エイミー・ワインハウスは“偉大なジャズ・アーティスト”だ

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Photo: Roger Kisby/Getty Images

2003年から2007年にかけて、商業的にも創造的にも絶頂期を迎えたエイミー・ワインハウス(Amy Winehouse)は、様々な音楽的要素を融合させて独自のスタイルとサウンドを作り上げるという点で、最先端のアーティストであったことは間違いない。他の誰とも似ていないモダンで刺激的な彼女であったが、そのスタイルは偉大なるジャズシンガーへの回帰でもあった。

エイミー・ワインハウスの音楽を注意深く聴き、現代的なプロダクションの光沢をはがしてみると、そこには過去の響き、特にダイナ・ワシントン、サラ・ヴォーン、エラ・フィッツジェラルドという3人の偉大な女性ジャズ・シンガーの影響があることに気づくだろう。

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エイミーは、ダイナ・ワシントンのスモーキーな歌声とブルース風のフレージング、サラ・ヴォーンのビブラート、エラ・フィッツジェラルドの即興演奏(スキャット)の能力を吸収し、それらの特徴にヒップホップ、ソウル、ポップスの要素を組み合わせて、独特の音楽的アイデンティティを作り上げた。エイミーのオリジナリティは、それらの影響を自分の精神や人生経験に照らし合わせ、真の意味での自己表現に到達したことにある。

ダイナ・ワシントンらがエイミー・ワインハウスに与えた影響については、驚くべきことではない。なぜなら、ジャズはエイミーの血の中にあったからだ。彼女の家族、特に父ミッチは、ジャズに深く傾倒していたのだ。当然のことながら、父親の音楽熱は幼いエイミーにも伝わり、彼女は小さい頃からビッグバンドやスウィング、アメリカのジャズシンガーの音に浸っていた。

2003年にエイミーがデビュー・アルバム『Frank』を発表したとき、彼女のジャズの影響は、存分に表れていた。「Know You Now」では、エラ・フィッツジェラルドのような即興的なスキャットセクションを取り入れ、「October Song」では、サラ・ヴォーンにゆかりのあるジャズスタンダード「Lullaby of Birdland」のメロディーを引用している。

エイミー・ワインハウスに最も似ている歌手はダイナ・ワシントンだろう。ベテラン歌手のトニー・ベネットは、2016年に出版した『Just Getting Started』の中で、デュエット曲「Body & Soul」を録音したときに、ダイナ・ワシントンとエイミーが似ていることに衝撃を受けたとこう振り返っている。

「彼女の声がダイナ・ワシントンに似ていると私が言うと、エイミーはいかにダイナに傾倒していたかを語ってくれたんだ」

しかし、エイミーはダイナ・ワシントンを参考にしながらも、自分のものにしていった。『Frank』の収録曲では、「(There Is) No Greater Love」を官能的にリメイクし、自分の声とサックスとフルートの3者間の会話に変えている。ジャズの名曲を再定義するエイミーの能力は、ジェームス・ムーディの「Moody’s Mood For Love」の楽しいリバイバルで見事に証明された。

2006年にリリースされたセカンドアルバム『Back To Black』では、ジャズの影響はあまり見られず、R&B調のサウンドとなっているが、エイミーは、特に心に残るバラード「Love Is A Losing Game」でジャズシンガーの感性で作品に取り組んでいる。

アメリカのジャズシンガーたちのように、エイミー・ワインハウスは自分の声を楽器のように使っていた。その歌声は細かく調整された精密な道具というより、自己表現のためのしなやかな乗り物であり、その根底にはソウルフルさがあり、それが大きなエモーショナルを生み出したのだ。

この世を去るのが早すぎたとはいえ、エイミー・ワインハウスはその短い生涯の中で、彼女が敬愛したアメリカの歌手たちと並んで、偉大なジャズ・ヴォーカリストの一角を占めるに十分な活躍をしたといえる。もちろん異論もあるだろうが、トニー・ベネットがエイミーを「偉大なジャズ・アーティスト」と表現しているのなら、この議論に口をはさむ者はほとんどいないだろう。

Written By Charles Waring



エイミー・ワインハウス『Frank』
2003年10月20日発売
LP /Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music


 

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