村治佳織、『ディズニー・ゴーズ・クラシカル』について語る最新インタビュー公開

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村治佳織、マッテオ・ボチェッリ、ルネ・フレミング、クリスチャン・リらが参加。ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団『ディズニー・ゴーズ・クラシカル』

© Disney

現在、日本でも好評発売中のアルバム『ディズニー・ゴーズ・クラシカル』は、長編第2作の《ピノキオ》(1940年)や実写とアニメの融合による見事な視覚効果でも知られる《メリー・ポピンズ》(1964年)ら黄金期の作品から、《美女と野獣》(1991年)や《アラジン》(1992年)、《ライオン・キング》(1994年)など90年代の大ヒット作、世界初の長編フルCG作品《トイ・ストーリー》(1995年)の続編であるディズニー&ピクサー系の《トイ・ストーリー2》(1999年)、そして新たな金字塔を打ちたてた《アナと雪の女王》(2013年)や近年の《モアナと伝説の海》(2016年)まで、これまでディズニー・アニメーションを彩ってきた魅惑の音楽たちを、英国の名門ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団の演奏を中心にカヴァーしたゴージャスなアルバム。

父親であるイタリアの至宝、アンドレア・ボチェッリ譲りの美声で注目のマッテオ・ボチェッリやアメリカ人スター・ソプラノ歌手のルネ・フレミングらスペシャル・ゲスト陣でも話題の本盤に、日本から唯一参加したクラシック・ギタリストの村治佳織にお話を伺った。


――村治さんも幼い頃は、ディズニー・プリンセスに憧れる女の子でしたか?

実は、全然そうじゃなかったですよね(笑)。子どもの頃はディズニー・アニメーションをそれほど夢中で観ていなかったのかもしれません。むしろ大人になってから楽しむようになったし、映像の美しさを凄いなと思うようになりました。

特に《アラジン》はアニメーション版も好きですが、実写版のキャスティングも素晴らしく、ランプの魔人ジーニー役が素敵だった…私が10代の終わり頃に〈マイアミ〉とかを歌っていたあのウイル・スミスがね…と感慨深かったです(笑)。

――『ディズニー・ゴーズ・クラシカル』は選曲が面白いですよね。定番の人気曲も沢山詰まっていますが、アフリカ系アメリカ人がヒロインの《プリンセスと魔法のキス》(2009年)からの〈夢まであとすこし〉とか、ギリシャ神話を題材にした《ヘラクレス》(1997年)の〈ゴー・ザ・ディスタンス〉などは、日本ではどちらかと言うと知られざる名曲かも。

そのあたり、英国のレーベルであるDECCAらしさが出ているのかもしれません。お国柄とでも言うのでしょうか。これは私自身も経験があるのですが、日本と海外のリスナーでは同じ楽曲でも好みや知名度が分かれる場合がありますね。

2018年にアルバム『シネマ』を作った時、イギリス人プロデューサーのドミニク(Dominic Fyfe)たちと色々やりとりをしていて、彼らが日本人の大好きな《ひまわり》のテーマ曲にあまり関心を示さなかったことがとても印象的でした。世界中にファンを持つディズニーの曲でも、そういうことはあるのだと思います。でも今回はそれが逆に新鮮で、日本のリスナーにとっては、新しい曲と出会う良いきっかけにもなるはずです。

――今回、ブロードウェイで活躍していた作曲家アラン・メンケンらが立役者となってディズニー新時代の幕開けとなった作品《リトル・マーメイド》(1989年)の名曲〈パート・オブ・ユア・ワールド〉に参加を決めたのは?

自分で選曲したわけではなく、DECCAからこれでお願いしますって依頼されたというのが真実ですが、私はこういう不意に与えられた“チャンス”をこれまでの演奏家人生でとても大切にしてきたので、お話をいただいて嬉しかったです。

アリエルは日本の女の子にも大人気のキャラクターですし、それにただキラキラとしたカワイイ曲じゃなくて、背後に“物語”を持った、聴けば聴くほど、弾けば弾くほどに味わい深い曲だから、どんどん好きになりました。

――ギターの曲としてはいかがでしたか?

私の担当したのはヴォーカル・パートで、ギターで演奏するにはシンプルで弾きやすかった。ただレコーディングしたのはコロナ禍になる前の昨年5月のことでしたが、リモート収録のようなかたちで、既に出来上がっているロイヤル・フィルの録音に私の演奏を重ねるやり方でしたので、最初は少し戸惑いました。

これまで自分の演奏に重ね録りする多重録音の経験はありましたが、オーケストラとは初めてでしたので。過去の経験を思い出しながら、一緒に弾いているような感覚でレコーディングに臨み、無事に名門ロイヤル・フィルとの初共演を果たすことができました。音色に厚みがあって、ヴァイオリンのソロなどもとても美しいオーケストラなので、いつの日か同じステージでご一緒したいですね。

――後日、ミュージック・ビデオも撮影されたとか。

そうなんです、アリエルになったつもりで演奏するのがホントに楽しくて「ディズニー最高!」っていう気分になれました。若い人魚ではなくて、随分と“人間”としての経験豊富なアリエルですが(笑)、皆さんに楽しんでいただけたら幸いです。

パート・オブ・ユア・ワールド feat.村治佳織 ~『リトル・マーメイド』ミュージック・ビデオ
2020年10月12日(月)午後6時 プレミア公開

――そういえばまだ、ご自身のアルバムでディズニーの曲をとりあげたことはないですよね?

自分でも意外ですが、言われてみればそうですね。《ピノキオ》の〈星に願いを〉のメロディは子どもの頃からのお気に入り曲ですし《メリー・ポピンズ》の〈チム・チム・チェリー〉も好き…昔、合奏で弾いた記憶もあります。〈美女と野獣〉もいいし、《アラジン》の〈ホール・ニュー・ワールド〉は友達とカラオケでデュエットしたこともある。今までどうしてレコーディングしなかったんでしょうね(笑)。

 

――近年の世界的大ヒットナンバーである《アナと雪の女王》の〈レット・イット・ゴー〉などは、ちょっとギターでは難しいですか?

ソロだと難しいかも…でも、あの疾走感がギター・デュオとかアンサンブルでやるとカッコイイと思いますよ。

ギター曲ということでは、ピクサーの《リメンバー・ミー》(2017年)の主人公が天才ギター少年で、映画も感動したしタイトル曲にも心を奪われたので、いつか演奏してみたい。アルバム『シネマ』をリリースして、映画音楽っていいなってあらためて思ったので、もし何かご縁があれば実現させたいですね。今回も思いがけずディズニーという夢のような“舟”に乗せていただけて光栄でしたし、また世界が広がりました。新しい“チャンス”がやってきたら躊躇せずにそれに飛び込む姿勢をこれからも大切にしたいのです。

――ファンの一人として、新しいアルバムを心待ちにしています。

ありがとうございます。コロナ禍で公演が沢山中止になって、とても残念でしたが、自分をゆっくりと見つめ直す時間がとれたので、焦らず、じっくりと次のアルバムに向けての準備を始めたいと思います。どうかご期待下さい!

Interviewed & Written By 東端哲也


© Disney

『ディズニー・ゴーズ・クラシカル』
2020年10月2日発売
CD / iTunes / Amazon Music / Apple Music / Spotify




 

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