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“黒いウッドストック”と呼ばれた1972年の伝説的フェス「ワッツタックス」

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1972年夏の間、当時ロスに住んでいた若いアフリカ系アメリカ人の方であれば、8月20日のメモリアル・コロシアムのステージに立った最初のアクトを見ていた推定112,000人のフェス参加者の一人であったに違いない。そのフェスであるワッツタックスは壮大だった。イベントは1965年のワッツ暴動で燃えたLAのブラックで反抗的だった地域を称賛するために始まった。毎年アニヴァーサリー・コンサートが開かれたが、スタックス・レコードが関わるようになったことでその勢いは急速に膨れ上がった。スタックスはスタジアムを借り、ファンにはたった1ドルの入場料で最高のアーティストをラインナップを用意した。この模様は『ワッツタックス/スタックス・コンサート』として映画化となり翌年の1973年に上映され、同時にフェスの大半のパフォーマンスを収録した2枚組のライヴ・アルバム『Wattstax: The Living Word』もリリースされた。

フォーマットは60年代のロック・フェスを彷彿とさせるものだった。アーティストとアーティストの演奏の合間に長い休憩はなく、次々とアーティストがステージに立ち、観客はずっと楽しむことができた。アルバム『Wattstax: The Living Word』は当日の出演順ではなく、トミー・テイト、キム・ウェストン、ザ・テンプリーズやデヴィッド・ポーターなど、初版のレコードには収録されていないアーティストもいた。テクニカルな理由で2曲は再レコーディングされている。しかし、このコレクションは当時の最も大きなブラック・ミュージックの集まりの代表として、それなりに忠実であり、その場にいるかのようなパワフルな迫力を伝えている。

スタックスのヒット作は盛りだくさんで、レーベルは当時の最先端の70年代の音楽を支持している会社のイメージを定着させつつも、60年代の出演者にもそれなりの敬意を保っていた。それが故にエディ・フロイドは1967年にリリースした最大のヒット「Knock On Wood」を、リズムを一段ファンキーに仕上げて見事に演奏することができた。バーケイズはオーティス・レディング作曲の「I Can’t Tell You Loose」の骨太なヴァージョンを演奏し、オーティスのスタックスへの貢献度を思い出させ、ファンキーでサイケな「Son Of Shaft」では燃え上がった。カーラ・トーマスは初ヒット「Gee Whiz」を演奏し、彼女の人生で最大のパフォーマンスを親密なものに仕立て上げ、彼女の父ルーファス・トーマスは「Do The Funky Chicken」を吠え、ディナー・スーツを着こなした空飛ぶダンシング・パートナー「Do The Funky Penguin」も披露した。ギター・スターのアルバート・キングのブルースもあり、素晴らしいアルバム『I’ll Play The Blues For You』のタイトル・トラックを演奏。また、アルバート・キングは、ハウリン・ウルフの「Killing Floor」も披露している。この演奏は後に、レッド・ツェッペリンのアレンジで生き返る。

Son Of Shaft – The Bar-Kays @ Wattstax

 

しかしスタックスは常に生きた組織であり、当時の最先端のスターも所属していた。ザ・ステイプル・シンガーズは早い時間にステージに立ち、ライヴの雰囲気を作り上げた。当時のヒット曲の「I’ll Take You There」や「Respect Yourself」の彼らのヴァージョンはパンチがあり、ソウルが溢れており、ブラック・アウェアネスを語った曲としてはさほど知られていない「I Like The Things About Me」は美しくゆったりしたスワンプ・ファンクだった。過小評価されていたソウル・チルドレンはザ・ステイプル・シンガーズをさらに激しくしたアーティストで、素晴らしいゴスペル・ヴァージョンの「I Don’t Know What This World Is Coming To」とヒット・シングル「Hearsay」を披露し、リード・ヴォーカルをつとめたJ.・ブラックフット・コルバートが見事に歌い上げた。

当時つめかけたアイザック・ヘイズの何千人ものファンは、『Wattstax: The Living Word』のオリジナルの2枚組レコード盤には『Black Moses』の曲が1曲しか収録されずショックを受けていたかもしれない。でも安心してほしい、1曲とはいえ14分以上のアレンジでビル・ウィザーズの「Ain’t No Sunshine」を演奏し、バイオリンの弦を1本たりとも弾いていない演奏にもかかわらず、素晴らしいシンフォニーに仕上げている。アイザック・ヘイズは当然、大観衆を圧巻した。

Isaac Hayes at Wattstax, 1973 dig that shirt!

 

『Wattstax: The Living Word』は当日の壮大な出来事ほど乱雑ではないかもしれないが(しかし、何十年もあとにリリースされたCD版ではパフォーマンスを多数追加している)、時代は変わったことを明確に表している。どれだけの現代のリスナーがライヴ・アルバムの2枚組LPをゆっくり座って聴く時間があるだろうか?もしかしたら我々はその時間を作るべきなのかもしれない。最近の数々のフェスを取り巻くさまざまなものはあるにしろ、この一度きりのイベントがもたらしたパワー、ハート、そして一体感を感じさせるようなものは存在しない。だが、その場に居合わせなくてもその迫力を感じることはできる。スタックスはそのソウルを捉え、人々の自宅へとアルバムという形で届けたのだから。

Written by Ian McCann



『Wattstax: The Living Word』

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