メルヴィン・ヴァン・ピーブルズが監督、アースを初めて紹介した『スウィート・スウィートバック』のサントラ

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俳優、映画監督、そして音楽家であるメルヴィン・ヴァン・ピーブルズによる4作目のアルバムで、映画『スウィート・スウィートバック』のサウンドトラックとなった作品は、黒人が主演して黒人の客層に向けたブラックスプロイテーションという映画ジャンルを築くこととなった作品をもとにしている。

映画の内容そのものがのちに続いたブラックスプロイテーションの作品のお手本となったわけではないが、『スウィート・スウィートバック』が映画として成し遂げたのは、強い黒人の主役が無敵でかっこいい映画でもハリウッドは儲けることができると示したことだ。そしてサウンドトラックとしては、初めてアース・ウィンド&ファイアの名を世に知らしめた。

のちにアルバム『What The…. You Mean I Can’t Sing?!』を制作することとなるメルヴィン・ヴァン・ピーブルズは、そのメッセージを確実に伝えることができると証明した。未来のヒップホッパのミュージシャンたちもメモったはずだ。

はっきりしておこう。メルヴィン・ヴァン・ピーブルズが歌っているわけではない。映画公開の2か月後、1971年7月にリリースされた『スウィート・スウィートバック』のサントラは典型的なサントラであり、いわゆるスタックスのソウルフルな楽曲を収録したコレクションとは違っている。しかし現代のリスナーは歌っていない声がアルバムに収録されていても、1971年のリスナーほど戸惑いを感じないはずだ。そしてこのアルバムは、濡れた土の上を耕すすきのようにグルーヴするのだ。

アルバムはゴスペルとセックスの奇妙なミックスの「Sweetback Loses His Cherry」(「Wade In The Water」の一部も含み、アース・ウィンド&ファイアのリーダー、モーリス・ホワイトはドラマーとしてラムゼイ・ルイスとともに毎晩のように演奏した)で始まり、即座にこのサントラはファンクなオーディオ・ドラマであることに気がつく。

「Come On Feet Do Your Thing」は、映画に良くある追跡シーンで、切羽詰まったホルンやサイレンの中で“ホワイティー”がスウィートバックを追っている。「Sweetback’s Theme」はナイトクラブのジャジーなR&Bで、前述のラムゼイ・ルイスのトレードマークである手拍子も含まれている。「Hoppin’ John」は訴訟にならなかったのが不思議なほど、まるでジェームス・ブラウンの「Mother Popcorn」のようで、同じぐらい良い曲だ。

さらにゴスペルのようなインタールード、番犬の攻撃、踊りたくなるジャズ・グルーヴ、そして今聴くとあまりに決まりきった“The Man”と“Black Man”の間の会話は、当時はまだそう決まりきったものとして捉えられていなかった。今日、こんなにも自由気ままでファンキーなレコードもサウンドトラックも見つかることはない。

バンドのトレードマークとなったカリンバの使用は時折あるものの、のちのアース・ウィンド&ファイアの初期の頃を味わいたいと思って本作を手に取ったならばそれが叶うことはない。ここにある内容は独特だ。ライトニン・ロッドの『Hustlers’ Convention』と同じ分類にすることはできるかもしれないが、『Hustlers’ Convention』では物語を展開していくのに比べ、メルヴィン・ヴァン・ピーブルズは、サウンドトラックが残していく穴をリスナーが自身の想像力で埋めていくことを要求する。そしてそれは、ヴィジュアルがなくても効果的なのだ。

その後メルヴィン・ヴァン・ピーブルズが達成した偉業は数多くあるが、彼のキャリアが『スウィート・スウィートバック』の映画とサウンドトラックだけで終わっていたとしても、メルヴィン・ヴァン・ピーブルズは常に無敵な人物と思われ続けたことだろう。

Written by Ian McCann



メルヴィン・ヴァン・ピーブルズ『Sweet Sweetback’s Baadasssss Song』

♪ プレイリスト『Stax Classics

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