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バッハの聴くべき作品ベスト10:バロックを代表する多才な作曲家による名曲選

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ブランデンベルグ協奏曲、マタイ受難曲、平均律クラヴィーアを含むバッハが残した傑作10作品。

ヨハン・セバスティアン・バッハ(1685年3月31日~1750年7月28日)は、自分が、音楽史上、最も偉大な作曲家の一人――おそらく最も偉大な作曲家――と評されていると、聞いたらびっくりしたに違いない。彼は生前、鍵盤楽器の名手としてその名を知られており、自らが勤める教会のための作曲活動にその時間の多くを費やしていた。

その一方で作品の質においては、ブルガリより多くの素晴らしい宝石のような音楽を彼は生みだしている。ここに時代を超えたバッハの傑作10作品を挙げたが、いずれも作曲家の驚くべき才能の幅広さを示すものである。


Brandenburg Concertos
ブランデンブルク協奏曲

多くのバロック時代の作曲家は、何ダースもの、あるいは何百ものバロック協奏曲を作曲していた。しかしバッハはこの分野においては全部で6作品しか残しておらず、いずれも雰囲気やソロ楽器の組み合わせが異なるだけでなく、構成も大きく異なっている。

3楽章構成、急‐緩‐急、が通例であった時代にそれまでに考えられなかったような構成をとっている第1番、めまいをおこしそうな高さから跳ぶような感覚の、非常に難しい技巧を伴うトランペットの演奏が彩りを添える第2番、ヴァイオリンを欠くことで陰のある響きの第6番まで、1つとして同じものはない。

純粋にヴィルトゥオーソな音楽を聴きたい方には、フルート、ヴァイオリン、そしてハープシコードがスポットライトを独占する華やかな第5番がお勧めだ。

J.S. Bach: Brandenburg Concerto No.2 In F, BWV 1047 – 2. Andante (Live From Teatro Romolo…

Four Orchestral Suites
管弦楽組曲

バロック協奏曲と並んでバッハの時代に人気を博していた分野が管弦楽組曲(バッハの呼び方にならうなら「序曲」)であった。協奏曲がイタリアの伝統に端を発したのに対して、組曲の起源はフランスの舞曲にさかのぼる。

バッハによるこの4曲は、宮廷を思わせる高貴な響きでありながら、とても豊かな音楽である。例えば、第1番は優雅な舞曲が並び、第2番の最後を締めくくるフルートによる〈バディネリ〉は一度聞いたら忘れられない。第3番のトランペットとドラムによる序曲も魅力的だし、最後の第4番は壮大で心浮き立つ音楽となっている。

この作品がバッハの最高傑作であることは疑いの余地がなく、その華やかさにおいてはヘンデルの最も華麗な作品に匹敵するものである。

J.S. Bach: Orchestral Suite No. 2 in B Minor, BWV 1067 – 7. Badinerie

St Matthew Passion
マタイ受難曲

受難曲とは大規模な声楽曲であり、そこにはキリストの苦難と死が語られている。そしてバッハが残してくれた2つの受難曲、ヨハネ受難曲とマタイ受難曲に比肩する作品は他にない。中でも後者は、音楽界の偉大なアイコンと言っていいだろう。

しかしながらバッハの死後、80年近くにわたって上演される機会を失い、若きフェリックス・メンデルスゾーンによって世の中に再び紹介されるまで埋もれていた作品でもあった。壮大なスケール、荘厳さ、心打つ人間愛(アルトとヴァイオリンによる厳粛で深い悲しみに満ちたアリア「神よ、憐れみたまえ」に見事に凝縮されている)が描かれたこの受難曲は時代を超えて、信仰の有無に関係なく、多くの人の心をとらえて離さない。

J.S. Bach: Matthäus-Passion, BWV 244 / Zweiter Teil – 65. "Mache dich, mein Herze, rein"

Cantata No.21
カンタータ第21番《我がうちに憂いは満ちぬ》

バッハのカンタータ(200近い教会カンタータと十指に余るほどの世俗カンタータが現存)は、教会で毎週行われるミサのために彼が仕事として書いた音楽だ。

しかし、それを考えると、驚くべきものがある。このようなカンタータは少ないリハーサルで演奏しなくてはならず、人々が礼拝でかなりお粗末な演奏に耐えていたか、バッハの楽団員がかなり優秀であったか、のどちらかであったと思われる。何しろこれらは決して容易に演奏できるような代物ではないのだ。中でも第21番は大変美しいカンタータだ。

「神は私を見捨てられたのですか?いや、そうではない」は、ルター派の教会では馴染み深い言葉(詞)である。このカンタータは、非常にスケールの大きい、バッハの最高傑作の1つであり、苦悩を表現させたらバッハの右に出る者はいないことがよくわかる。

J.S. Bach: Cantata No.21, BWV21 – "Ich hatte viel Bekümmernis" – Sinfonia

Organ Fantasia and Fugue In G Minor, BWV542
幻想曲とフーガ ト短調 BWV542《大フーガ》

バッハは、卓越した即興演奏の技量を持った素晴らしい鍵盤楽器奏者として、その名をはせていた。彼の作曲したオルガン音楽は、実は彼が筆に任せて何気なく書き記したもので、後に最強の音楽作品に変貌を遂げたのかもしれない。

バッハの作曲ではないとする説のある有名なオルガン音楽「トッカータとフーガ ニ短調」は、ひとまず脇に置き、バッハの最大傑作「幻想曲とフーガ ト短調」を取り上げたい。なめらかに流れるような幻想曲はバッハが好んだ切れの良い不協和音によってどこか無骨な美しさと暗い色合いを持ち、フーガでは超絶技で天空を揺るがすようなクライマックスを迎える。

J.S. Bach: Prelude (Fantasy) and Fugue in G minor, BWV 542 – "Great"

The Well-Tempered Clavier – The 48
平均律クラヴィーア(全48曲)

バッハは音楽史上もっとも偉大な作曲家であっただけでなく、愛情深い家庭人でもあり、自分の子供たちの教育教材として多くの鍵盤楽曲を作曲している。

平均律クラヴィーアは異なる24の調性(長調と短調)で書かれた前奏曲(プレリュード)とフーガの全48曲からなるセットだ。一見つまらなそうに響いたかもしれないが、これを作曲したのはバッハであることを忘れないでいただきたい。この48曲はどれを聴いても、演奏しても、面白く、魅力的で、バッハの最高傑作の1つであることは明らかだ。

何よりも驚かされるのは、この曲集が聴衆を前に演奏することを念頭に書かれたものではない、と言うことだ。親近感を感じさせながらも、多岐にわたり、壮大な作品群である。

Lang Lang – Bach: The Well-Tempered Clavier: Book 1, 1.Prelude C Major, BWV 846

Goldberg Variations
ゴルトベルク変奏曲

時代を超えて人々に愛される理由を何年もかけて分析をすることも出来れば、ゴルトベルク変奏曲のように、ただ単純に楽しむこともできるのが、バッハの音楽である。

ゴルトベルク変奏曲は不眠症の貴族をリラックスさせるために作曲された、とも言われている。多くのピアニストを惹きつけてやまないこの変奏曲はもともとはハープシコードのために書かれたもので、抒情的な主題をもとに30の変奏曲が展開される1時間ほどの作品である。

バッハは主題を雰囲気や速度の異なる無数の組み合わせで置き換え、最後には再びもとの姿に戻ってくる、それは意義深い旅路の見事なまでの終わり方である。

Lang Lang – Bach: Goldberg Variations, BWV 988: Aria

Six Cello Suites
無伴奏チェロ組曲

鍵盤楽器がそれだけで音楽を成立させることは難しくないが、弦楽器となると違う。バッハの無伴奏チェロ組曲は大変な難曲だが、その一方で楽器が自立して音楽を奏でられるように作曲されている。

この作品は実は何年もの間、演奏されることなく埋もれていたが、カタルーニャ出身の偉大なチェリスト、パブロ・カザルスによって再発見され、彼の演奏を通して多くの人々に知られるようになったのである。

カザルスが弾いたことでこの作品を「ただの練習曲」と考えていた一部の人々の考えは覆されることとなり、この組曲は演奏者をひるませ、聴衆を喜ばせる作品として今日では多くの人々に愛されている。

華々しく肯定的な第1番、内省の第2番、そして輝き、高く飛び立つかのような第6番、ここで聞くチェロは、本物のオーケストラそのものである。

J.S. Bach: Cello Suite No.1 In G Major, BWV 1007 – 1. Prélude

Violin Sonatas and Partitas
無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ

ヴァイオリニストが無伴奏チェロ組曲をうらやましく思う必要はない。それはバッハが彼らにも全く遜色のないソロ作品「ソナタとパルティータ」を残しているからだ。

その中で最も有名なのが「パルティータ第2番ニ短調」であり、最後の〈シャコンヌ〉は怖ろしいほど難しく、長大で、シンプルな主題が少なくとも64回(*この数え方には賛否があるかと思います)は姿を変えて表れ、類を見ないような豊かな感情表現がなされている。

第2番と並んで素晴らしいのが「パルティータ第3番ホ長調」であり、溢れ出す思いに踊りだすような感覚が全編を通して薄れることなく一貫して続く。聴き手は伴奏の必要性を感じることは一度もないが、それはヴァイオリンが見事なまでにスポットライトの真中で魅力的に輝いているからだ。

J.S. Bach: Partita for Violin Solo No. 2 in D Minor, BWV 1004 – 5. Chaconne

Concerto In D Minor For Two Violins
2つのヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調

バッハはソロ楽器のための協奏曲をあまり書いていないが、この協奏曲は、まさに時代を超え、バッハの最高傑作として輝き続ける珠玉の作品である。2人のヴァイオリニストを核に弦楽器とハープシコードによるシンプルな伴奏で構成されている。

中でも数知れないほど多くの映画監督によって感情の高ぶりを表現する際に使われてきたラプソディ風の緩楽章は大変多くの人から愛されている。ここでは2人のソリストが楽器を演奏すると言うよりも、あたかも歌手のような響きをもって互いを信頼しあいながら音楽を紡いでいく。

その一方で、2人のヴァイオリニストが互いを刺激しあい、火花を散らすエネルギッシュな第1、第3楽章は緩楽章と素晴らしいコントラストをなしている。歴史的に偉大なヴァイオリニストたちが他のソロ・ヴァイオリニストと組んででも演奏したい衝動に駆られるのも理解できる作品なのである。

J.S. Bach: Concerto For 2 Violins, Strings, And Continuo In D Minor, BWV 1043 – 1. Vivace

Written By uDiscover Team



 

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