映画『ライオン・キング』の音楽:ファレルやドナルド・グローヴァー、ビヨンセが果たした役割とは by 渡辺志保

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2019年7月19日に全米公開を迎えてオープニング3日間の興行収入が約197億9,500万円、8月9日に公開された日本でも4日間の興行収入14億4600万円と大ヒットを記録している映画『ライオン・キング』。この映画の大きな魅力の音楽と、今作のサントラに参加したファレル・ウィリアムスやドナルド・グローヴァー、そしてビヨンセについて、音楽ライターの渡辺志保さんに寄稿いただきました。

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その精巧さとダイナミックさから「超実写版」と呼ばれるほどのリメイク版『ライオン・キング』。例えば、フルCGで表現される幼少期シンバのすばしっこい動き、圧倒するほどのヌーの大群の様子、ティモンとプンバァが駆け巡る鮮やかなランドスケープなど、思わず畏怖の念を抱くほどに、キャラクターたち、そしてアフリカの自然を描ききった大作に仕上がっている。

そんな本作に欠かせないのが、もちろん音楽である。1994年に公開されたアニメ版のスコアを手がけたのは、『レインマン』や『パイレーツ・オブ・カリビアン』と言った代表作でも知られる、映画音楽界の巨匠ことハンス・ジマー。もともと『ライオン・キング』はジマーにとっても特別な作品であることは間違いなく、本作の成功をもってして同年のアカデミー賞作曲賞・歌曲賞や、ゴールデングローブ賞音楽賞を受賞するに至ったという経緯がある。もちろん、今回の『ライオン・キング』においても全編の下敷きとなっているのはかつてハンス・ジマーが手がけた印象的なスコアの数々だ。冒頭を飾る「サークル・オブ・ライフ」やセンチメンタルかつ壮大な「ラフィキのホタル」といった名曲が流れるタイミングも、元のアニメ作品とほぼ同じ。かつてアニメ版を楽しんだ観客なら、以前の感動をトレースするように実写版『ライオン・キング』を楽しむことが出来る。

 

そして、2019年の実写版のスコアにさらにダイナミックなアレンジを施した音楽プロデューサーがいる。それがファレル・ウィリアムス(*上写真)だ。本作のオリジナル・サウンド・トラックに収録された19曲のうち、ファレルは計5曲のプロレュースを手がけており、よりアップデートされたプライド・ロックの世界観をサウンド面で表現している。とくに「王様になるのが待ちきれない」や「ハクナ・マタタ」はオリジナル版を超える迫力のコーラスやドラム、ホーン・アレンジが加えられており、ファレルのプロデュース能力の高さ(と気合の入れっぷり!)が堪能できる一曲。

幾層にも重なった「声」をパーカッション代わりにプリミティヴな面白さを追求した「ライオンは寝ている」もまた、ファレルの遊び心を代弁しているような仕上がりだ。

ファレルとハンス・ジマーといえば、兼ねてから師弟のような関係にあったことでも知られる。2016年に公開され、ファレルが本編のプロデューサーも務めた映画「ドリーム(原題:Hidden Figures)」でも、両者はともに本編の楽曲プロデュースを担当しており、2017年に世界最大の音楽フェスと言われるコーチェラ・フェスティヴァルにハンス・ジマーが出演した際には、ファレルがそのステージに参加し、ファレルの代表曲「Freedom」を共に披露したという経緯もあるほど。今回、ファレル自身が『ライオン・キング』のスコア制作に携わった経験を「僕には大学(カレッジ)に行った経験はないけれど、レジェンドたちに囲まれた今回の制作は、まるで大学生活を体験したようだった」とロンドンで開催されたヨーロッパ・プレミア試写の会場でのインタヴューで答えていたのが印象的だった。また、この体験を「僕に贈られたギフト」とも形容していたファレル。自分のDNAにも根付くアフリカのルーツを表現できたことは、彼にとって非常に大きな意味を持つであろうことは想像に難くない。

 

さらに、今回の『ライオン・キング』の楽曲の数々をこれまで以上にエモーショナルなものに仕上げているのが、本編で声優を務めたドナルド・グローヴァー(シンバ役 *上写真右)とビヨンセ(ナラ役 *上写真左)の力量だろう。ファレルがプロデュースを担当した「愛を感じて」は、原曲の美しさはそのまま、よりそれぞれのキャラクターの機微が感じられる仕上がりに。ドナルド・グローヴァーといえば、役者だけではなく脚本家やドラマ・プロデューサー、そしてチャイルディッシュ・ガンビーノ名義で歌手としても活動するマルチ・スターである。2018年、2019年と連続してグラミー賞を複数受賞した他、2018年のグラミー賞授賞式でのステージでは、『ライオン・キング』で子供の頃をのシンバ役を担当した子役、JD・マックラリーとともにステージへ上がり、映画の公開に一年以上も先駆けて世代を超えたデュエットを披露したことも話題になった。もちろん、役者としてもお墨付きで、エミー賞やゴールデングローブ賞といった並み居る賞レースを総ナメする超スーパースターなのだ。

そしてビヨンセも、世界のトップ・ディーヴァとして知られる存在である。これまでに6枚のソロ・アルバムを発表し、その売上合計枚数はなんと1億枚にも上る。ほぼ毎年のようにグラミー賞にも多数ノミネートされ、トロフィーを獲得し続けている最もパワフルな女性アーティストだ。

本サウンドトラックに収録されているのは、大半が1994年のオリジナル・スコアに基づく楽曲だが、スペシャルな書き下ろし楽曲がいくつか収録されている。まず一つは、ビヨンセによる壮大なミッド・チューン「スピリット」だ。もともとこの楽曲はエンド・クレジットのために用意されたものだったそうだが、実際にビヨンセから仕上がった曲を渡されたハンス・ジマーは、その完成度の高さに驚き、何とか映画本編にフィーチャーしたいと思ったそうだ。実際に、「スピリット」はストーリーの山場を迎える場面で流れ、物語に新たな深みを与えている。

そして、もう一曲が「ネヴァー・トゥー・レイト」。楽曲制作に携わったのは、エルトン・ジョンとティム・ライスの二人。ティム・ライスは『アラジン』、『美女と野獣』と言ったディズニー作品の楽曲制作にも関わり、ディズニー・レジェンドを受賞したヴェテラン作曲家の一人。エルトン・ジョンは、言うまでもなくオリジナル版の『ライオン・キング』にて「愛を感じて」を歌ったまさにその人。この二人のコンビによる「愛を感じて」は当時、アカデミー賞にてアカデミー歌曲賞を受賞したという功績がある。その二人が再びタッグを組んだのが、この「ネヴァー・トゥー・レイト」だ。「愛を感じて」とは対照的なアップテンポのアフリカン・ヴァイブス溢れる一曲である。

オリジナル版の公開時も大きな話題を呼んだ『ライオン・キング』の音楽は、やはり今回のリメイク版においても重要な役割と果たしている。それぞれのキャラクターやシーンと呼応する渾身の楽曲の数々を、ぜひ迫力あるスクリーンで楽しんでほしい。

Written By 渡辺志保



『ライオン・キング オリジナル・サウンドトラック』
CD発売日:2019年8月7日
英語版日本語版デラックス版(CD2枚組 英語+日本語)



《映画公開情報》
『ライオン・キング』
ディズニーが贈る“超実写版”キング・オブ・エンターテイメント“
2019年8月9日(金)全国公開
映画公式サイト



 

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