ビリー・アイドル、2度の来日秘話:“反逆のアイドル”と当時の日本担当者
1980年代から20年以上にわたって東芝EMIの洋楽ディレクターを務め、2025年には『東芝EMI洋楽部の輝ける日々』という書籍も発売した森 俊一郎さんが、“吉野家七味”として音楽出版社フジパシフィックミュージックの公式noteにて連載を執筆中。
今回はドキュメンタリー映画『ビリー・アイドル パンク・ロッカーの反逆と代償』が4月24日に日本でも劇場公開されるビリー・アイドルについて。他の連載はこちら。
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「ジェネレーションX」での来日
東芝EMIという会社にいると、自著でも紹介したように“伝説的な”先輩たちと巡り会うことになる。著者の4年前、1978年に入社、洋楽に配属された先輩が角間裕之氏。イギリス発祥でその後アメリカでもヒット・アーティストを抱えるようになった「クリサリス(Chrysalis=さなぎ)」レーベルの担当として活躍、ブロンディや“神”ことマイケル・シェンカー、ロバート・パーマー、パット・ベネター、ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースらを日本でもヒットさせている。
その角間氏が入社間もなく担当したのが「ジェネレーションX」。1976年にデビューしたイギリスのパンク・ロックの先駆け的存在のひとつ。入社して洋楽に配属された時には彼らのファースト・アルバム『Generation X』はすでにリリース済みだったが、洋楽内部での異動や組織替えがあり、入社早々の角間氏担当で翌1979年にはセカンド・アルバム『Valley of the Dolls』がリリースされた。
6月には田中エンタープライズ招聘によるコンサート来日も実現。東京公演は渋谷の「東横劇場」(再開発でなくなってしまった東急百貨店東横店西館のあった場所の「東急会館」にあった1,000人キャパのホール)で26日の昼夜2公演を含め、25日と合わせて計3回、大阪は御堂会館で28日に行われた。
シンガーであるビリー・アイドルと同い年ということで意気投合した角間氏は、連夜六本木のディスコなどへ連れて行ったという。そんな中、東京のディスコで全員が壁面のミラーにひとりひとりがポーズを決めて踊っていた当時の日本の若者たちの姿から「Dancing with Myself」の曲の発想を得て、ジェネレーションX、また後にビリー・アイドル名義でもヒットさせたのは、日本のファンにとっては嬉しい逸話。
ソロでの大成功とプロモ来日
そのジェネレーションXの活動停止後、1982年にビリー・アイドルはソロ・アーティストとしてアメリカへ渡る。ちょうどMTVの隆盛のタイミングとも合致し、次々とヒットを飛ばす。1983年11月にリリースされ、200万枚を超える売り上げをあげ、グラミーにもノミネートされたソロとして2作目のアルバム『Rebel Yell』の邦題『反逆のアイドル』をつけたのも、引き続き担当した角間氏だ。ということで「反逆」=ビリー・アイドルというイメージが日本では定着した。
そして、この当時“地獄”でおなじみのKISSを手掛けていたことで有名なマネージャー、ビル・オーコイン氏のプッシュもあり、プロモーション来日が実現。「ともかくテレビに出すように!」というビル氏の指示はなかなか強力で、TVKなどおなじみの音楽番組はもちろんのこと、日テレ系で土曜の朝オンエアしていた「モーニングサラダ」にも出演している。
しかし滞在中一番大変だったのは、角間氏曰く「ともかく酒を飲みすぎるので朝起こすのが大変だった」という。もう一つ印象に残っているのは、マネージャーのビル氏は夜に彼らがディスコへ行くと、当時まだあまりどこにも売っていなかったシャンパン「ドン・ペリ」を箱買いして準備するように、と角間氏に指示したことだ。何が入っているかはっきりしない強いスピリッツ系を飲むよりは、という配慮と、ビリーがVIPルームのゲストたちにシャンパンをふるまえるように、という一石二鳥の手配。これはアメリカのロック・ビジネスの一線級というエピソードだ。もちろんそのドン・ペリ代を払ったのはビル・オーコイン氏である。
ドキュメンタリー映画
そんな“反逆”児ビリー・アイドルの生涯を描いたドキュメンタリー映画が4月24日から日本で劇場公開されることが決まった!アメリカではすでに2月末から公開中。映画『ビリー・アイドル パンク・ロッカーの反逆と代償』の予告編とHPはこちらからどうぞ。
盟友のギタリスト、スティーヴ・スティーヴンスやガンズのダフ・マッケイガン、ザ・フーのピート・タウンゼント、ジェネレーションX時代のバンド仲間で後にジグ・ジグ・スパトニックとしてその突き抜けたルックスで世間を驚かせたトニー・ジェイムス、セックス・ピストルズのスティーヴ・ジョーンズやポール・クックなどが出演。
彼らの語る貴重な歴史はまさにパンクのムーヴメントをとらえた1970年代終盤に始まり、1980年代前半イギリスからアメリカへ「ブリティッシュ・インベージョン」と言われるヒットの波が起きていた頃の音楽シーンを克明に描き出す、必見のドキュメンタリー映画だ!
このビリー・アイドルは、その後事故に見舞われたり、タイミングが合わず、先述のプロモーション来日(1984年)以来、日本に来ていない。1979年はジェネレーションXとしての来日なので、「ビリー・アイドル」としてのコンサート来日は実現していない。
今からでも遅くない、来てくれ“反逆のアイドル”!!この映画を観てすごくステージが観たくなったぞ!
それでは今日はこの辺で。吉野家七味でした、バイバイ、またね!
Written by 吉野家七味 (連載はこちら)
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