ボン・ジョヴィ「Livin’ On A Prayer」ヒットの裏側:最初ジョンは気に入っていなかった

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Photo: Fin Costello/Redferns

1980年代に大ブレイクしたロック・バンドのボン・ジョヴィ(Bon Jovi)。リーダーのジョン・ボン・ジョヴィはニュージャージー州の貧しい家に生まれ、そこからバンドを結成、そして音楽界最大のロック・バンドへと成長した。ボン・ジョヴィのオリジナルメンバーは、リードシンガーのジョン・ボン・ジョヴィ、ギタリスト兼ソングライターのリッチー・サンボラ、ベーシストのアレック・ジョン・サッチ、キーボードのデビッド・ブライアン、ドラマーのティコ・トーレスの5人だ。

1984年には、全米シングルトップ40ヒットとなった「Runaway」を含むデビュー・アルバム『Bon Jovi』を発表し、1年後にはセカンド・アルバム『7800° Fahrenheit』をリリースした。2枚のアルバムはいずれもプラチナ・ディスクを獲得したが、バンドを世界的なスーパースターへと変貌させたのは3枚目の『Slippery When Wet(ワイルド・イン・ザ・ストリーツ)』だった。

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1986年にリリースされたこのアルバム『Slippery When Wet』は、全米アルバムチャートで8週連続首位を獲得し、後に1000万枚を記録してダイヤモンドディスク認定を受けたボン・ジョヴィの代表作品の一つだ。このアルバムには、80年代を代表する「Wanted Dead or Alive」「You Give Love a Bad Name」、そして「Livin’ On A Prayer」の3つの曲が収録されている。

「Livin’ On A Prayer」は、架空の夫婦であるトミーとジーナが、生活費を稼ぐために奮闘しながらも、信念を持ち続けようとする姿を描いている。この曲は、何十年もの間、世界中のフェスティバルやカラオケ、バー、アリーナなどで歌われ、流されてきた。しかし、当初ジョン・ボン・ジョヴィはこの曲を気に入ってはなかった。The Irish Times紙にこう語っている。

「今でも覚えています。リッチーと一緒にレコーディングルームから出てきたときに、“まぁ、いいんじゃない? 何かの映画のサントラに入れればいいよね”って言ったんです。そしたらリッチーが僕を見て、“お前はバカじゃないか、すごくいい出来だろ”って。僕は“この曲はどうなるかわらかないだろ”って返したんだ。まだあのブーンブーンっていうベースラインがなかったから、どちらかというとザ・クラッシュに近い音だった」

2004年に発売されたボックスセット『100,000,000 Bon Jovi Fans Can’t Be Wrong』に隠しトラックとして収録されているデモを一聴すれば、ジョン・ボン・ジョヴィが言いたいことがわかる。このトラックには、叩きつけるようなドラム、切り裂くようなギター、そしてあの典型的なロボットのようなトークボックスがないのだ。

ジョーン・ジェット&ザ・ブラックハーツの「I Hate Myself for Loving You」、エアロスミスの「Dude (Looks Like a Lady)」、リッキー・マーティンの「Livin’ La Vida Loca」などの大ヒット曲を手がけており、「Livin’ On A Prayer」共同作曲者だったソングライターのデズモンド・チャイルドは、2019年のポッドキャストでこの曲についてこう振り返っている。

「私たちはこの曲を不気味でムーディーで繊細なものとして制作していました。なのでジョンは、バンドが目指していたハードロックやスタジアムロックといった方向性には合わないと思っていたんです。でもこの曲がとても良い出来だったので、リッチー・サンボラと私は、冗談半分、本気半分で、文字通り手と膝をついて、彼に録音を懇願したんですよ」

最終バージョンの「Livin’ On A Prayer」は瞬く間に大ヒットを記録した。ミュージック・ビデオは、頻繁にコラボレートしていたウェイン・アイシャムが監督し、MTVで常に流れており、「You Give Love A Bad Name」に続く2曲連続で全米シングルチャート1位を獲得した。そして彼らは、初めてシングルを連続して全米シングルチャートにランクインさせたハードロックバンドとなった。

しかし、この曲は商業的な成功を超えて世間に影響を与えている。2001年9月11日の同時多発テロの後、ボン・ジョヴィは「America.A Tribute to Heroes」の特番で「Livin’ On A Prayer」のアコースティックバージョンを演奏。その後も黒人男性が電車や公園で歌う動画が世界中で拡散されたり、新型コロナウイルスのパンデミックが始まったときにはシカゴのアパートの窓から住民たちがこの曲を合唱したことも報道され話題となった。

また、この曲は他のアーティストにも影響を与えている。2010年、ボン・ジョヴィのマドリードのコンサートでリアーナが飛び入りでゲスト参加し、2016年の「The Ellen DeGeneres Show」出演時にリアーナはこの曲を披露。そして、2019年にはミシェル・ウィリアムズが「The Masked Singer」に出演した時にカバーしている。

ボン・ジョヴィの成功は「Livin’ On A Prayer」の後も長く続いた。彼らはさらに5枚の全米1位を獲得し、2000年のアルバム『Crush』に収録された「It’s My Life」ではトミーとジーナを再登場させている。2009年にはジョン・ボン・ジョヴィとサンボラがソングライターズの殿堂に選出され、2018年にはバンドがロックの殿堂入りを果たした。

いまやボン・ジョヴィは、ロック界の伝説的存在としての地位を確固たるものにしている。それは「Livin’ On A Prayer」のような代表的なヒット曲のおかげであり、彼らは今後もスタジアムの屋根を吹き飛ばし続けることだろう。

Written By Bianca Gracie



ボン・ジョヴィ『Slippery When Wet』
1986年8月16日
CD / iTunes / Apple Music / Spotify

ボン・ジョヴィ『Bon Jovi 2020』
2020年10月2日発売
CD / iTunes / Apple Music / Spotify

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