常に革新的な音楽家、スティーヴ・ハケットのギター・ソロ・ベスト20

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ギタリスト、ソングライター兼プロデューサーのスティーヴ・ハケットは、知られざるパイオニアだ。常に革新的なミュージシャンであり続けた彼の影響は、ブライアン・メイやエディ・ヴァン・ヘイレンといった名ギタリストの作品からも聞き取れる。ブライアン・メイは、初期のジェネシスの作品のスティーヴ・ハケットの緻密に構築されたソロとリリカルなアコースティック・ギターを敬愛し、エディ・ヴァン・ヘイレンはスティーヴ・ハケットがプログレッシヴ・ロックのメインストリームに持ち込んだ“タッピング”奏法を彼の演奏から習得した。スティーヴのジェネシス時代の作品は言うまでもなく非常に重要だが、1975年の『Voyage Of The Acolyte』から始まり、2015年の最新作『Wolflight』までの40年以上も続いているソロ作品とライヴ録音もまた、彼の素晴らしさを伝えてくれる。

8枚のLPと12インチを合わせたボックス・セット『The Charisma Years: 1975-1983』は、スティーヴ・ハケットの素晴らしいソロ・アルバムのアナログ盤セットであり(その内の『Please Don’t Touch』『Spectral Morning 』『Defector』の3枚は、2枚組のデラックス盤CDとして再発された)、A3のポスター付のリミテッド・エディションも存在している。

Premonitions – The Charisma Recordings 1975-1983

では、このギタリストの突出した名場面を紹介していこう。

1971年にジェネシスが商業的にブレイクした理由の一部であったスティーヴ・ハケットは、いわゆる“プログレッシヴ・ロック”のムーヴメントに欠かせない存在だった。ジェネシスはひとつのタイプのサウンドよりも遥かに多くのサウンドを提供していたが、その中でもスティーヴ・ハケットの演奏は、上質のメタル・ハイブリッドをより内省的な曲にしていた。バッハのオマージュであるクラシックに影響されたオーケストラを加えた曲には、グリーグやチャイコフスキー、ワールド・ミュージックの要素、ポップな解釈、優れたブルースとアヴァンギャルドといった繊細さがあった。つねに即興演奏ができたこともあり、彼の初期のバンドの曲は、ほぼ全く定型がないのだが、ギター主導の傾向があり彼はそれを‘洗練されたジャム’と呼んでいた。ひけらかすようなソロを演奏する(あるいは、10音で足りる時に20音も演奏する)ようなギタリストではなかったが、スティーヴ・ハケットは、彼が‘ゾーン’に入っているような時も情熱を持って演奏した。彼はテクノロジーを擁護していたが、決してそれに固執することなくギターと固く結束することを好んだ。そして、最終的に素晴らしい音楽を残したのだ。

1950年、ロンドンのピムリコに生まれたスティーヴン・リチャード・ハケットは、“ビートルズ”が世間を騒がせていた1964年にギターを始めた。彼はバッハと、アメリカ人テノール歌手のマリオ・ランツァの豊かなコードとメロディを吸収し、それからキング・クリムゾン、アンドレス・セゴビア、ジミ・ヘンドリックス、ピーター・グリーンらに影響を受けた。10代の頃のごく初期に組んでいたバンド、カンタベリー・グラスとサラバンデはプログレッシヴ・ロックな要素を持つバンドだった。一方、スティーヴ・ハケットのクワイエット・ワールドというプロジェクトのサウンドは、モダンな1970年代サイケデリックだった。

彼のブレイクは、彼がメロディー・メイカー誌のミュージシャン募集の欄に「現存の停滞した音楽様式を超えて努力する気のある」ミュージシャンを集めたバンドを探しているとの広告を出した時から始まる。この時はパンク以前の時代であり、ジェネシスと彼らのマネージメントの目を引いた。スティーヴ・ハケットはオーディションに呼ばれ、テストに合格して、1970年末にバンドに加入した。

よく眼鏡をかけて(コンタクトレンズはまだなかった)、ステージ上で座ってギターを弾いていることが多かったスティーヴ・ハケットは、見るからにロック・スターという人柄ではなかったが、ピーター・ガブリエルがまさにロック・スターになっている中、フィル・コリンズ、トニー・バンクス、マイク・ラザフォードと同様に、フロントマンとシアトリカルなパフォーマンスをする完璧なメンバーであった。スティーヴ・ハケット自身の役割は『Nursery Cryme(邦題;怪奇骨董音楽箱)』が発表された1971年に明らかになった。アルバムのオープニング曲「The Musical Box」は、鍵となる曲である。ハーモニーを奏でるギター・スタイルが、アメリカの西海岸音楽と通じており、2番目の入念なエレクトリック・ギター・ソロが、緊張を煽り、ゴシック・ホラーの恐ろしい物語を頭に浸透させる。それから「The Return Of The Giant Hogweed」を聴いて欲しい。素敵なオーケストラのギター・セクションと、大量のタッピングされるパワー・コードと、プログレッシヴ・ロックの名曲を叫ぶフルスロットルで壮大なフィナーレを伴った、途方もなくおかしな精神の旅ができる曲である。

『Nursery Cryme』は、グラム・ロック・ムーヴメントが始まる時の1971年に発表された。そしてジェネシスは、デヴィッド・ボウイロキシー・ミュージックと並んで、過激な魅力を持つ先駆者となった。そして1972年の『Foxtrot』でバンドはブレイクした。「Watcher Of The Skies」でのハケットの貢献は、ジェネシスの素晴らしき時期であり、メロトロンとスタッカートで刻まれるギターによってオーディエンスが総立ちになり、最高の名曲「Supper’s Ready」に続いでいくのだ。

1973年の『Genesis Live』からの曲としては、スティーヴ・ハケットの「The Knife」の素晴らしいヴァージョンを聴いていただきたい。あの時代のアンコール曲で、観客を絶頂させるジェネシスの多くの曲のひとつだ。オリジナルのアンソニー・フィリップス時代に2つのパートに分けたシングルとして発表され、2つ目のヴァージョンは神秘的な凶暴さに溢れていてスティーヴ・ハケットはそれを椅子に座ったまま演奏したのだ。

スティーウ・ハケットが一番好きなジェネシスのアルバムは、同年の1973年発表された『Selling England By The Pound(邦題;月影の騎士)』だ。楽しくミステリアスなヒット曲「I Know What I Like (In Your Wardrobe)」は、かのジョン・レノンが、ザ・ビートルズ風のギター・コードを誉め讃えた。スティーヴ・ハケットは、最終的にはこの曲に飽きていたかもしれないが、華麗なメロディがこの曲にあるのは確かだ。牧歌的でフォーキーな「Dancing With The Moonlit Knight」も同様に重要な曲で、ギターの要素と、ピアノ主体のテーマ(ガブリエル作曲)が、アルバムのA面の終わりに緊張感を加えている。スティーヴ・ハケットのギブソンのレスポールのゴールドトップは、クイーンに明らかな影響を与えた滑らかで柔らかい音を奏で、この曲と、そして素晴らしい「Firth Of Fifth」で使われている。以前のモチーフとリンクさせることを常に得意としていた彼は、ピーター・ガブリエルのフルートのソロを大音量のペダル・アタックに変えて、この堂々たるネオ・クラシカルの名曲に投入している。

1974年11月に発売された『The Lamb Lies Down On Broadway(邦題;幻惑のブロードウェイ)』は、疑いの余地無くクラシックのプログレシッヴ・ロック時代の最高のアルバムであり、大量のアンサンブルと優れたソロが詰まっているため曲を選ぶのが不公平にも思えるが、「Here Comes The Supernatural Anesthetist」と「Lamia」は、簡潔さとジェリー・ガルシア的な歌声が攻めと決意と一体になった例として、聞くべきである。ライヴ・ヴァージョンもまた、同様に素晴らしい。

ピーター・ガブリエルの脱退によって行き詰まっていた間、スティーヴ・ハケットはアルバム『Voyage Of The Acolyte(邦題;侍祭の旅)』で、幸先のよいソロ・キャリアを始めた。奥義についての曲「Shadow Of The Hierophant」と、同じようにタロットカードにインスパイアされた「Ace Of Wands」は、神秘主義と魔法を伝えるイエス風の曲である。

1976年2月の『A Trick Of The Tail』でバンドに戻り、その中の「Entangled」で、スティーヴ・ハケットは幽体離脱、あるいは病気になった時に経験する夢のような状態を表現した。この曲での彼のギターは非現実的なまでに素晴らしく、衝動的で美しい。一方、70年代中盤のジェネシスとの最後のアルバム『Wind And Wuthring(邦題;静寂の嵐)』からは、「Blood On The Rooftops」を今回の20曲の中に入れてみた。この曲の忘れ難いイントロでスティーヴ・ハケットは、アコースティックのアルバレス・ヤイリを演奏している。

1978年5月に発売したスティーヴ・ハケットの2枚目のソロ・アルバム『Please Don’t Touch』もまた好評を博した。スティーヴ・ハケットはローランド GR-500というギター・シンセサイザーをインストゥルメンタルのアルバム・タイトル曲で使用している。しかし、1979年の『Spectral Morning(邦題;虹色の朝)』の「Every Day」のピュアな音色こそが、彼の演奏力を再認識させてくれる。非常に異なるタイプの曲としては、1980年の『Defector』収録の「The Steppes」を聞いてみて欲しい。ダークな東ヨーロッパ風のフレーズが印象的で、デヴィッド・ボウイの「Warszawa」に匹敵する曲だ。

1983年に発売となったスティーヴ・ハケットのカリズマ・レコードからの最後のアルバム『Highly Strung(邦題:セル151)』には、彼のお気に入りの曲のひとつである、素晴らしい「Camino Royale」が収録されている。この曲は、彼が夢の中で思いついた曲だそうで、超現実的な雰囲気のニューオリンズで、彼はジェネシスとしてパフォーマンスをしていて、それがこの曲の奇妙な感じにつながっている。後に、ハンガリー出身のフュージョン・バンド、ジャイブ(Djabe)が、ハチェットのオリジナルのジャズ・サウンドを強調してリメイクした。

キャリアの始めに戻るが、元々は『Foxtrot』に収録されていた「Can-Utility And The Coastliners」は、2013年に『Genesis Revisited II: Selection』で再録され、ポーキュパイン・ツリーのスティーヴン・ウィルソンを迎えて、ELPのようなキーボードとハケットのトレードマークであるアコースティック・ギターから激しいエレクトリック・ギターへの変更を披露し、プログレ・ロックの炎を燃やし続けており、この曲はしばしば見逃されている、名曲である。

2015年に発売されたアルバム『Wolflight』のタイトル曲は、このプレイリストのフィナーレに相応しい。恐ろし気なスペイン舞踏曲から、スリリングなギブソン・フェルナンデス・レスポール・ブラックのエレクトリック・ソロに変調するこの曲には、ダーク・ファンタジー・ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』のような雰囲気があり、大気圏に上昇していくかのような素晴らしいコードが満載である。

スティーヴ・ハケットは次に、どこに向かっていくのだろう?

Written By Max Bell


♪プレイリスト『スティーヴ・ハケットのソロ20曲

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