パーラメント/ファンカデリックのジョージ・クリントンのソロ第1作『Computer Games』

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あのファンカティアーは、再び良い音楽を提供できるのか? 70年代のマスター・ファンク・ミュージシャン、パーラメント/ファンカデリックは80年代の到来と共に行き先を見失い、契約や人材、個人的な問題、手の伸ばし過ぎといった様々な理由と悪状況に巻き込まれた。パーラメント、パーレット、ファンカデリック、ザ・ブライズ・オブ・ファンケンシュタイン、ブーツィー、スウェット・バンド、フィリップ・ウィン、ギタリストのロジャー・トラウトマンとの中止となったプロジェクト等々等々、アンクル・ジャムことジョージ・クリントンにも限度があった。80年代の若者たちがファンクよりもラップやエレクトロを好む中で、音楽は速いスピードで変わっていった。主流のダンス・ミュージックでさえもどんどんエレクトロニック・サウンドへと変わった。

そんな中で、再結成する機会がやってきたが、さあ、どうしたものか? Pファンクのリーダーであるジョージ・クリントンは、どうすれば良いのか分かっていた。まずは魚釣りに行く…その疲れ切った頭の中の配線をやり直さねばならなかったのだ。ファンクは中毒性があり、新しいエンターテイメントとして世に出回っていたコンピューター・ゲーム(テレビ・ゲーム)もそうだった。ジョージ・クリントンはそれを試してみて夢中になった。その新しい道楽を生産性の高いものへと変えられないか…さてさて、その可愛らしいシンセ・メロディをスーパー・ファンクと一緒にしたらどうなるのか? そして彼のデビュー・ソロ・アルバム『Computer Games』が生まれた。

Pファンクがシンセサイザーとエレクトロニクスを恐れたことはなかった。70年代初期から、パーラメント/ファンカデリックがインスピレーションを得てきたスライ&ザ・ファミリー・ストーンはドラム・マシーンを使用していた。元オハイオ・プレイヤーズのキーボーディスト、ジュニー・モリソンがファンカデリックのメンバーに1977年に加わってから、更にシンセがパワーアップ。1982年にはジュニー・モリソンとジョージ・クリントンがPファンクとエレクトロニクスを新鮮に混合したサウンドを見つけ出した。それは非常に素晴らしかった

パーラメント、もしくはファンカデリックとして復活することは契約上不可能だったため、ジョージ・クリントンはキャピトルとソロ・アーティストとして契約を結んだ。最初のシングル「Loopzilla」は1982年9月に発売された。聴くと明らかにPファンクだが、同時にピカピカのロボットのように眩しく光るエレクトロニカに仕上がり、この曲がコンテンポラリー・ラジオで流れるようになった。まるでサンプルのように、古いモータウンのヒット・ソングの即興も含まれている。「Loopzilla」ではアフリカ・バンバータの「Planet Rock」を参考にし、彼は”夢中になるよ”と歌っているがそれは間違いない。「Loopzilla」は、警告のように繰り返され、完全に踊りたくなるトラックだ。チャートでのランキングは控え目だったが、クラブでは大ヒットとなった。

次に発売されたシングルは「Atomic Dog」。今度はもっとゆっくりとした重い感じのエレクトロ・トラックに仕上がっている。それは雑種の犬(もしくは尾のついた人間かも知れないが)についての物語で、可笑しくてバカらしいほどにキャッチーな曲だ。ポップチャートに登場するには奇抜過ぎたが、R&Bチャートでは1位を獲得した。『Computer Games』に収録されたシングル両方は、UKで1982年11月5日に発売された。

『Computer Games』に収録されているすべての曲は違っていてモダンであるが、同時にどれも共通していた。それはアップデートしたPファンクだ。昔からのファンはそのペドロ・ベルがデザインを手掛けたアルバム・ジャケットを見たら気付くだろう。多くの馴染みの協力者たちが再び参加している。しかしその姿勢は違っていた。そのクレイジーなユーモアは変わらず全体的に充満しているが、オープニング・トラック「Get Dressed」は、盛りだくさんのギャグを言いながら舞台裏でミスすることを心配するジョージ・クリントンがいる。「Man’s Best Friend」は、ファンカデリックとしてのキャリアの後半の作品に収録されていそうな曲だ。それから「Loopzilla」と「Pot Sharing Tots」へと続く。幼児が他の幼児に恋をするスウィング・バラード「Tots」はピュアであるが、少しだけ下ネタの要素もあり、頭からなかなか離れない。

タイトル・トラックは、クラシックを真似た最薄なシンセのメロディで始まり、まるで庭用ゲーム機のゼットエックススペクトラムのゲームのようなサウンドになっている。それからファンカデリックが『Uncle Jam Wants You』のような勢いで登場し、プリンスのミネアポリス・サウンドを少しだけ真似ているかのように少しだけ脆い感じもする。その他にもドラキュラを取り入れているが、驚くことではない。それから次の曲では少し落ち着き、レゲエを真似たバラード「Free Alterations」が愛情で相手を包み込むことを約束している。幾層ものヴォーカルと、1ヶ月前にリリースされたドナルド・フェイゲンの「I.G.Y」のようでもう少し無秩序なグルーヴの下に埋もれてあまり曲らしい曲ではない。最終トラック「One Fun At A Time」はやり過ぎは良くないと自分に伝えている。まとめていうならば、盛り沢山のアルバムだ。

彼は40代になっても若者たちを楽しめるノリがまだあることを証明した。まるで彼がその後に出てくるヒップホップのミュージシャンたち(スヌープ・ドッグの「What’s My Name?」など、「Atomic Dog」は擦り切れるほど様々なアーチストたちがサンプリングしている)、プリンスに憧れて真似をする若者たち、そして数多くのエレクトロ・ポップ・ミュージシャンたちに、まだまだ彼にはファンクがあることを証明していたようだ。『Computer Games』は、ひいき目に見て素晴らしく、最悪の場合でも独創的と言える作品だ。ジョージ・クリントンは、力強いカムバックが要されていることをわかっていた。そしてファンクいっぱいのソウル魂のある人は誰一人もこれを聴いてがっかりしなかった。

Written By Ian McCann



ジョージ・クリントン『Computer Games』

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