トゥパック伝記映画公開記念:対訳公開その③「Brenda’s Got A Baby」

Published on

トゥパックの伝記映画「オール・アイズ・オン・ミー」の公開を記念して新規解説、新規対訳を収録して発売となったベスト盤『2Pac Greatest Hits』。全25曲の英語・日本語対訳、そしてアルバム解説を含めて全64ページにもなったこのアルバムの日本盤ブックレットから、対訳者の渡辺志保さんが選ぶ5曲の対訳を渡辺さんの解説コメントとともに特別に掲載(他の曲はこちらから)。

3曲目は「Brenda’s Got A Baby」

個人的には2パックの真骨頂とも言える楽曲。避妊に関して無知なまま、12歳という若さで妊娠してしまうブレンダ。何とか赤ん坊を出産するも、彼女は悲しい結末を迎えることになってしまう。2パックはブレンダを責めるのではなく、こうした負の状況を生み出してしまうコミュニティに対して疑問を投げかける。「ブレンダ」は曲に登場する特定の女の子ではなく、世界中に(そう、日本にも)多く存在する、罪のない悲しい犠牲者そのものだ。

 

イントロ:デイヴ・ホリスター
ブレンダに子供が出来たのさ

ヴァース:2パック
ブレンダが妊娠しちまったらしいぜ
でも彼女は何も知らねえんだ
恥ずかしいけど、あの子は自分の名前のスペルすら覚えちゃいねえ
「俺たちに関係ないだろ、それはブレンダの家族の問題じゃねえか」
いいか、この話がどれだけお俺たちのコミュニティに影響を及ぼすか教えてやるよ
ブレンダは自分の本当の母親の顔も全く知らねえんだ
おまけに父親はジャンキーで、自分の腕に死を注入する(=ヘロイン中毒)ようなヤツだったのさ
悲しいことだよな、ブレンダは知りもしなかったんだと思うぜ
もしもゲットーに育ったとしても、ちゃんと成長できるってことを
でも、これはただの考えさ、俺が気がついた事実ってこと
誘惑に抗うためなら何でもやってやるぜ
ブレンダにはボーイフレンドがいたんだ
自分の従兄弟が彼氏だったのさ、でもお楽しみの時間はもう終わっちまった
ブレンダは自分の妊娠を家族に知られまいとした
ブレンダが外で子供を作って来たとしても
全く気にしねえような家族さ
気にするのは、赤ん坊宛の生活保護が支給されて真っ先におこぼれをもらう時だけ
ブレンダの腹はだんだんデカくなって来ちまった
でも、誰もブレンダの身体の変化には気づかねえ
まだ12歳だってのに赤ん坊を身籠ったんだ
虐待野郎なんかにハマっちまって
そいつは狂った様に彼女にセックスを求めたのさ
それでも、ブレンダは彼氏がずっと一緒にいてくれると思ってたんだ
そして二人が仲良く一緒に暮らす世界を夢見てた
何でもいいさ、そいつは彼女を捨てて、ブレンダは一人で子供を産まなきゃいけなくなったんだ
ブレンダはバスルームの床で出産した
でも、一体どうすりゃいいか分からなかった
だから、何を捨てて何を守るべきかも分からなかったんだ
彼女は赤ん坊を包んで、ゴミの集積場に投げ捨てた
きっと、ブレンダは逃げ出していたと思うんだ
赤ん坊の泣き声を聞くまでは
彼女は気が付かなかったのさ
赤ん坊の瞳がどれだけ自分の瞳と似ていたか
そして、ブレンダはゴミの山の中にいる赤ん坊を見て、泣き叫んだ
ブレンダの母親は彼女を助けてやれなかったけど
ブレンダの泣き声は辛く響いただろうな
ブレンダは逃げ出したくなった
母親は食い扶持が増えると言い立てて
毎日訪問してくるソーシャル・ワーカーに不満を言った
ブレンダは自分で稼がなきゃいけなくなったのさ
家族は頼れねえし、家にも置いてもらえねえ
金はないし、ベビーシッターも雇えねえ
だから仕事も続けられねえ
ブレンダはヤクを捌いて稼ごうとしたけど
それも全て盗まれちまった
さあ、次は何だ?
他に得るものは何も残っちゃいねえ
だからこの地獄を脱出するにはセックスしかねえと考えたんだ
家賃を払うためなら仕方ねえ、だからブレンダは不満も言わねえ
売春婦が殺害された、彼女の名前はブレンダって言うらしい
そして彼女には子供がいたんだ

Translated by Shiho Watanabe



『2Pac Greatest Hits』

品番:UICY-15691/2 発売日:2017年12月6日発売 価格:¥2,500 (税込)
国内盤のみ:英語歌詞・新規対訳(渡辺志保)、新規ライナー(長谷川町蔵)

     




Share this story


Don't Miss

{"vars":{"account":"UA-90870517-1"},"triggers":{"trackPageview":{"on":"visible","request":"pageview"}}}
モバイルバージョンを終了