キャノンボール・アダレイ&マイルス・デイヴィス『Somethin’ Else』

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ブルー・ノートからの最後のレコーディングからちょうど4年が経ち、マイルス・デイヴィスは同レーベルからアルバムをリリースするためにスタジオへ再び戻ったが、それはバンドを率いるためではなかった。バンドのリーダーを務めたのは29歳のジュリアン・“キャノンボール”・アダレイで、それは素晴らしいバンドだった。

アダレイがレコーディングを行った当時はデイヴィスのセクステットのメンバーであったが、翌年にはサックス奏者であるアダレイは将来大きな影響力を持つことになる『Kind of Blue』にも参加した。このアルバムの雰囲気は、後に発売される作品を予告していると言ってもいいくらいで、ジャズを愛する者なら持つべきアルバムである。

今作と『Kind of Blue』の主な違いは、『Somethin’ Else』にはデイヴィスが選んだと言われているスタンダードのカバーが収録されており、それらはアルバム全曲から溢れ出る特別な心地よさを更に深めてくれる。オリジナル楽曲は2曲あり、1つはマイルズが作曲したタイトル・トラック、そしてもう1曲はピアニストのジョーンズとアダレイの弟でコルネット奏者のナットが共作した「One For Daddy-O」。

ビルボード誌が1958年10月に掲載したLPのレビューでは「この数ヶ月間の間にリリースされたジャズ作品の中では傑出した作品だ、ひょっとしたら今年のベストかも知れない。マイルス・デイヴィスの実に素晴らしい繊細なトランペット、そして時にはキャノンボール・アダレイの磨きのかかった最高の演奏が聴ける。「Autumn Leaves(邦題:枯葉)」と「Love for Sale」の両トラックはデイヴィスの手によって素晴らしい仕上がりとなっており、「Dancing in the Dark」ではアダレイのソロが眩しく輝く。これはどんなジャズ・ファンにとっても大切な一枚となるだろう」。

アルバム全体を通してアダレイとデイヴィスはまるで2人だけのプライベートな会話を楽しんでいるかのようで、私たちは特別にそれを盗み聞きしているような気分にさせられる。殆どのリスナーにとって印象深いトラックとなるはずの「Autumn Leaves」。この曲と「Love for Sale」がこんなにも満足感を与えてくれるのは、ただ単純に作り直された曲ではないからだ。このアルバムには“決まりきった瞬間”が一つもないことをこの2曲が証明してくれる。アダレイが達人と呼ばれる理由を知りたければ「Dancing In The Dark」を聴けばいい。ストリングスさえ加えれば、チャーリー・パーカーだと思うだろう。

ニュージャージー州にあるルディ・ヴァン・ゲルダーのハッケンサック・スタジオで1958年3月9日にレコーディングされたアルバムには、ピアノにハンク・ジョーンズ、ベースにサム・ジョーンズ、そしてドラムにアート・ブレイキーを迎えている。リード・マイルズがジャケットをデザインし、裏面の写真をフランシス・ウルフが撮り、正にブルー・ノートの典型的なアルバム・デザインとなっている。

「専門用語に詳しくない人の為に説明しておこう。マイルス・デイヴィスのオリジナル楽曲であるタイトル・トラックはアルバム・タイトルとしても使用され、それは称賛を意味する。私の個人的な評価を付け加えることが許されるのなら、キャノンボールとマイルズとリズムセクション全員、そしてアルバム全体は断固として“素晴らしい特別なもの”であることを強調したい」

-ラナード・フェザー/オリジナル・ライナーノーツより


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