エルヴィス・コステロ『Almost Blue』:カントリーの一面を見せた作品

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エルヴィス・コステロは若いころからずっとカントリー・ミュージックの大ファンだった。1979年、彼はそれをライヴの場で少し表に出した。そのライヴは、2年後に発表するカントリー・アルバム『Almost Blue』の予告編のような趣となっていた。


エルヴィス・コステロはニュー・ウェイヴ・ブームの最先端から頭角を現したアーティストだったが、この1979年2月16日のライヴ(ハリウッドのパラミノ・クラブでの2回公演)は一部のファンにとって驚きの内容だった。当時エルヴィス・コステロ&ジ・アトラクションズはアルバム『Armed Forces』がチャートでヒット中。また全英シングル・チャートには「Oliver’s Army」が登場したばかりだった(これはチャート入りしたエルヴィス・コステロのシングルの中では一番高い順位を記録している)。

1月にイギリスでライヴをこなしたあと、2月上旬からはアメリカ各地を回る「アームド・ファンク」ツアーが始まっていた。2月13、14日、アトラクションズはロング・ビーチ・アリーナでライヴを行う。ここでは、ニュー・アルバムの収録曲や「Watching The Detectives」や「Pump It Up」といったヒット曲がファンを楽しませていた。

しかしパラミノ・クラブでの2回公演で、エルヴィス・コステロは別の顔を見せる。お馴染みのレパートリーに加え、彼は‘ポッサム’ことジョージ・ジョーンズの曲「If I Could Put Them All Together (I’d Have You)」を演奏した。これは興味深い選曲だった。というのもジョージ・ジョーンズは数多くの大ヒット曲を出していたが、これはそれほど大きなヒットにはなっていなかったからだ(1977年にカントリー・チャートで最高24位)。この晩の2度のステージでは、もっと有名な曲、ジミー・リーヴスのスタンダード「He’ll Have To Go(邦題: 浮気はやめなよ)」も採り上げられている。


エルヴィス・コステロは、幅広い音楽ジャンルに精通していることをその活動の中でずっと示してきた。この夜の彼は、レオン・ペインの「Psycho」やヘッズ・ハンズ&フィートの「I Stand Accused」もカヴァーしている。さらには、自らが作ったカントリー作品「Stranger In The House」も披露。この時点ではまだ公表されていなかったが数カ月前にエルヴィス・コステロとジョージ・ジョーンズがデュエットで録音していた。そのヴァージョンは、1979年のジージ・ジョーンズのアルバム『My Very Special Guests』に収録されている。またそれより前の1978年10月、エルヴィス・コステロはBBCレディオ1のジョン・ピール・セッションでもこの曲を演奏していた。

その後完成したアルバム『Almost Blue』は、カントリーのレコードを作るというエルヴィス・コステロの夢を実現した企画だった。選曲もそれにふさわしいものになっており、たとえば「A Good Year For The Roses」はこれまたジョージ・ジョーンズの曲のカヴァーになっていた。

Written by Paul Sexton



 

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