ローリング・ストーンズ「Gimme Shelter」:60年代の理想主義の終焉をとらえた1曲 

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Photo courtesy of The Rolling Stones

1969年のある嵐の日にキース・リチャーズはロンドンのメイフェアで、チャック・ベリーのリフのことを考えながらギターをかき鳴らし、窓の外を眺めていた。そんな時、彼は後にザ・ローリング・ストーンズの名曲「Gimme Shelter」に発展することになるメロディを思い付いた。彼は自伝『ライフ』の中で次のように回想している

「ロンドンはその時すごい嵐に見舞われていて、俺は握っていた傘を吹き飛ばされて地獄みたいに走り回る人々を見ていた。それで、アイディアが降りてきた…俺の思考は、俺ではなく、他の人々の心に吹き荒れる嵐だ、というね。それがたまたまその瞬間にぴったりだった」

 

ストーンズのボーカル、ミック・ジャガーはそのメロディーを気に入り、共同で歌詞を書いた。ベトナム戦争と、アメリカ社会の暴力性を捕らえたようなこの暗い作品は、以下のような印象的な歌詞で始まる。

Oh, a storm is threat’ning
My very life today
If I don’t get some shelter
Oh yeah, I’m gonna fade away…
嵐がまさに今
俺の命を脅かしている
避難するところがなかったら
消えてなくなるだろう……

1960年代の終焉を反映した1曲

作家イアン・ランキンはこの曲について以下のように述べている。

「この曲には、60年代とヒッピーのような理想主義の終焉が表れている。ローリング・ストーンズは、ヒッピーの平和と愛から、連続殺人の増加と政治家たちの暗殺が起こってしまうまで、人々が考えていたよりもはるかに世の中が悪くなっていく様を目にした。世界はまるで地獄に向かっているかのようだった。それがこの曲の歌詞や、サウンドに非常によく表れている」

この重要な曲は、1965年12月5日にデッカ・レコードからリリースされた彼らの革新的アルバム『Let It Bleed』に収録された。またこのアルバムは、50周年記念にデラックス・エディションが再リリースされている。

「Gimme Shelter」は、1969年の夏、ロンドンのオリンピック・スタジオでレコーディングされた。プロデューサーはジミー・ミラーで、彼は楽曲の中でギロ(打楽器の一つで、のこぎり歯状の表面を棒でこすって弾く)を演奏している。バンドは、彼らが求める独特な音を出すために、ぼろぼろのトライアンフのアンプを使った。ニッキー・ホプキンスがピアノを弾き、ビル・ワイマンがベース・ギターを、さらにジャガーが後にふざけて言及しているような「みすぼらしい調子の」ハーモニカを加えた。

ステージの定番曲へ

彼らは、リチャーズによる、ふさぎこんだような雰囲気の見事なギターから始まるこの曲を、何度かレコーディングした。「ロサンゼルスへ行って、ミックスしているとき、俺たちはこの曲の『レイプ、殺人(Rape, murder!\』の部分のコーラスを女性に歌ってもらったらいいんじゃないかと思ったんです」と、ジャガーは2013年にナショナル・パブリック・ラジオで述べている。

そして彼らは二十歳のゴスペル歌手、メリー・クレイトンに電話をした。彼女はバプテスト派の牧師の娘で、子供の頃からニュー・オーリンズにある父親の教会で歌うバック・シンガーだった。そんなクレイトンはスタジオに来たが、ローリング・ストーンズのことを全然知らなかった。ミック・ジャガーはこう回想する。

「俺たちは夜中手当たり次第に電話をして、それでこのかわいそうな女性が、髪にピンクのカーラーをつけて、やってきた。誰にでも歌わせられるような詩じゃないんだけど、彼女は1テイクか2テイクでやり遂げたんだ。すばらしいよ。それからずっとこの曲はライブの定番曲なんだ。本当に彼女はよくやってくれた」。

 

「Gimme Shelter」は彼らのライブには必要不可欠な曲であり、バラク・オバマから大統領のお墨付きという評価を得た。彼は「すばらしい曲だ」と言い、ローリング・ストーンズの中でも特に好きなのだという。

Written By Martin Chilton



ザ・ローリング・ストーンズ『Let It Bleed』50周年記念盤
CD / LP / iTunes / Apple Music / Spotify



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