マイク・オールドフィールドが職人魂を注ぎ込んだアルバム『Crises』

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マイク・オールドフィールドは、デビュー以来『Tubular Bells』『Hergest Ridge』『Ommadawn』と大ヒット・アルバムを連発していた。しかしそのあとは、全英アルバム・チャートのトップ10から7年間遠ざかってしまっていた。そんな中1982年の『Five Miles Out』でチャートのトップ10に復帰。そして1983年6月4日、8枚目のスタジオ・アルバム『Crises』でまたもやイギリスのチャートのトップ10入りを果たした。

(アルバム『Crises』のころのマイク・オールドフィールド)

このニュー・アルバムは、バッキンガムシャー州デナムで録音され、プロデュースはオールドフィールド本人とスタジオ・ミュージシャンとして引く手あまたのドラマー、サイモン・フィリップスが共同で手がけた。ここでオールドフィールドは、実験的な作風とラジオ向きの楽曲とを組み合わせている。「片方の面はとても売れ線で、シングル向きの曲が一杯に詰め込まれている。もう片方の面は、どちらかというと個人的に満足できる作品が中心になっている」と当時の彼は語っていた「これで誰もが幸せになるというわけさ」。

『Crises』のタイトル曲「Crises」では、『Tubular Bells』のテーマが再演されていた。この曲は20分もあり、A面全体を占めている。この曲を含め、アルバム『Crises』ではハープ、マンドリン、ピアノといった従来の楽器と共に、当時流行していたシンセサイザー、フェアライトCMIが多用されていた。

B面は、アルバムを代表するヒットとなった「Moonlight Shadow」で幕を開ける。この曲では、スコットランドのバンド、ケイドー・ベルのマギー・ライリーがヴォーカルを担当していた。アルバム『Crises』は全英チャートで初登場8位を記録してから順位を下げたが、その一方で「Moonlight Shadow」はラジオで流れる回数が増え、徐々に売り上げを伸ばしていった。やがてこれがシングル・チャートの4位に到達すると、同じ週には『Crises』も6位にまで上がっている(「Moonlight Shadow」はこのあと3週連続で4位を記録した)。

マギー・ライリーは「Foreign Affair」にも登場。このアルバムB面には他にも有名なヴォーカリストがゲスト参加していた。たとえば「In High Places」のヴォーカルはイエスのジョン・アンダーソンが担当(曲も共作)。また第2弾シングルとなった「Shadow On The Wall」では、ロジャー・チャップマン(ファミリー、ストリートウォーカーズ、ソロで活躍)がヴォーカルを担当している。一方インストゥルメンタル・ナンバー「Taurus 3」では、オールドフィールドとフィリップスがすべての楽器を演奏した。

「僕は幸せだ。実のところ、かつてないほどにね」と『Crises』発表時のオールドフィールドは語っていた。「音楽業界で過ごした10年間はとても勉強になった。昔の僕は、音楽は高貴なものだと思っていた。今の僕は、音楽というのはやれたりやれなかったりするものだと思うようになってきた。昔の僕は傲慢で思い上がっていた。今の僕は違う……ただただ自分の作品に取り組んでいるだけだよ」。

Written By Paul Sexton



マイク・オールドフィールド『Crises』

  


 

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