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ジョージ・ハリスン『Electronic Sound(邦題:電子音楽の世界)』

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ジョージ・ハリスン『ELECTRONIC SOUND(邦題:電子音楽の世界)』

ジョージ・ハリスンのボックス・セット『George Harrison The Apple Years』の序説で、ケミカル・ブラザーズのトム・ローランズは、「このアルバムは……僕のスタジオの壁に掛かっている。モーグ・モジュラーのすぐ横に飾ってあり、僕の脳に向けて真っ直ぐにインスピレーションのビームを発しているのだ」と語っている。ローランズが本作の中古盤LPを購入したのは1990年代半ば、日本のレコード店を訪れた時で、そこから聴こえてくる音に驚かされたという。

1968年11月から1969年2月にかけて録音した、ジョージの『Electronic Sound』が発表されたのは、1969年5月のこと。本作は、ビートルズのアップル・レコード傘下のサブ・レーベル<ザップル(Zapple)>からリリースされた、2作目かつ最後のアルバムとなった。ジョージが自らの時代に先んじていたこと、そして数多くの面において、ビートルズの4人のメンバーの中で彼が最も音楽的に探究心旺盛であったことが、本作でさらに証明されている。

『Electronic Sound』は、モーグ・シンセサイザーで演奏されている2つの長尺曲で構成されており、元々はLPの各面に1曲ずつ収録されていた。ここで用いられているモジュラー・シンセ <Moog III-C>は、ジョージがその発明者であるロバート・モーグから購入したものだ。 本作の制作の背景にあるのは、1968年のロンドンとロサンゼルスならではの音楽的探究心だ。つまりそれは、アヴァンギャルドが至る所で溢れかえっていた時代であった。

先に録音されたのは、アルバムのB面「No Time or Space(邦題:超時間、超空間)」の方で、1968年11月にロサンゼルスでレコーディングが行われた。ジョージは『The Beatles (White Album)』での作業を既に終えていて、ジャッキー・ロマックスがアップルからリリースするアルバム『Is This What You Want?』をハリウッドのサウンド・レコーダーズ・スタジオで録音するため、米西海岸に飛んでいた。

ロマックスのアルバムは、モーグを特色としていた。そのモーグは、バーニー・クラウスが同スタジオに持ち込んでいたもので、彼は音楽的パートナーのポール・ビーバーと『The Nonsuch Guid to Electronic Music』というアルバムを制作しており、ロバート・モーグによる発明品の“セールスマン”のような役を務めていた。そのロマックスのアルバム制作の後を受け、ジョージはクラウスの助けを借りて、この25分間の曲を録音した。

LPのA面「Under the Mersy Wall(邦題:マージー壁の下で)」は、リバプールの基盤であるマージー川に言及した18分の作品で、1969年2月、英サリー州エッシャーにあるジョージの自宅<キンファウンス>で録音が行われた。このタイトルは、同姓同名の別人ジョージ・ハリスン(親族関係なし)が日刊紙リバプール・エコーで週1回連載している「Over the Mersey Wall」と題したコラムも参考にしている。本曲のホワイト・ノイズは、1970年の『All Things Must Pass』に収録されているジャム・セッション曲の1つ「I Remember Jeep」で使用された。

アルバムのジャケットとなっているのは、ジョージ自身が描いた絵画だ。何年も経った後、彼の息子ダーニは、ヘンリーの自宅の壁に立てかけたまま放置状態にあったこの絵を、自分のベッドルームに飾りたいので貰えないかと父親に尋ねた。数年後、ジョージはダーニに、この絵の意味について説明している。「皆にのし掛かっているアップル社のあらゆる深刻な状況や問題を、デレク(・テイラー)が掴んだまま離さずにいる。顔をしかめているのがニール(・アスピノール)で、椅子に座って笑っているのがマル(・エヴァンス)だ。 右側にいるのはエリック(・クラプトン)。そして蝶ネクタイとポケットチーフを身につけている正面の緑の男がバーニー(・クラウス)で、ボードを通してあらゆるものにパッチを当てているんだ。 お茶を淹れているのが僕(小さな青い顔で笑っている)だよ。前面の小さな緑色の悪魔みたいなやつが、猫のジョスティックだ」。

本アルバムとジョージのモーグ自体が、ビートルズ物語において重要な役割を果たしている。このモーグは1969年夏にアビイロード・スタジオに持ち込まれ、ビートルズのアルバム『Abbey Road』で用いられた。ジョージは後にこう回想している。「このモーグ・シンセサイザーは巨大で、何百ものジャック/プラグと鍵盤2台を備えていた。こいつを所有しているということと、うまく動作させるということは、別問題だったんだよ。例えば「Here Comes The Sun」のような曲のサウンドを聴くと、幾らか良い仕事をしてはいるけれども、全くもって初期段階のタイプの音なんだ」

『Electronic Sound』は、ジョージが強烈な独創性を発揮していた時代、ありとあらゆることが可能だった世界で制作された、ひとつの音楽的記念碑である。


George Harrison - Electronic Sound

 

George Harrison - Electronic Sound

George Harrison - Electronic Sound

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