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ジャック・ジョンソンの映画『SURFILMUSIC』: 現在の自分へ賛辞を送りたくなる極上のサーフ・フィルム

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米ハワイ出身アーティスト、ジャック・ジョンソン(Jack Johnson)についての新作ドキュメンタリー『SURFILMUSIC』が北米で2026年6月から劇場公開される(日本公開は未定)。

「SURF」「FILM」「MUSIC」の3つを掛け合わせたタイトルの本映画について、彼を追い続けてきた音楽ライターの松永 尚久さんにレビューいただきました。

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21世紀サーフ・ミュージックにおけるアイコニックな存在であり、自然を尊重したシンプルなライフ・スタイルも多くの人の暮らしや概念に大きな影響をもたらしている、ジャック・ジョンソン。最新ドキュメンタリー映像作品『SURFILMUSIC』は、初めて自身の人生を振り返る内容になっている。

古くからのサーフィン仲間であり、共に映像集団「The Moonshine Conspiracy」を立ち上げたエメット・マロイが監督した作品。さまざまなカセット・テープが並ぶラックが映し出され、「ハレイワ(ジャックの故郷であるハワイ・ノースショアの地域)」とラベルに書かれたものがレコーダーで再生されて作品はスタート。その後、名曲「Better Together」(3rd『In Between Dreams』収録)のライヴ・パフォーマンス映像が流れると、歌詞にもあるが瞬く間にセピア・トーンの優しく暖かな世界に引きこまれ、そこにジャックのモノローグが展開する。

「自分の初期のレコーディングを聴き返したり、当時の古い写真を掘り起こしたり、同じ頃に作ったサーフィン映画の映像を観たりしているんだ。あの頃、これらの曲を書いていた時の人たちや場所を見ると、やっぱり特別な気持ちになる。本当にたくさんの思い出がよみがえってくるんだ。音楽でも映画でも、何かを作ることについて考えると、人生のどんなことでもそうだけど、結局いちばん大切なのは<友情>なんだってこと。僕の人生は、ひとりでは決して成し遂げられなかった」

『SURFILMUSIC』は、ジャックの人生に影響を与えた「サーフィン」「映像」そして「音楽」の3つのカテゴリーで構成されている。その幕開けを飾るのが「サーフィン」のセクションだ。

 

サーフィン=SURF

生まれたばかりの1970年代のオムツをしている姿や、初めてサーフボードに乗り始めたころの貴重なフィルム映像が流れ、微笑ましい気分になるはず。その後、10代になると自身でヴィデオ・カメラを持ち仲間たちと映像を製作するなど、クリエイターとしての才能も開花させながらも、サーファーとして周囲から期待の声が寄せられるように。その華麗かつ果敢なライディングは、サーフィン経験がない人も魅了されるはずだ。

しかし、その果敢なチャレンジ精神がサーファーとしてのキャリアをリタイヤせざるを得ない状況に。当時、ケガで歯が欠けた状態でカメラに笑顔を浮かべるジャックは、痛々しさとともに、どこか寂しそうな雰囲気が漂っている。また、10代当時結成したハードコア・パンク・バンド<LIMBER CHICKEN>のライヴ映像も。エモーショナルなサウンドながらも、あの独特な鼻に抜ける歌声は変わらないことが伝わるはず(映像ではその後結成したSOILというバンドのパフォーマンスも楽しむことができる)。ぜひ、初々しいジャックのステージを楽しんでいただきたい。

サーファーとしてのキャリアに見切りをつけたジャックは、米・西海岸サンタバーバラの大学へ。そこで出会った妻のキムと恋におちた当時のエピソード、また大学で映像を専攻していた当時に製作した映像や撮影風景(ラッパーっぽいスタイルを披露している場面も!)など、少年から大人に成長していくジャックを感じられるはずだ。

その後、キムとのワゴンでのヨーロッパ旅行など、さまざまな経験を積んだジャック。<旅>を終え、再びノースショアに戻り、クリス・マロイから「サーフ・フィルムを作ってみないか?」と誘われて「映像 (FILM)」の世界へライド・オンする。カメラを通して、世界じゅうの波をキャッチすることになる(映像のイメージを描いているコラージュ風スケッチブックはそれだけでもアート作品になりそうなくらい魅力的だ)。

1998年に訪れたタヒチでは、伝説のグリーンのショートボードと出会う。サーファーたちはそれを手にすると、ミラクルなパフォーマンスができるという伝説のボードだ。すでに消息不明になっているそのボードを、30年近く経過しリメイク。それを駆使して華麗なライディングを披露するジャック。ティーンエイジの頃と変わらない鋭さがありながらも、自身の音楽にも通じる滑らかなグルーヴも流れているような気がする。

また、音楽といえば、サーフ・トリップの移動中などで、ジャックはアコースティック・ギターを抱えて演奏していたという。その独創的かつ美しい旋律に仲間たちは魅了され、映画のサウンドトラックとして使用。映画は大きな賞賛を獲得したと同時に、ジャックの音楽も話題と熱狂を呼ぶ。そして「音楽 (MUSIC)」への本格的なトリップがスタートするのだった。

 

音楽=MUSIC

友人とキャンプファイアーを囲みながら演奏している状況から、ライヴハウスへと徐々にパフォーマンスする場所が大きくなっていく様子、また彼のミュージシャンとして広く知られるきっかけとなった「Rodeo Clowns」の誕生秘話などを、楽曲で共演したGラヴとの対談やキムの証言などを通じて振り返る。

また、この楽曲をきっかけに<ショウビズ>という、未経験の波(世界)に巻き込まれたジャック。驚くほどのスピードで変化していく状況とどう向きあっていたのか? 当時のユニークなエピソードを交えながら、徐々に変化を受け入れていく様子をとらえている。

Jack Johnson – Rodeo Clowns (4-track) (Official Lyric Video)

その後、ベン・ハーパーや、のちのバンド・メンバーとなるザック・ギルなどとの出会いを経て、ジャックの音楽は、サーファーたちのコミュニティだけの音楽ではなく、大衆に親しまれる<サーフ・ミュージック>の作り手として、圧倒的な人気を獲得。だが、周囲の喧騒に左右されることなく、気心の知れた仲間たちと<居心地のいい(コンフォタブルな)>暮らしを続けていく、ゆるいけれど揺るぎのないスピリットを感じることができた。

終盤で流れる、昨年秋にLAラグーナ・ビーチで開催された「The Moonshine FILM&MUSIC FESTIVAL」のパフォーマンス映像は、そんなジャックの思い、つまりどんなに年齢を重ねても変わることのない友人(ファンも含む)とのつながりが伝わり、深い感動を噛みしめることができた。

ジャックはもちろん、ケリー・スレイターやロブ・マチャドなどレジェンド的サーファーたちから、ベン・ハーパーなどミュージシャン仲間たちへのインタビューを交えながら、彼の50年を超えた人生を振り返る約80分の作品。年齢を重ねていくにつれ、大切な家族や仲間との別れ、加齢の影響でできること・できないことが増えるなど、人間にはさまざまな変化が訪れる。その新たな波に接した瞬間、我々はどう向きあい、華麗に乗り越えていくのか? ヒントを与えてくれそうな映画である。

特にジャックの音楽と共に20年以上過ごしてきたリスナーのみなさんには、その軌跡が身にしみる作品になっているはずだ。もちろん、そうでない世代や嗜好の人にも、人生を軽やかに過ごすための秘訣、また現在の自分へ賛辞を送りたくなるであろう極上のサーフ・フィルムだ。

Jack Johnson – SURFILMUSIC Trailer (2026)

Written By 松永 尚久



ジャック・ジョンソン『SURFILMUSIC (Soundtrack & 4-Tracks)』
2026年5月15日発売
CD&LP / iTunes Stores /Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music 



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