『Reign In Blood』と対比されるスレイヤー1988年の名盤『South Of Heaven』

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1981年に結成されて以来、スレイヤーは間違いなく最も影響力のあるメタル・バンドのひとつであり続けた。『South Of Heaven』のような作品の貢献は決して小さいものではない。

スレイヤーの4作目となるスタジオ・アルバム『South Of Heaven』は、前作の『Reign In Blood』と比べられることが多いが、今作では全く方向性を変えている。2作が比較される時にはアルバムの内容よりも、それらのリリースのタイミングとバンドの歴史が取り上げられることが多い。それは『South Of Heaven』がその後の未来を象徴する作品であることを証明している。

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『South Of Heaven』がリリースされた1988年は、バンドが結成されてから7年が経っており、プロデューサーのリック・ルービンとデフ・ジャム・レコーディングスとの初の作品となった『Reign In Blood』がバンド自身初のゴールド・ディスクを獲得し、その熱はまだ冷めていなかった。リック・ルービンの制作技術のお陰で、スレイヤーがそれまでの5年間進化させ続けてきたスラッシュ・メタルの旅を、ひとつの作品『Reign In Blood』に縮すことができ、世界はそれに反応を示した。そして今度は全く新しいことをする時がやってきた。

実際『Reign In Blood』があまりにも成功したために、次作に取り掛かる時にメンバーたちは同じような作品をまた作り、前作を超えようとすることは無意味だと感じていた。そこで彼らは他の道を歩むことを選び、ペースを落とすことにした。スラッシュ・メタル界で忠実なファンを増やしながらキャリアの頂点へと登りつめたバンドにとってそれはリスクのある決心だった。しかしスレイヤーは世界に新しいものを披露できる特別な存在だった。

そして出来上がったアルバム『South Of Heaven』は良い結果をもたらした。アルバムはゴールド・ディスクを獲得。アルバムではスラッシュの破壊的なパワーを、世界中で更に何百万人ものファンたちを惹き付けるテンポで提供した。しかも成果はそれだけには留まらない。

振り返ってみると、『South Of Heaven』は多少繊細でありながらもパワフルな舵でメタル界とそこから誕生した限りないすべての派生物を未来へと無意識的に導いていた。1曲目のタイトル・トラックではアウトロの30秒近くも続くハウリングから突然2トラック目の「Silent Scream」にうつりリスナーを攻撃する。

1988年当時、音楽シーン全体が変わろうとしていた。スレイヤーの独創性に富んだ『South Of Heaven』は、そういった世界の変化一端を担うと共に、それを自覚をもしている作品といえるだろう。そしてアルバムに対してどんな感想を抱いたとしても、レンタル・トレーラーを引っ張るシボレー・カマロに乗って、初めての全米ツアーを行ったバンドのひたむきさを疑うことはできない。

Written By William Badgley


 


 

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