンの交代劇をはじめとするバンド存続の危機にも直面してきたが、持ち前のポジティヴでアゲアゲなパーティー感を武器としながら支持を拡大し続け、2022年にリリースされた新名称での第1弾作品にあたる『TTEKKNO』では、ついに母国のアルバム・チャートでの首位獲得に成功している。

昨年5月にさいたまスーパーアリーナで二夜にわたり開催された『FOX_FEST』にも出演していただけにBABYMETALの支持層からの認知も深いはずだが、同フェス開催直前に先行リリースされている「RATATATA」自体も彼らに対する世の認知をいっそう押し広げることになり、昨年12月に東京・豊洲PITで行なわれた単独公演も完全ソールドアウトに。今やすっかり日本でも人気バンドとしての地位を揺るぎないものにしている。

 

3. Song 3 (BABYMETAL x Slaughter to Prevail)

「Song 3」でのコラボ相手であるSlaughter Prevailは、仮面を着用した異様なたたずまいと獰猛なサウンドで知られるデスコア・バンドで、現在はアメリカのフロリダ州オーランドを拠点としているが、そもそもはロシア出身(ギタリストのみ英国人)だ。

「Song 3」のミュージック・ビデオで、BABYMETALの3人を相手に名優ぶりとファイターとしての素養を見せつけている刺青だらけの超いかついフロントマン、アレックス・テリブルは実際に格闘家でもあるのだが、その映像から察するに、どうやら一見コワモテでありつつも愛すべきキャラクターの持ち主であるようだ。また、彼自身が「いかなる戦争にも反対。ロシア国民すべてが共犯者だとは思わずにいて欲しい」とのメッセージを発信していることも付け加えておきたい。

まもなく『Grizzly』と題された3rdアルバムがリリースされるが、「Song 3」はそちらにも収録されることになっており、彼らの支持層にも間違いなくこの楽曲が浸透していくことになる。彼ら自身のさらなる飛躍も期待されるところだ。

 

4. Kon! Kon! (feat. Bloodywood)

そして次に紹介するのは、日本でもすっかりお馴染みになりつつあるインド出身のBloodywoodだ。

2016年にニューデリーで結成されたこのバンドは、インドの民族音楽とラップ、メタルをシームレスに融合させながら、現代社会が抱える問題について鋭く切り込む歌詞、めちゃくちゃ圧の強いライヴ・パフォーマンスで支持と共鳴の輪を広げてきた。

2022年には『Rakshak』と題された初のオリジナル・アルバムを発表し、いきなりFUJI ROCKに出演。その熱すぎるパフォーマンスが実際のフェス来場者のみならず配信視聴者たちの間でも話題となり、2023年には単独公演も成功。さらに去る5月には第2作『Nu Delhi』をひっさげての再来日公演も大盛況のうちに終わらせている。

また、その新作ではひと足先に「Bekhauf」という楽曲でBABYMETALとのコラボが実現しており、同アルバム収録曲の中でも表題曲と並ぶ人気曲となっている。今作でのコラボ曲、「Kon! Kon!」も間違いなく大きな反響を呼ぶことだろう。

なお、同バンドの音楽的中心人物であるギタリストのカラン・カティアールは「BABYMETALと一緒に仕事をしてみて、本当にプロフェッショナルな人たちなんだなと感心させられた。彼女たちは自分たちがすべきことを熟知しているし、とてもコラボしやすかった。俺自身、実は2014年以来ずっと彼女たちの曲を続けてきたし、限界を押し広げようとするあの姿勢にはとても共鳴をおぼえる」と語っている。

 

6. Sunset Kiss (feat. Polyphia)

そして今回「Sunset Kiss」にフィーチュアされているのが、アメリカはテキサス州出身の凄腕インスト・バンド、Polyphiaだ。彼らもElectric Callboyと同様、昨年の『FOX_FEST』に出演しているだけに、もはや詳しい説明は無用だろう。

「テクニカルな演奏を特色とするヴォーカル不在のバンド」などと紹介すると、複雑で難解なもの、あるいは往年のプログレッシヴ・ロック的なものを連想して身構えてしまう向きもあるかもしれない。ただ、彼らの音楽には数学的な側面も確かにあるが、そのたたずまいはあくまでモダンで美的センスに富んだもの。ヒップホップ、EDMの要素までをも呑み込んだそのスタイルは、まさに真の意味での現代版プログレといえるかもしれない。

今や多弦ギターを流麗に弾きこなす若い演奏家は数多いが、そうした新世代を牽引してきた存在のひとつが彼らだといえる。そして彼らの音楽にみられる革新性自体が、BABYMETALとの相性の良さに繋がっているのだ。

 

7. My Queen (feat. Spiritbox)

「My Queen」にフィーチュアされているSpiritboxは、日本での認知こそ現時点では今ひとつだが、欧米ではすでに絶大な支持を獲得しているバンドだ。

女性ヴォーカリストのコートニー・ラプランテを擁するこの4人組は、カナダはブリティッシュコロンビア州のヴァンクーヴァー島出身で、2017年に結成されており、2021年にリリースされた1stアルバム『Eternal Blue』が全米チャートにおいていきなり初登場13位を記録するという快挙を達成。グラミー賞の『ベスト・メタル・パフォーマンス』部門においても、これまでに二度にわたりノミネートされてきた。

この春には待望の第2作、『Tsunami Sea』を発表しているが、彼らの音楽の最大の特徴は、迸るような激情とダークな美しさを兼ね備えた歌唱と、聴いていて情景が浮かぶようなサウンドスケープだろう。

また、コートニーはメタルの領域における女性の進出を願っているとの発言をたびたび繰り返しており、筆者が行なったインタビューの中でも「もっと多くの女性がヘヴィな音楽を作るようになるといいなと思っているし、同時に、自分がやりたい音楽のために自分自身や仲間を変える必要なんてないんだということを広く示していきたい」と力説していた。

 

9. メタり!!(feat. Tom Morello)

そして最後に紹介するのは「メタり!!」に参加しているトム・モレロである。

彼については、もはや説明するまでもないだろう。何よりもミクスチャー・ロックの先駆者として後続世代に多大な影響を与えてきたRage Against The Machineのギタリストとして知られてきた彼は、のちにAudioslave、自身のソロ・プロジェクトであるThe Nightwatchmanでの活動も経てきたが、ハーバード大卒、上院議員の秘書といった経歴、アクティヴィストという一面も併せ持っている。

プレイスタイルの斬新さ、政治的な主張でも知られている彼は広い人脈の持ち主でもあり、つい先頃、Black Sabbathとオジー・オズボーンの歴史の有終の美を飾るべく行なわれた一大イベント『Back to the Beginning』においても、演奏面で参加するのみならず、ミュージカル・ディレクター的な役割を務めていた。間違いなく、このロック界においてもっとも信頼性の高い慧眼、審美眼の持ち主と認識されている人物のひとりということになるだろう。

BABYMETALという存在が彼を振り向かせることになったのも、形骸化されたジャンル感に囚われることのないその革新性に共鳴するものを彼自身が感じ取ったからであるに違いない。

 

こうしたさまざまな共謀者たちと融合を経ながら『METAL FORTH』は完成に至っている。日本、アメリカ、ドイツ、ロシア、インド、カナダ……と見事なまでに国籍が入り乱れているが、さまざまな土地で育まれてきた価値観が、このアルバムでひとつになっているという点にも着目したい。発売まであとわずか。それまでの間に、こうしたさまざまな参加アーティストたちについて深掘りを進めておくのも、『METAL FORTH』をいっそう深く味わううえで有効であるに違いない。

Written By 増田勇一


BABYMETAL『METAL FORTH』
2025年8月8日発売
CD&LP / Apple Music / Spotify / Amazon Music



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